第18話 女騎士フィオナ、寝不足の理由。

「あ、はーい」


 そんなフィオナに、アリスベルは近くにあった服をシュババっと早着して対応する。

 ものすごい手際の良さだった。


 そして俺は諸般の事情でパンツをはくにはけない特殊な状態下にあったので、とりあえずシーツを羽織って身体とパオーンを隠した。 


 寝不足気味なのか、朝だというのにフィオナはやや青白い顔をしている。


「なんだか寝不足みたいだな? よく寝れなかったのか? 体調は大丈夫か?」

 少し心配になった俺はフィオナに問いかけた。


「ええまぁ多少の睡眠不足はありますが、大勢に影響はありません」


「無理しなくてもグレートタイガーの討伐なら俺がちゃんとやっておくから、ここで待機してくれてても構わないんだぞ?」


「いいえ、本当に問題はありませんので。討伐専任騎士としての職務を全ういたします」


「ちゃんと寝るのも戦士の大切な仕事だからな? 睡眠不足だと最良なパフォーマンスが発揮できなくなるからな」


「ご忠告痛み入ります。誠にもって勇者さまのおっしゃる通りです」

 俺の言葉にフィオナは、申し訳なさそうに頭を下げた。


「忠告とかじゃなくて純粋にフィオナの身体を心配をしてるんだけどな。もしかしてAランク魔獣の討伐だから緊張してるのか? だったら少し力を抜いたほうがいいぞ。気を張り詰め過ぎると視野が狭くなって、気付くべきことに気付けなくなるからさ」


 だから俺は勇者として戦抜いた過去の経験から、フィオナにちょっとしたアドバイスを送ってあげたのだった。


「うわっ!? おにーさんがまともなこと言ってる!? 今日は雨なのかな? 傘持ってきてないんだけど」

 そんな俺を見てアリスベルが心底驚いたように言った。


 ええっと、アリスベルの中での俺の評価っていったいどうなってるのかな……?


「ほんと気になることがあればなんでも相談に乗るからな。こう見えて、俺は勇者パーティを率いて魔王を倒した勇者なんだから。なんでも気兼ねなく聞いてくれ。あとそんなにかしこまる必要もないよ」


「いえ、どうぞお気遣いなく」


「遠慮はいらないってば」

「本当にたいしたことではございませんので」


「ってことはなにか理由があるんだよな。ほら、こうやって臨時パーティを組むのも何かの縁だし、言ってみなよ」

「……そこまでおっしゃるなら、では、こほん」


 俺の言葉をこれ以上断り続けるのも、それはそれで失礼に当たると思ったのか。

 フィオナは軽く咳ばらいをすると、意を決したように言った。


「実は夜遅くまで、いえ日付けが変わってもずっと隣の部屋から喘ぎ声が聞こえてきまして」


「……(汗)」


「しかも途中で、お尻を使うだのなんだのと言った想像を絶する言葉まで聞こえてきまして」


「……(滝汗)」


「勇者様とアリスベルさんはいったいどのようなハレンチな行為に及んでいるのかと、気になって気になって、喘ぎ声と相まって気が高ぶってしまってとても眠れませんでした」


「………………(激流汗)」


「大切な任務中だというのに、このような些細なことで心を乱して睡眠不足になってしまい、誠に申し訳ありませんでした」


 フィオナが大変申し訳なさそうに頭を下げ、


「「それはこちらこそ本当に申し訳ありませんでした!」」


 そんなフィオナにむかって、俺とアリスベルはそろってガバッと頭を下げたのだった。


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