第3話【limited express panic-ハンキュウジヘン-】(9)
直接詠唱した物体に比べれば速度も重量も劣るお手玉の数々は、事前に魔術を込めていたとはいえども、だからといって全くの無害とは言い難い。
鉄球並みの重さの物体が、通常の物理法則に当て
しかし、それはあくまで魔術にゆかりの無い存在に対しては、という前提条件を忘れてはならない。
術者であるねねが“発動後、対象と定めた目標に命中するまで動き続ける”という
理由は明白。
彼女の放ったお手玉は、
魔術師としての力量差に全てが
そんな理論なりを勿論ねねは理解していたし、敢えて同条件となる詠唱を直接行わなかったのは、
(完全に無防備になるとまではいかなくとも、やっぱし注意が散漫になっちゃうからね)
相手がどのような害意をもたらしてくるかが不明瞭な魔術師同士の対戦において、詠唱とはかくも付け入る好機になり得る機会を創出してしまうのである。
なので、必要以上に隙を見せるべきではないという彼女なりの判断であった。
……もっともねねの場合、既に
(移動不能でこれ以上は払う注意が不毛だとしても――威力を上げるってだけで直詠唱を行うのは、愚行だわよね)
日曜日8時から放映している戦隊モノの特撮ヒーロー番組において、
が、
そんな敵魔術師である
「あと三つ~。さぁ、さぁさぁさぁ! どっからでも来いよ~。ひひひっ」
「言われなくとも行くってば。こっからが本番、たぁんと召し上がれ」
両手を離れた十の内のひとつ――両者の中間辺りの位置でふわふわと浮いていたお手玉が、ゆっくりと
「おいおい、緩急をつけることでの
「違うよ。おばさんが対応出来てしまうっての、一連の動きを見て知っちゃったからね――
おばさんと言われ
突如お手玉が破裂した。
「うおぉッ!!?」
予想だにしない事象を目の当たりにし、完全に虚をつかれた
破裂音もさることながら、その後の出来事に対して。
ねねが武器として用いる手製のお手玉の本来の重量は約30グラム程度と軽めのものだが、肝心の中身であるビーズの総数は、およそ1,300個。
その全てに魔術が込められた数多のビーズが、散弾銃さながらに
極小の弾丸が如きビーズ群に対し、
両手首と両肘をくっつけた即興の盾により、顔面を防御する
(一手目、視界を奪う)
威力は落ちるとはいえ、眼球に当たれば失明する程度の速度と重さを有するビーズ群を、当然ながら相手は無視できない。
ガチャン!
次いで、
「あぁ!?」
その際お手玉をガラスや金属片を纏わせた状態にし、
(二手目、斬撃を付与した攻撃が自分に向かってきていることを理解させる)
「ちっ……クソがッ!!」
見えずとも音に反応した
この時点で、ねねの魔術が込められた残弾3つの内の2つが不発に終わった。
そして、未だ顔面を両腕で庇っている
「変わり種はこれでオシマイかい? ちったぁ焦ったが終わってみればなんとも――――――――ガッッッッ!?!?」
(三手目――
両腕のガードを解いた瞬間、
アッパーカットさながらの不意打ちをモロに受けた
「ふぅ、なんとか勝利ってところかな」
額の汗を
しかし――――――。
「……痛ェ、痛ェなぁ~……」
「えっ? えっ、うそでしょ?」
終わったと思っていた矢先、
「これ骨とか折れてんじゃねぇのか。ふざけんなよコラ。これじゃあワタクシこの後―――――大っ嫌いな病院に行かなきゃならねぇじゃねぇかよオイィィイッ!!」
「うわ……うわうわうわっマジか、ちょっと困る。それは困る、いやもういいじゃんもうやめようはいはい終わりおわりいーちぬ~けたっていうかこれかっかか完全に想定外なんですけどどうしようどうしようやばいやばいやばいやばい」
先程のやり取りは
彼女にとってこれ以上投げれる道具は、たったの一つも存在していない。
「ひひひっ。演技じゃなさそうで嬉しいよ。かなぁり効いたが、その甲斐あったってもんだ――さて」
痛みに顔を
「
「……なんでしょう?」
「目か指か」
「
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