【それでも俺は】積年の腰痛が原因で国とパーティを追放された勇者、行き倒れていたところを美少女エルフ整体師にゴキャァ!と整体してもらい完治する。「ありがとう、これで俺はまた戦える――!」【世界を救う】
第100話「俺は貧乏貴族の三男坊だよ。ただそれだけさ――」
第100話「俺は貧乏貴族の三男坊だよ。ただそれだけさ――」
「――おっと、話の腰を折ってしまって悪かった。それでこの店はなんで地上げ屋に目を付けられてるんだ?」
俺は再び老店主に話を聞いた。
「申し訳ありません。彼らの目的まではわたしの方では分かりかねます」
「うーん、特に心当たりはないのか……ってことは八方塞がりだな……」
俺の単純な頭はそんな風に結論付けたんだけど――、
「そっか。そういうことだったんだね」
アリスベルがハッとした顔で言った。
「どうしたんだアリスベル? 何がそういうことなんだ? 当人の老店主も分からない理由が、アリスベルには分かったのか?」
「ねぇねぇおにーさん、これ一大事だよ」
「そりゃ分かってるよ。地上げなんて酷いよなぁ、まったく」
「それもあるけどそーじゃなくて。ね、ちょっとこっち来て」
「え?」
俺とフィオナはアリスベルと内緒話をするべく、老店主から少しだけ距離を取った。
「ねえおにーさん。この辺りの再整備計画って、今はごく限られた人間だけで内々に進めてるよね?」
「ああ。移転する人への補償金とかの話も含めて、ごく一部の人間だけで進めてるはずだな」
俺も何度かその会議に出ているので、その辺りの話は聞かされていた。
既に王都の復興費用はかなりかさんじゃっているんだけど、
『移転の補償金はちゃんと誠実に出しましょう。民あっての国ですので、ないがしろにはできません』
みたいな話をつい先日聞かされたところだ。
「でね? ここからが本題なんだけど、この計画を誰かが漏らしたんじゃないのかな?」
「なるほどそういうことですか。それで地上げをしていると」
アリスベルの言いたいことが分ったのか、フィオナがポンと手を打つ。
「ええっと、つまりどういうことだ……?」
「つまり情報を知っている誰かが整備計画の情報を漏らして、今のうちに地上げしてこの辺りの土地を買い占めようとしてるんじゃないのかな? 立ち退きの補償金を目当てにして」
「……そういうことか」
立ち退いてもらう住人に対しては、立ち退きの補償金としてそれなりの金額が一気に支払われる。
この辺りの土地や建物を先に安い値段で大量に手に入れておいて、後でその補償金をがっぽり得ようとしている奴がいるのだ。
「ですがアリスベルさん、この話は行政府の中でもごくごく限られた人間しか知らないはずです」
「その中に漏らした人がいるってことだね」
「じゃあさっきのチンピラ2人は、その漏らした奴の子分か関係者ってわけだな? つまりあいつらを捕まえて、指示を出してる奴が誰か口を割らせればオッケーでことだ。よし分かった!」
やっと話が簡単な構図になったぞ!
「さっき暴れた件で別件逮捕しちゃう?」
「あいつらの素行の悪さを考えれば、捕まえる理由はいくらでもあるだろうけど。でもさすがに今から追うのは無理だな。衛兵を使って探させるか?」
敵を見つけることができる俺のスキル『勇者スカウター』は、それなりの強い悪意や敵意がなければ反応してくれない。
チンピラごときのしょぼい悪意にはおそらく無反応だろう。
「それでしたら私が探ってみます。まだ今からでもある程度気配は追えると思いますので」
フィオナはすぐに目を閉じると、胸の前で両手のひらを組んで神に祈るようなポーズをとった。
静かに十秒ほど待つ。
すると。
「……見つけました!」
「さすがフィオナさんだね」
「最近のフィオナは精霊の力で未来予知ができたり危険を察知したり、こうやって敵を追えたり。マルチに凄いよな」
いつか俺の王宮脱走も予知されて、妨害されるようになるかもしれない……。
まぁそれはそれとして。
「じゃあ店主。ちょっと行ってくるから、普段通りに営業しながら吉報を待っててくれ」
「あの、クロノスケ様。あなたは、いえあなた方は一体――」
少し離れたところで俺たちのやり取りを見守っていた老店主が、困惑を隠しきれない顔を向けてくる。
「俺か? 俺は貧乏貴族の三男坊だよ。2人は俺の良い人だ。ただそれだけさ――」
俺はそう言い残すとフィオナに案内してもらいながら、チンビラ2人組の後を追い始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます