第106話「くっ、この下種めが! いっそのこと殺せ!」

「お疲れさまでした勇者様」


「フィオナもお疲れさん。さっきはものすごい怒りっぷりだったな。フィオナの怒りがこっちまで伝わってきてたぞ?」


「も、申し訳ありません、この悪党たちを見ているとつい怒りがこみ上げてきてしまって……」


 フィオナが恥ずかしそうに顔を赤らめる。

 さっきの凛々しい騎士姫の姿とのギャップが激しすぎて、ものすごく可愛いんだが?


 なるほど、これが最近はやりのギャップ萌えってやつか。


「フィオナさんは正義感が強いからねー。『セントフィリア王国を食い物にする俗物どもめ……! たとえ神が許してもこのフィオナ=ノースウインドは許しはしません!』って啖呵たんかを切ったのも、すごくカッコよかったし」


「む、蒸し返さないでくださいアリスベルさん。第二王妃という立場にありながら、本当に私はなんとはしたない台詞を言ってしまったのでしょうか……」


 いまやフィオナは耳まで真っ赤になってしまっていた。

 モジモジと内股になっているフィオナに、俺はどうしようもなく胸キュンしてしまう。


 褒め褒め攻撃をするアリスベル、グッジョブ!

 いいぞ、もっとやれ!

 もっとフィオナを恥ずかしがらせるんだ!


「もう、褒めてるのにね。ねぇおにーさん♪」

「だよなぁアリスベル」

「勇者様まで……意地悪です……もう……」


「あ、そうだフィオナ! いいこと思いついたんだけど」

 そんなフィオナを見て、俺の頭の中をとてつもない妙案が駆け抜けた。


 やばい、我ながらこれはナイスアイデアすぎる。

 早速披露して約束を取り付けないと。


「はぁ、いいことですか?」

「今度『囚われの女騎士』ごっこしようぜ」


「……えっと、急にどうされたんですか?」

 困惑顔で聞いてくるフィオナに、俺はさっき思いついたナイスアイデアを披露する。


「俺が悪人役で、騎士フィオナを捕まえてえっちなことをするんだよ」

「え、えっと……」


「それでフィオナは『誇り高きセントフィリアの騎士である私が、このような辱めを受けるとは……くっ、いっそのこと殺せ!』とか言うんだよ。燃えるだろ、むふふ……」


 この時の俺はもじもじするフィオナを見てやけに興奮してしまっていて、完全にハメを外してしまっていた。


「あの、勇者様……さすがにそれは……その……」


「ごめんおにーさん。さすがのアタシもその考えまでは分からなかったかな……っていうか、おにーさんの思考が変態すぎてヤバイんだけど……」


「なんでもえっちに結び付けようとする想像力は、ある意味すごいとは思うのですが……」


「ここまで来ると、これはこれでもう一種の才能だよね……病気って名前の才能だけど」


 羞恥にもだえるフィオナが可愛すぎて、つい調子に乗っていらないことを言ってしまい、アリスベルとフィオナにドン引きされてしまった俺だった。



 その後。

 後始末を王宮から呼んだ捜査チームに引き継いでから、俺たちはこの場を後にした。


 突発的に始まった課外勇者活動はこうして幕を閉じたのだった。



 ちなみに後日、フィオナにお願いし倒して『囚われの女騎士』ごっこをしてもらった。


クロウ

「くっくっく。俺のえっちな命令を聞かないと、お前の大切な大切な王妃様がどうなるか分かっているだろうな?」


フィオナ

「きさまぁ! もし王妃殿下の身に何かあったら許しはしないぞ!」


クロウ

「それはこれからのお前の態度次第だなぁ、むふふふ……」


フィオナ

「なんと卑劣な……! 恥を知れ!」


クロウ

「くくっ、恥を知るのはお前の方だぜ? 今からその身体に恥ずかしいことをいっぱいしてやるんだからよぉ」


フィオナ

「くっ、この下種めが! いっそのこと殺せ!」


 などと恥ずかしさを噛み殺して顔を真っ赤にしながらも、まじめな性格ゆえに一生懸命に囚われの女騎士の演技をしてくれるフィオナに、俺が超絶興奮したのは言うまでもない。



(―地上げ編― 完)

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