第108話 クロウ vs 巨大隕石

 俺は王宮の屋上にある空中庭園で空を見上げていた。

 隣には同じように空を見上げるアリスベルとフィオナがいる。


「大きいのが見えてきたねー。時間も場所も、フィオナさんの予測がバッチリ当たったし。さすがフィオナさん、やるぅ♪」


 俺なら何とかしてくれるだろうって信頼が根底にあるのだろう。

 アリスベルがほとんど遠足気分のような、のほほんとした声をあげた。


「改めて見ても、とてもつもない大きさですね……うっ、また胃がキリキリとしてきました……」


 そんなアリスベルとは対照的に、フィオナは今から始まる破壊ミッションが失敗するかもしれないことを想像して不安になったのか、ストレスで胃のあたりをさすっている。


 せっかく未来予知を狙って成功させるという大手柄をあげたっていうのに、まじめ過ぎるのも考え物だなぁ。


「それにしてもほんとでかいよな。こんなのが落ちたらそりゃこの辺り一帯ヤバイことになっちゃうよ」


「しかもまさか落下地点がちょうど王宮の真上だったなんてね。どこかの国が隕石落下術式メテオ・ストライクでも開発したのかな?」


「もしそうだとしたら、国内だとリヨンが怪しいな。あいつ暇さえあれば新しい術の開発にいそしんでるからな」


 元勇者パーティで共に戦ったリヨンは、符という術を使って様々な奇跡を起こす符術師という職業をしている。


 今はその抜群の頭の良さと高い見識を生かして、国政のサポートをしてくれているんだけど。

 リヨンなら興味本位で隕石落下の術を開発していても不思議じゃなかった。

 それくらいにリヨンは天才の中の天才なのだから。


「もう、おにーさんってば、そんなこと言ったらリヨンさんに怒られるよ? リヨンさんは特に騎士や兵士の人たちから人気が高いから、怒らせると大変なんだからね? 下手したら軍事クーデターに発展しちゃうんだからね?」


「あいつ昔から騎士とか兵士に異常に人気あるんだよなぁ……」


 俺も庶民上がりの飾らない勇者ってこともあって、自分で言うのもなんだけどそれなりに人気はある方だ。


 だけどリヨンの場合はなんていうかこう、目の色が違うっていうかガチ恋勢っていうか?

 アイドルファンって感じの熱烈な信者が多いんだよな。


 まぁリヨンの異常な人気っぷりはさておき。


「さーてと、そろそろ始めるか。2人とも、危ないから少し離れていてくれ」


「りょーかい。頑張ってねー」

「勇者様、ご武運を」


 アリスベルとフィオナが連れ立って少し距離を取った。


 それをしっかりと確認してから、俺は『破邪の聖剣』を抜くと力を込め始める。


「アンチ・バースト・システムを解除! 全リミッター開放! 『破邪の聖剣』ファイナル・ラグナロク・モード発動!」


 俺は『破邪の聖剣』にかかっているリミッターと制御システムを全て解除・開放する。

 刃がまぶしい程の猛烈な光でもって輝き出す――!


 俺の持つ勇者パワーをぐんぐん吸って、『破邪の聖剣』が真なる力を解放しようとしているのだ――!


 俺は太陽のごとく光り輝く『破邪の聖剣』を落下してくる巨大隕石に向かって、天を衝くように突き上げた――!


「超必殺技! ジャスティス・ラグナロク・ブレイク!」


 目を開けていられない程の巨大な閃光の柱が、落下してくる巨大隕石に向かって一直線にほとばしる!!


 光の柱は巨大隕石に直撃すると、盛大にぜた!

 しかし――!


 光が晴れた後には巨大隕石がまだ空に浮かんでいた。

 サイズは少し小さくなっているが本体はまだまだ無事だ。


「巨大隕石、いまだ健在です!」

 フィオナが悲痛な叫びをあげ、


「表面は削れたけど、本体は無事!? そんなぁ!?」

 アリスベルもええー!?って顔をした。


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