第22回 獅子王さんちのメイドドラゴン
「お初にお目にかかります、ご主人様。」
ロレンツの後に入ってきたのは美しい紺碧の髪を持つロングタイプのメイド服を着た女性だった。線は細くなく、俺のイメージの奴隷とはかけはなれて見えるほど健康的で・・・よく見ると頭に角のようなものが左右に生えており、瞳孔は縦に細く見える。
ミサキが見ていたアニメに出てくるようなお淑やかなメイドさんと言うやつだ、ルリコの家にいたヒナカさんは何故かミニスカだったが家主の趣味だろうか。
「如何でしょうか、当商店でも一二を争う美貌を持っておりまして、多少引っ込み思案では有りますがよく気がつく娘でございます。」
「いや、俺は買う気は無いぞ?」
「いえいえ、お代金を頂くつもりは御座いません。こちらは当方からの贈り物としてお受け取りいただければ幸いでございます。」
「そ、そうなのか・・・?」
チラリと彼女を見ると悲壮感などは感じさせない笑顔を向けてくる、口を出さないのは彼のセールストークを邪魔しないようにだろう。
「こう見えて彼女は亜人種でしてね、中でも特に珍しいとされる気高き純血の
「成程、冒険者の足手まといになることは無いということか。」
「そうなります。これ。」
「はい。」と、彼女がここでようやくドアの前からテーブルの横へ進んでくると両手でスカートの裾を摘み左右へ広げ、脚は軽く曲げてクロスさせ上体は45°程倒し恭しく礼をする。これは俺も知っている、カーテシーもしくはカーティシーとも言われる中世ヨーロッパから開拓期のアメリカで上流階級にあたる女性のお辞儀として流行した作法である。映画で見た。
「リリィ・シルバーと申します。生涯奴隷で姓は家名では御座いません、ロレンツ様より賜りましてございます。この身は獅子王さまへ捧げる為に
「え、いや、俺はまだ」「隠さずとも大丈夫、貴方さまは冒険者にも関わらず研究者肌の方と同じ目をしておられます。既に彼女への興味心をお抱えでございましょう?」
その後彼女は一旦控えへ下がると直ぐにやはり露出の激しい女戦士然とした衣装へ着替え、ボストンバッグのようなものに荷物を詰めて再び部屋へ入ってくる。
準備万全といった風に再度礼をしてみせた。
うん、完全に堀は埋められてしまったようだ・・・ここで連れ帰らなければ俺のメンツにも係わりそうな・・・何言ってんだ俺は?
「では獅子王どの、こちらに
「こうか?」と、ロレンツの前に右手を差し出すと次に彼はリリィに目配せをする、すると彼女は逆の左手を差し出した。
「ではこれより奴隷呪法の儀を執り行わせて頂きます。」
『汝、リリィ・シルバーは主君たるハヤト・獅子王へ忠誠を近い、
少し暗めの魔力の渦が俺と彼女を包むと自分の右手の中指にリングが、リリィの左手の甲には丸い紋様が浮かんだ。
魔法に詠唱を加えているだけあって相当強力なものなのだろう、リングはどう頑張っても外せないようだった。
「これにてお二人を結んだ契約が成立致しました。リリィよ存分に可愛がってもらうのだぞ。」
「ありがとうございます。」と彼女はロレンツさんに深々と頭を下げ、次に俺に向き直ると俺の手を取って
「宜しくお願い致します、ご主人様♡」
そう呟いて満面の笑みを浮かべたのだった。
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という訳で現在に至る。
リリィは俺の部屋で素早く着替え、再びメイド姿になるとギルドのカフェスペースで俺の横に供えていた。
俺は軽く頭を抱えている。
どうしてこうなった?
「それはワシのセリフじゃがな・・・。」
「ご主人様どうなされました!?」
「ご主人様て・・・。」
「恐らくはロレンツの仕業ですわね・・・。」
今日はルリコは帰ったままらしくこの場にはいない。
ミサキ・ジオ・メズールの三人とテーブルを囲み、リリィの入れてくれた紅茶を飲んでいた。それにしても俺の好みがロイヤルミルクティーだなんていつ知ったんだろうか・・・。
「皆さま、お初にお目にかかります。わたくしとしてサーヴァントとして本日より獅子王様へお仕えする運びとなりましたリリィ・シルバーと申します。この身は亜人種ドラゴニュートで御座います、メイドとしても冒険者としてご主人様の戦闘の一助となれれば幸いです。」と恭しく
「凄い本物だ・・・。」とミサキは大変感動しているようだ。本物とは?
「ロレンツとやらは分からぬが素晴らしく教育が行き届いているのが見てとれるのぅ。」
「ええ、堂に入った所作ですわね。」
「勿体なきお言葉、痛み入ります。」
しかし青い髪の竜人か・・・昔のミサキみたいだな。
「ミサキ・スオウ様にジオ・マグラス様ですね、メズール様は知っておりますね。」
「ええ、ギルドへ遣いとしてこられたので何度か。」
「因みにリリィ。」「はいご主人様、如何なされましたか?」
「・・・どれくらい強いか試さないか?」
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