第2話【food fight-タビマエノショウガイ-】(8)
突然うずくまり吐血をし、その場から動かなくなってしまったねねを眺めながら「何か変な物でも拾い食いしたのかなぁ」などと、的外れも
しかしながら、己が振るう
断っておくが
しかし分かっていないからこそ、一旦とはいえ攻撃の手を止め静観していた彼女の次にとった行動は、圧倒的不利ともいえる戦況を覆し得る
「ていっ」
気の抜けた掛け声と共に、
「これはクリリンの分! そしてこれはクリリンの分!! そしてそしてこれはクリリンとその子供たちの分だぁああああ!!!」
袋口から飛び出し、地べたにぽとぽとと落下したおにぎりの数々を、踏み抜く様にして一つ一つ台無しにしていく彼女。
「………………」
突如として展開される暴挙に、石化したかのように硬直する
原理が分かっていないながら、彼女がとった行動は
同時に、身体を
(め、めちゃくちゃするなあの子は……)
未だ様々な悪化を身体の要所要所に抱えている
しかし――。
「ほたえなやこのガキャ……
「ギャッ」
ペキペキパキパキッ! ゴンッ!!
短い悲鳴を上げ、一つや二つで済まない程度に折れた歯々を撒き散らし、後頭部から地面に落ちた
「……はっ! しまった。私としたことが思わず我を忘れて手を出してしまった……」
皮膚に刺さった
「とてもダサいですね。事前に殺さないと言っておきながらこの体たらく。格好悪い事極まりない……いやしかし可能性は低いが当たり所次第ではワンチャン死んでいないかも……」
己にとって
不慮の事故で相手を死なせてしまったかもしれないという事に対して悩む彼とは違い、ねねには
(遠目だからしっかり確認出来ないけど、今あの子が気絶しているとすれば、少しばかりよろしくないね……)
銃で狙撃されようとも、頭部を吹っ飛ばされようとも死なない
即ち、意識が無い状態での負傷は通常よりも蘇生にかなりの時間を要する、ということ。
昨晩の
(いや違う。この際、
ねねは、身体を引き
直線にして2~30メートル、普段であればなんてことは無いちょっとした距離が、今のねねには酷く長く感じられていた。
程なくして、ああだこうだと独白を続けていた
身体を前に寄せ、手を伸ばせば触れられるぐらいの、至近距離。
「もしかしてお友達の件怒ってたりします?」
「別に……おじさんは知らないかもだけど、あの子……この程度であれば大丈夫、だし……」
目下悪化の最中にあり、脂汗でびしょびしょになった額を拭い、行きも絶え絶えにねねはそう返す。
「左様ですか。謝っておきますが、わざとじゃあないんですよ。ほら、人って絶対に譲れない大切なモノをそれぞれ抱えているじゃないですか。私の場合は食事がそうでして、我を失ってしまうんですよね」
「知ってる……見てた……」
「なら話は早い。貴方も同じことを繰り返そうとするのではなかろうかと、少しばかり懸念していたものでしてね。私は
「ふぅ……ふぅ……大丈夫、あたしはおにぎりを潰したり、しない……」
「ではどうします? わざわざ近付いてきて、ようやっと降参してくれますか?」
ぱくぱくとおにぎりを食べながら、余裕の表情を見せている
ねねの全力の魔術を受けかすり傷ひとつで済ます鉄壁さに加え、対象をこれでもかというぐらいに弱体化し終わった状態であるというのに、
昨日対峙した
「白旗上げるのは……お断り、だね……」
敗北必至、勝ちの目が見当たらない
「それはそれは! とても前向きで良いですね。手負いの獣程恐ろしいものはありません。追い詰められた貴方の隠し玉、是非とも見てみたいものですなぁ!」
高笑いと共に両手を広げたその瞬間を、ねねは見逃さなかった。
彼女は脱力し、前のめりに倒れ込み――そして。
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