第8話「えっちしたかったらいいよ?」

 その夜。

 俺は当初の予定通り、アリスベルの家にお泊まりしていた。


 アリスベルは田舎から出て来て一人暮らしをしているそうで、この町で借りている家に泊めてもらったんだけど、あまり広くない家ということもあって俺たちは同じ部屋に布団を並べていたのだった。


 ちなみに建物の2/3は、アリスベルがやっている接骨院の営業スペースになっている。


「アリスベル、部屋が一緒ってのはさすがにまずくないか? その、間違いとかあるかもしれないしさ?」

 俺はさすがにこの状況をスルーしきれなくてアリスベルに問いかけた。


 すると、なんということだろうか!


「おにーさんはアタシのこと好きなんでしょ? おにーさんは町を救ってくれた命の恩人だし、だからえっちしたかったら、してもいいよ?」


 アリスベルときたら、上目づかいで恥ずかしそうにそんなことを言ってくるんだよ!


 マジか!

 えっちオッケーなのか!


 今日必死にアピールを頑張ったかいがあったな!

 ひゃっほう、効果は抜群だ!


 そんな風に言われたものだから、だから俺もはっきりとアリスベルに気持ちを伝えたのだった。


「えっちはできない。俺は愛のないえっちはしたくないんだ。アリスベルと好き合ったうえで、愛し合ってえっちしたい。身体だけじゃなく心もアリスベルと一緒になりたいんだ」


 俺はそうキリッと言ったのだった。


「あ、その発言ってすごく童貞っぽいかも」


「だから言ってるだろ、俺は完全無欠な童貞だって」

「だからそれ全然自慢になってないってば……」


 自信満々で言った俺に、アリスベルが苦笑する。


「そういうわけだから、さ、寝ようぜ。このままパジャマ姿の可愛いアリスベルを見ていると、俺も理性が溶けて変な気分になっちゃいそうだからさ」


「うん……」

 俺は部屋の明かりを消すと、アリスベルと枕を並べて隣り合わせで横になったのだった。


「おやすみ、アリスベル」

「おやすみ、おにーさん」



 ………………


 …………


 ……




 翌朝。



「しちゃったし!」

「しちゃったな」


 俺とアリスベルは布団の中で全裸で向かい合っていた。

 男と女が裸で寝る――つまりはそういうことである。


「アタシ処女だったのに! 血出たし!」

「俺も童貞だったよ」


「朝までしちゃったし!」

「朝までしちゃったな」


「ガッツキすぎだったし! ケモノだったし!」

「それは童貞だから仕方ない」


「愛のないえっちはしたくないって言ってたのに!」

「隣にアリスベルがいると思ったらとても我慢ができなかった。前言撤回する、アリスベルとなら愛がないえっちもしたい、超したい」


「開き直ったかのように堂々と言い切った!?」

「俺はアリスベルに隠し事はしたくないんだ」


「めっちゃ良いこと言ってる風だけど、言ってる内容は単にお前とえっちしたいってことだからね!?」

「そうとも言うな」


「そうとしか言わないし! あとめっちゃ激しかったし! 鬼の再生力だったし!」

「アリスベルとえっちしてるって考えたら、精力がこう際限なく湧き上がってきたんだよ」


「8回も出したよね!? しかも一回一回がめっちゃ長いし! 突かれ過ぎてもう最後の方、アタシほとんど意識なかったんだけど!?」

「アリスベルが可愛くて腰が止まらなかったんだ。あと腰を振っても全然違和感ないのが嬉しくてさ。アリスベル、君は俺と、俺の腰の女神だ。愛してる」


 もし俺が腰痛のままだったら、こんな激しいえっちは出来なかっただろう。

 昨日までの俺なら、何時間も腰を振り続けるなんて絶対に無理だったから。


「ううっ、初対面の男の人と会ったその日にえっちしちゃうだなんて、アタシはこんな軽い女だったのね……」

「愛の深さに時間の経過は関係ないさ。いっそこのまま結婚しないか?」


「それはまだ先! 一生のことだもん、もっとしっかり考えてから! えっちはしちゃったけどそれはそれ、これはこれだから!」

「わかった、アリスベルに気に入ってもらえるよう、これからもいいところをアピールしていくよ」


「とか言いながらまたチン〇ン立ってるし! パオーンしてるし!」

「裸のアリスベルを見てたらどうにも性欲が抑えきれなくてだな……」


「今日はもうだめだからね! 昨日のはあくまで流れだから! その場の雰囲気だから!」

「わかってるよ。10代の盛りの付いたガキじゃあるまいし、俺ももういい大人だからな」


 ………………


 …………


 ……

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