第77話 アフターストーリー2 第二王妃フィオナ(1)

 フィオナ=ノースウインドはクロウ=アサミヤ朝セントフィリア王国の第二王妃である。


 性格はいたって真面目な常識人。

 種族はエルフで、とても見目麗しい容姿をしているクール系美人だ。


 かつてはセントフィリア王国・エルフ自治領東部管区・特務警護騎士団・第1軍団所属・討伐専任騎士・勇者担当特務騎士を務めていた。


 そんなフィオナは、クロウが超越魔竜イビルナークに勝利するも生命の危機に瀕した際に、精霊に心からの祈りをささげたことで歴史上類を見ない高いレベルの精霊術士としての才能を開花させていた。


 その能力とはなんと未来予知。


 世界の理そのものとも言われる精霊の超自然パワー的なものに深く交信することで、起こるであろう未来の事象を読み解くことができるようになっていたのだ――!


 もちろん完全100%というではないし、予知したい出来事をピンポイントで狙って予知することもできない。

 お腹が減った時に、なぜか3日後の夕飯のデザートを予知してしまったりもする。


 しかしこの能力に目覚めたことに、フィオナはとても感謝していた。


 極めて平凡な能力しかなくザ・凡人を地で行っていたフィオナは、王となったクロウの側にいながらなんの役にも立てずにいて。

 なのに第二王妃と言うだけで多くの優秀な家臣たちからかしずかれ、正直言って肩身の狭い思いをしていたからだ。


 なにせフィオナは第二王妃であり、王宮の中枢にいる。


 フィオナの周りにはまず世界を救って王となった勇者クロウ。

 クロウと共に戦い、今は側近としてクロウを支える才能豊かなリヨンにストラスブール。


 さらには昔から勇者派の重鎮としてクロウから信頼されており、政治手腕にも長けた老サンジェルマン宰相や、各種専門分野を極め選ばれた新進気鋭の大臣たちなど有能な人間ばかりがいるのだ。


 しかもイマイチ国家運営の才能に欠けるクロウに代わって、家臣団をゴッドハンドと呼ばれる神秘的な整体術によって掌握し、今や実質的に国を動かしていると言っても過言ではないアリスベルと比べると、第二王妃になったばかりの頃のフィオナは自分があまりに無能だと日々心を痛めていたのだった。


 しかもフィオナの複雑な心情を、女心に疎いクロウが察して色々と気を使ってくれたあたり、当時のフィオナがいかに王宮で浮かない顔をしていたかは推して知るべしだった。


 しかし未来予知に目覚めてからは、フィオナはクロウと国のために役に立っているという自信と安心感を得ることができていた。



 そんなフィオナは今日は、


『毎日毎日毎日毎日! 延々と書類にサインをするだけの単純作業にはいい加減飽き飽きなんだよっ!? 王様ってのはもっとこう、悪い魔獣を討伐したり悪徳商人を成敗したりするもんじゃないのか!? 劇でも人気だろ? 暴れん坊王様とか!』


 いろいろと我慢の限界に達したクロウに呼ばれて寝室でしっぽりご休憩をしたあと、軽い足取りで自室に戻っていた。


 クロウからはよく、


『最近はアリスベルが体調が少し優れないって言ってあんまり構ってくれないんだよな……寂しいなぁ……(チラッ』


 とチラ見されつつ言われており。


 同様にアリスベルからも、


『最近なんかちょっと身体がダルいんだよねぇ。底なしの性欲魔人なおにーさんに付き合うのはちょっとしんどいから、しばらくフィオナさんが優先しておにーさんの相手をしてあげてくれないかな?』


『それはもちろん構いませんが……』


『おにーさんに浮気されても困るし。あ、わたしの体調に関してはオフレコでね。ほんとたいしたことないし、変におにーさんに気を使わせるのも悪いから』


 と頼まれていたというのもあった。


 フィオナとしてはクロウが浮気をするとは思えないし、アリスベルもお互いに何でも気楽に話せる旧知のフィオナだからこそ100%冗談のつもりで言ったのだろう。


 もちろんクロウを大好きなフィオナとしては、その提案を断る理由はなかった。

 なので最近のフィオナは前よりかなり頻繁にクロウとえっちをしている。


 ちなみに、えっちの頻度が上がり場数も踏んだおかげで、最近はフィオナもハッスル気味だったりする。


 前までは下半身も勇者級なクロウにあれこれお願いされてはハレンチなプレイをさせられて、朝になってそれを思い出しては、


『なんで私はあんな変態プレイをしてしまったんでしょう……』


 などとすやすや気持ちよさそうに眠るクロウの腕の中で思ったりしたものだが、最近ではむしろ自分からあれやこれや積極的に求めちゃったりしているフィオナだった。


 もちろん底知れぬ性欲でもって、これ幸いとばかりに目を輝かせて狼のごとく襲いかかってくるクロウの絶倫の前に、最後はいつも気絶寸前にまで蹂躙されてしまうのだが。


 そんな感じで、最近ちょっといい感じに物事が動いてる気がしていた第二王妃フィオナは、ご休憩からの帰り道の途上で、クロウの執務室に向かっていた農林水産大臣と鉢合わせた。


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