第75話 エピローグ
「お、似合ってるぞアリスベル、フィオナ。2人とも神話から抜け出してきた女神みたいだ、いいね、うん、実にいいよ!」
きらびやかなドレスに着替えたアリスベルとフィオナを、俺は手放しで褒めたたえた。
これからセントフィリア王国の国王になるための最後の儀式である戴冠式に俺が臨むにあたって、アリスベルとフィオナも王妃として参列するべく美しく着飾っていたのだ。
「そ、そう? だったらよかったけど」
アリスベルが宝石がちりばめられたティアラの位置を微調整しながら、少し不安そうに言った。
なんでもセントフィリア王国の王妃が代々受け継いできたティアラで、超越魔竜イビルナークによって粉砕された王宮の宝物庫から奇跡的に無傷で発掘されたらしい。
「まったくもって文句なし、どこの誰が見ても王妃だぞ。アリスベルは元がいいから、普段の可愛い系と違って綺麗系のメイクも似合うなぁ」
「うー、アタシ王妃になるんだよね……アタシがなっていいのかなぁ?」
「そりゃいつの時代も王の妻は王妃だからな、なってくれないと困るよ。俺を捨てないでくれアリスベル。俺と俺の腰には君が必要だ」
「だってそんなこと言っても、アタシただの整体師だよ? ちょっと近所で評判なだけの」
「勇者を救った神の御業を持つアリスベルを、ただの整体師とは言わないさ。知ってるか? アリスベルは瀕死の勇者を生き返らせた『神の息吹を吹き込む乙女』=『ゴッド・ブレス・ユー』って呼ばれてるんだぞ?」
「なにそれ全然知らないし、っていうか誰が言ってるのそれ? 話の出所はどこなの?」
「俺だ、俺が大々的に広めておいた」
「おにーさんが犯人かーい!」
アリスベルが俺の胸にていっ!とチョップを入れた。
もちろん全然痛くはない。
アリスベルときたら恥ずかしさを誤魔化すためにじゃれついてきているのだ。
ふふっ、可愛い奴だなぁもう。
「そういうわけだから、みんなアリスベルは王妃として相応しいと思ってるよ」
「そう言えばみんながアタシを見る目が、おにーさんを見る尊敬のまなざしと近い気がしたんだよね……」
「だろ? もうアリスベルは王妃として十分に認められているってわけさ」
「でもでも、あんなのもう一回やれって言われても無理だし、再現性ゼロだし。神の息吹とか吹き込めないし」
「ストラスブールが言ってただろ、起きないから奇跡って言うんだって」
「言ってたね」
「その起きないはずの奇跡を、たった1度であってもあの瞬間に起こしてみせたことに価値があるんだよ。おかげで俺は今こうしてここにいられるんだから。ありがとうなアリスベル、君は俺の命の恩人だ」
そう言って、俺はそっと優しくアリスベルにキスをした。
「おにーさん……うん、ちょっと自信でたかも?」
「ならよかった……ところでフィオナはフィオナで、またなんでそんなに自信がなさそうなんだ?」
「私はアリスベルさんのような奇跡を起こしていません。しかも近所で評判ですらないとても凡庸なBランク騎士です。私こそ第二王妃としてやっていけるか心配で心配で、考えるだけで胃がキリキリと……ううっ……」
「まぁなんとかなるだろ?」
俺は親指を立ててグッ!として見せたんだけど、
「ううっ……だめです、痛みがさらに増してきました……」
フィオナは完全に黙り込んでしまった。
朝からずっと胃のあたりを手で押さえてさすっているのを見るに、相当プレッシャーを感じているようだ。
「ちょ、ちょっとおにーさん、アタシに言ったみたいにフィオナさんにもなんか言ってあげてよね! フィオナさん完全に顔面蒼白じゃん!?」
アリスベルが小さな声で怒ったように耳打ちしてくる。
だから俺は言ったんだ――。
「アリスベルもフィオナも、王として、男して、俺が2人を絶対に守るから何も気に病む必要はないさ!」
「お、おにーさん!」
「勇者様……!」
「なぜなら俺は勇者だからだ! 世界を2度も救った俺が、大切な女の子たちを幸せにできなくてどうするってんだ――!」
(終わり)
・【それでも俺は】積年の腰痛が原因で国とパーティを追放された勇者、行き倒れていたところを美少女エルフ整体師にゴキャァ!と整体してもらい完治する。「ありがとう、これで俺はまた戦える――!」【世界を救う】
最近はめっきり少なくなった正統派勇者の物語、これにて完結です!
最後までお読みいただきありがとうございました!
楽しんでいただけたのであればとてもとても嬉しいです!
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☆は1作品につき3回まで押せますよ!
――とか言いながらこのあと「用語集」と「アフターストーリー」が用意してあります。
こちらも是非見ていってくださいね!
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