第23回 瀟洒で強いメイドさん

「おやめ下さいご主人様、わたくしめとご主人様は絶対不可侵の奴隷呪法スレイブ・マジックにて繋がった身。この魔法にて貴方さまと契約した時点で主である貴方さまを害することが適わないようになるのです。」

「そうじゃぞハヤト、軽くお主を煽るような発言ですら出来なくなる魔法じゃ。確か激しい頭痛によって動けなくなるんじゃったよな?」

「ええ大叔母さま、私のギルド職員の中にも生涯奴隷と借金奴隷がおりますが多少反抗心のある方でもそれを主に向ければたちまちそうなるはずですわ。」


絶対不可侵ねぇ・・・。確かにロレンツさんから受け取った書類にもそう書いてあったな。


「もしわたくしの戦力を測りたいのでしたら共にクエストにお連れくださるのが最善かと愚考致しますが如何でしょうか?」

「そうだな、」

「じゃあ今日はリリィちゃんの歓迎会にしない?」

「それが宜しいですわね、ルリコさんもお呼びしないと。」

「そ、そんな、メイドを雇っただけなのですからそのような待遇は。」

「諦めいリリィよ、我々はそういう性分なのじゃ。」

「は、はあ・・・。」


そうしてその日は残っていたいつかの食材も使って小宴会が開かれた。

リリィも調理に参加するとやはりその腕前はプロのようで全員が満足する逸品を作り「よいメイドを雇ったのう」とジオまで羨む事態になったりしたのであった。

ルリコとヒナカさんもいつの間にか参加していたので宴会は盛り上がり、少し寝るのが遅れてしまう程であった。


しかし少し気になるな・・・俺の気の所為でなきゃリリィは相当強い。

ドラゴニュートという種族のこととか調べてみるか。



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後日、暫く滞在したセルゲイから帰ることになったジオを送るため俺たちは隠れ里へ戻ることに。

何故かといえばこの世界の伝書鳩とも言える魔法生物ブルーバードがオズさんから届いたからである、聞けば相当職務が溜まっていて頭脳働き担当がいないとにっちもさっちも行かないんだとか。


「ルリコも着いてくるのか?」

「オレもパーティメンバーじゃなかったのか!?寂しいこと言わずに連れてってくれよぅ。」

「冗談だ、ヒナカさんはどうするんだ?」

「アイツはこっちで留守番だぞ。」「可愛そうじゃないの?」

「ミサキ様、奉仕奴隷とはそういうものでございます。直接の面識はありませんが彼女もメイドであるならば理解しているかと。」

「お土産いっぱい買って帰るしな!」


また途中でピクニックでもしながら帰るか、と俺は暫くしまっていたビークルを出すため街の外に向かう。

そしてベルトを出現させ、レイドカードで二台を召喚する。


「なんy・・・!!ご主人様、これは一体???」

「ん?ああ、リリィは初めてか。」


いつの間にか着いてきていたリリィは相当面食らったようだ。・・・今ちょっと素が見えかけたような。


「これは俺の専用ビークルのゼロムストライカーとゼロムキャリアーさ、コイツに乗って帰るんだ。」

「これは・・・鉄の馬とゴーレム馬車でしょうか?こんなサイズの物はわたくし初めて見ます、お見逸れ致しました!」

「別に金持ちって訳じゃないからな!?」

「ご謙遜を、A級冒険者ともなればある程度の貯蓄があっても人には言わないものです。流石はご主人様。」

「ふむ、リリィ・・・あんまり俺にへりくだる必要は無いぞ?俺も過剰なのは苦手なんだ。」

「そ、それは申し訳御座いません!ですがわたくしもこの口調は長らくの苦労により会得したものなのです、ご主人様の嗜好に合うよう学ばせてくださいませ!」


苦労?


「・・・ちなみに素だとどんな喋り方になるんだ?」

「嫌ですわ、それは封印してございます。」


俄然彼女の素と戦闘力に興味が湧いてきたな・・・どうやってこの牙城を崩してやろうか、悪くないな。



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そして帰路に着いた俺達はキャーキャーいって怖がる新メンバーのためバイクゼロムストライカーは一旦仕舞い俺も装甲車に乗ってゆっくり運転して帰ることにしたのだった。

やはりこの世界の住民はスピードの出る乗り物は苦手なようだ、例のおぼっちゃまも魔導馬車が暴走した時は相当パニックだったし。

少し素が見れたのはよかったかもしれない。


そして休憩に寄ったセルラスの湖畔。

顔を青くしたリリィはリバースしたが数分後には何食わぬ顔で戻ってきた。この世界には酔い止めが無いようなので回復魔法をかけてやった、便利だな魔法。


「お見苦しい所を申し訳ございません・・・。」

「初めて乗ったんだ、しょうが無いさ。」


それからリリィは俺の腕にしがみついてしばらく離れなくなってしまった。

俺より身長のある子にこうして頼りにされるのも悪くは・・・ミサキさん、あんま睨まないでくれませんか。


「よしよし怖かったね~残りはバランサーとか使ってもっと安全運転にするからね~。」とぽんぽん彼女の頭を撫でるミサキ。


「あ、ありがとうございますミサキ様。」

「あんま虐めるなよ?」

「な!そんなつもり無いわよバカハヤト!」


久々に聞いたなそれ。

そうして落ち着いたリリィを主軸にピクニックの準備が始まった頃、ソイツは現れた。


『GUMOOOOOOOOOOO!!!!』


「なんだありゃ、豚?」

「アレはキャノンボアだぞ!美味しいけど魔法がなかなかキツいやつだ!!」

「っ、ご主人様がた避難を!ここはお任せ下さい!!」


そう言い放つとリリィは自身のメイドドレスの肩口を掴むとバサッと脱ぎ捨てる。その下はいつの間にか見たこともないウロコ状のモチーフが入ったビキニアーマーのようなものを着込んでいた。

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