【それでも俺は】積年の腰痛が原因で国とパーティを追放された勇者、行き倒れていたところを美少女エルフ整体師にゴキャァ!と整体してもらい完治する。「ありがとう、これで俺はまた戦える――!」【世界を救う】
第5話 俺は勇者なので様々な勇者スキルを持っているのだ。
第5話 俺は勇者なので様々な勇者スキルを持っているのだ。
俺とアリスベルは世間話をしながらエルフの町へと向かった。
森の中を通る曲がりくねった街道を歩いていく途中で、アリスベルが王都の話を聞かせて欲しいとせがんでくる。
ぶっちゃけ俺は世情に疎く、特に近年は腰痛をどうにかすること以外は全く興味がなかった。
だから王都なら誰でも知ってるような、ごくごく普通のありふれた話しかできなかったんだけど。
辺境の森に住まうアリスベルにとっては、そんなしょぼい話題であっても新鮮で興味は尽きないのか、
「それでそれで!? その後どうなったの!?」
「結局最後は裁判の場で泥沼の暴露合戦になって、三角関係になった全員がヤバイ秘密を公の場でこれでもかと暴露されて、社会的に抹殺されたんだよ」
「うわー、全滅エンドだね。ご愁傷様」
上級貴族が浮気→互いの実家も巻き込んだドロドロの三角関係→王宮での刃傷沙汰→裁判での激しい罵り合い、みたいなよくある話をしても目を輝かせて聞き入ってくれたのだった。
惚れた相手にこんな風に話に興味を持ってもらえて、だから俺はデートでもしているみたいでとても気分が良かった。
岩のようにガチガチに固まってた腰も、今は水鳥の羽のように軽いし。
腰を気にしないでいいって本当に素敵だなぁ。
まるで新しい身体に生まれ変わったみたいだよ。
しばらくそんな風に話をしながら2人で歩いていたところ、
「むっ!」
俺のスキル『勇者センサー』が遠くであがった悲鳴をとらえた。
俺は勇者なので当然、助けを呼ぶ声を感知するスキルを持っているのだ。
ちなみに有効距離は3キロくらいある。
さらに俺は複数の獰猛な気配も感じとっていた。
俺は勇者なのでスキル『勇者スカウター』で気配を感じることも当然余裕であるからして。
「どーしたの、おにーさん?」
「アリスベル、エルフの町まであとどれくらいだ? 直線距離で」
「んー、そだね。道を無視してまっすぐの距離にしたら、あと2キロくらいかな?」
「方角は向こうか?」
「うんそーだよ」
悲鳴のした方角を指さした俺に、アリスベルがこくんとうなずく。
「ちなみにエルフの町では、獰猛な魔獣かなんかを飼ってたりするのか?」
「あはは、そんなまさか。魔獣なんて危ないものを町で飼うわけないし。っていうかさっきからどーしたの、おにーさん?」
「じゃあ間違いないな。たぶんエルフの町が襲われてる」
「えっ? うそ」
「気配からして魔獣だな。しかも数が多い、これは群れで来てるな」
「魔獣が群れで町を襲ってるの!?」
「この感じだと急がないとまずいな……よし、そうとわかればアリスベル、抱っこするからしっかり掴まってるんだぞ」
俺はそう言うとアリスベルをお姫さま抱っこで抱き上げた。
「ほえっ? ちょ、ちょっとおにーさん!?」
「今から町に全速力で向かう。道中、舌を噛まないように少しだけ黙ってていてくれな」
「え、あ、うん」
俺はアリスベルに口を閉じているように注意を促すと、獰猛な気配のする方に向かって猛スピードで一直線に走り出した。
俺は勇者なのでスキル『神速』によって、100メートルを5秒かからずに走れるのだ。
つまり2キロならわずか1分半ほど。
俺は森の木々の間を超絶スピードで駆け抜けると、今まさに魔獣によって襲われかけているエルフの町にたどり着いたのだった。
「もう着いたの!? って、町に魔獣が! みんな逃げて!」
魔獣と、魔獣から散り散りに逃げていくエルフたちの姿を見てアリスベルが悲鳴を上げた。
5メートルを超える巨大な狼。
赤い目が爛々と輝いていて、獰猛な牙が見え隠れしている。
Aランク魔獣のキングウルフだった。
巨体に見合わぬ素早い動きに、鋭い爪と牙。
さらには硬い毛で覆われ身体は高い防御力を誇る上級の魔獣だ。
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