第3話【limited express panic-ハンキュウジヘン-】(7)
かれこれ4世紀以上前、ある存在によって意図的に引き起こされたその争乱において、
日本国外の99.999%の魔術師が死滅した出来事の後、もはや選民されたと言っても過言ではない生き残りの魔術師たちは、ともかく互いが魔術を用いて闘うという行為を可能な限り避けてきた節がある。
何故ならば、魔術を用いての戦闘はほぼ確実に尋常ならざる被害が双方にもたらされてしまうから。
戦力となる駒が均等に割り振られた
世間とは隔離された秘境の地――残存する魔術師たちがひっそりと身を寄せ合いながら暮らす集落において、“儀式”という名の
通常では有り得ないそんな事象を、連日当事者として経験し、都合4回目となる
自身が両手で持てる無機物(ただし生きている物は除く)に対し、速度と重量を加え、己の意のままに操ることが可能。
あらかじめ対象物へと魔術を施しておけば、詠唱不要の
しかしながら、ねねには対魔術師戦の経験値が圧倒的に足りていない。
昨日の
(
本来であれば、互いに魔術の正体が分からないまま行われる対魔術師戦は、今回の様に両者が向かい合ってよーいドンで開始されるべきものではない。
故に先手必勝。一瞬でも早く相手へと攻撃を当てれるかどうかが重要であると考えるねね。
しかしこと今回に関して、自分よりも先に
「トゥルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル~♪」
口先をすぼめ、舌先を高速で
(何だか分からないけど、生身でなくともアレに触れるのはやばそうな気がする)
前提として、ねねは
ふわふわと
風のあおりを受け、黒い泡玉はさもあっけなくねねが立つ位置とは別の方向へと進路を変えた――のだが。
先程まで立ち会っていた刺客である
「あれ? どこ行った?」
付近は人通りの皆無な住宅地の一角に面した道路であり、身を隠せる場所は無い筈である。
程なくして、辺りを見回し索敵を行うねねの後方より、
「トゥルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル~♪」
反応し振り返るねねの足元、右脚の裏側に接しているマンホールの隙間より、黒々とした何かが勢いよく噴出した。
「ッ!?」
黒い泡玉へと注意をそらされ、一瞬の隙を突き回り込まれた失態も含め、相手の放つ魔術に被弾してしまったという事実にねねは
「ひゃは♪
「……??」
右脚の膝から下をべったりと黒い泡が濡らしているも、
「女学生よろしくおしゃべりしてた間によぉ、仕込ませてもらってたんだわ。まずは右脚いただきぃ! ひひひっ!」
なぜか痛みは全く感じられない。
特徴的な笑い方と共に勝ち誇る
(てっきり毒の類だと思ったんだけど……?)
あくまで黒い泡は
黒い泡に触れたねねの右脚は、確かに痛みは感じなかった。
けれども実の所、それは痛みだけにとどまらず五感の内の触覚を奪い去っていて、加えて――。
(う、うお……ッ!?)
ぐらり、と。
ねねの意思に反し、彼女は
手とは別に、彼女が片膝を付いたアスファルトの地面は。
まるで象が踏み抜いたかのように歪な亀裂を走らせていた。
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