第110話「ああ、任せとけ。ここからは俺の仕事だ」

 おっと、さてはこいつ照れてるな?


 リヨンはなぜか俺に対してだけ毒舌っぷりが激しいけど、根は素直で純真な性格をしているのだ。

 勇者パーティ時代も一介の兵士にも分け隔てなく優しかったし、子供とかには保母さんかってくらいにメチャクチャ甘い。


 しかしここで下手にリヨンをからかうと、さっきの2割増しが5割増しとかになりかねないので、俺は黙ってスルーした。


「ああ、任せとけ。ここからは俺の仕事だ」


 代わりにそれだけ言って、グッと親指を立てる。

 リヨンとの付き合いもいい加減長い俺だった。


 でもなんでリヨンは俺に対してだけこんなに口が悪いんだろうな?

 俺、リヨンに何かしたっけかな?


 そんな覚えはないんだけど。

 謎だ。

 それでもこうやって親身に協力してくれるあたり、嫌われてるってことはないんだろうけども。


 リヨンが俺をどんな風に思っているかはさておき。

 リヨンから符を受け取った俺は、再び『破邪の聖剣』にフルパワーを溜めていく。


「アンチ・バースト・システムを解除! 全リミッター開放! 『破邪の聖剣』ファイナル・ラグナロク・モード発動!」


 さてと。

 今度こそ破壊してやるぞ石っころめが。


 1発目は隕石が硬かったのもあるんだろうけど、距離が遠すぎて勇者ビームの威力が減衰したのもあったと思うんだよな。


 だから2発目はギリギリまで近づいて、至近距離からぶっ放してやる。

 そしてわずかの破片すらも残さずに完全粉砕してやる。


 再びリミッターと制御システムを全て解除・開放されフルパワーとなった『破邪の聖剣』を構えると、俺は飛んだ!!

 そして猛スピードで隕石に接近すると、超至近距離で『破邪の聖剣』を振りかぶった――!


「超必殺技! ジャスティス・ラグナロク・ブレイク!」


 『破邪の聖剣』から撃ち放たれた光のビームが、隕石を直撃する!

 さらにリヨンの符が連鎖して発動し、ジャスティス・ラグナロク・ブレイクの光が激しい爆裂へと変化していく!


 ドカンドカンと。

 ものすごい轟音を立てる激しい爆裂の連鎖が始まった――!


「おおっ! すっげーな! 爆裂の連鎖で巨大隕石が文字通り粉々になっていくぞ。さすがリヨンだ!」


 『破邪の聖剣』を振り抜いた俺は、目の前で起こる連鎖爆裂を感心しながら観察しつつ、破壊し残した部分があればさらなる一撃を入れるべく至近で待機していたんだけれど――、


「ん? 巨大隕石をあらかた破壊し終わったのに、爆裂の連鎖が止まらないぞ? それどころかどんどん激しくなっていってるような……?」


 直後、俺は爆裂の連鎖に巻き込まれていた。


「くそっ、なんだ!? 何が起こってるんだ!? もう隕石破壊は終わったんだから止まれよな!? って、まさかこれ、リヨンの作ってくれた符術が暴走してるのか!?」


 俺は周囲で次々と起こる爆裂を『破邪の聖剣』でガードしたものの、


「げっ、なんか俺の力に反応してさらに爆裂が発生しているんだが!?」


 そういや元々は、俺の持つ勇者の力を変換する術式なんだっけか――!

 気付いた時には、俺は空中で終わりのない連鎖爆撃の嵐に見舞われていた。

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