第16回 巨大なサメですか?!

セルゲイのギルドはコンセプトカフェである。


ギルド内の雰囲気は少しダーク調で纏められているものの決して陰湿ではなく、従業員全員がシュッとした燕尾服に身を包み一部の席では若い女性がキャーキャー騒いでいたりする。

・・・彼女らはどう見ても冒険者らしいガッチリした体格をしているのだがギルドに来るには似つかわしくないフリフリとしたドレスのような服だな・・・。


「なんなんだここは?」「うむ、セルゲイのギルドはな」


「あら、このギルドは初めてかしら?歓迎いたしますわ冒険者さま。」と、ジオのセリフを食い気味に話しかけてきたのはこの空間には合っているのだがギルドにはやはり場違いに見える真っ赤なドレスを着た長身の女性だった。

豊満な谷間を隠すことなくヘソなどはさらけ出しているのにフリルをあしらったロングスカートのドレス、ボリュームたっぷりの金髪を縦ロールの隙間から長い耳が覗いていた。

要はド派手な露出過多のお嬢様と言えば一言で片付く。


「わたくしは冒険者ギルドセルゲイ支部を治めるメズールと申します。」

「えっと、かっこいい従業員さんがビシッとした感じですけどこれは?」


おや、ミサキさんが興奮しているようだ。


「おや、わかります?当ギルドは元々は海の街故に冒険者以外にも荒くれ者が多く、ギルドを利用する女性からも苦情が多かったのです。それをわたくしがギルド長の職に就いた際に稀人様の案も取り入れてリノベーションしたのですわ!」

「なるほど!!」

「なるほどなのか?」

「汚いよりは良いかのう・・・?」



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その後、ルリコはクエストの達成を報告してくると一旦別れ、俺たちはメズールさんに呼ばれて別室へ。因みにミサキは執事さんを堪能したいとかで一人テーブルに置いてきた。

そして俺たちが着席すると先程とは違う少し年配の執事が各人の前に紅茶と焼き菓子を置き、低姿勢のまま出ていった。

・・・なんか悪魔みたいな角と羽付いてたが。


「さて、本題に移るとするかの。」

「そうね、一言で言えばサメですわ。」


サメ。

鮫?


「サメとはなんだ?魔物か?」

「・・・!!まさか鮫を知らない冒険者がいらっしゃるの!?」

「無理もなかろうな、こ奴は稀人じゃ。」

「そうなんですの?たしかに変わったお召し物とは思っていましたが・・・そうですの、歓迎致しますわよ稀人さま。」


また服が突っ込まれた、そんなに変わっているだろうか?


「以前出会った方とはまるで違うタイプでしたのでつい・・・私が唯一知っている方は女性でしたので。」

「ワシもこ奴も長く生きてはいるがそうそう稀人に出会う機会など無いからのう。ちなみにメズールはエルフじゃからワシ未満とはいえ並の人族に比べれば長命種であるぞ。」

「なるほどな、美しい見た目と強い魔力がエルフの特徴なのだな。」

「あらあら、お上手ですわね♪」「ワシ褒められた覚えないじゃが!?」

「それよりクエストの件を聞いていいだろうか?」


・・・要約すると鮫とはこの都市付近の海域に出没する大型の肉食魚らしい。

最近現れるようになったという【バイトシャーク】と呼ばれる全身のヒレが硬質のブレードと化した魔物が船を襲うため漁船はもちろん貿易船も離着岸が厳しく、必ず武装した冒険者を雇わなければいけなくなるため大変効率が悪くなっているのでどうにかしてくれというのがクエスト内容らしい。


「メズールよ、一応言っておくがこ奴は平気で地形を変えるような威力の技を多用するからナ?」

「大叔母様も人聞きが悪いですわ、それこそ最近たまに噂を聞く程度の魔王のようではありませんか。」

「出来るぞ。」

「やるでないぞ!?」



【○】討伐クエスト・大型サメモンスターを討伐せよ!!【○】



「で、何処にいるんだそれは?」

「そうですわねぇ・・・探知魔法はあるにはあるのですがこの広い海全部をサーチするわけにはいきませんので。」

「いや大丈夫だ、この街近くの海にいるんだな?」

「どうする気じゃ?」

「俺に考えがある。」



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「なんですのこれは!?王国の大貴族でもこんな大きさの魔導馬車は持ち得ませんわよ!!」

「あ、メズールさんこんちわ~」

「あら、ルリコさんもお知り合いでしたの??」

「うん!!」


やはりゼロムキャリアーは目立つらしい。

街の外に駐車しておいたらいつの間にかギャラリーが出来ていた。


「散れ散れ、見世物ではない。」

「あんだぁ?兄ちゃんの馬車かよ、とんだお大臣様かぁ!?」

「なんだなんだ女ばっか連れてやがんなぁ、俺たちも寂しいから3~4人置いてってくれねぇか!!げははははははは!」

「・・・【麻痺呪法パラライズ】。」

「「グギャアアアアアアアアアアア!!」」


「おぉ、魔法使えるんだな。」

「オレはレンジャー職だからな!攻撃はそこそこで支援魔法やこういう糸を使うのが得意だぞ。」と、粘着質の糸で先の荒くれを縛っていくルリコ。

普段歩くのに使っていない前足?を器用に使って糸を操作していた。


「さて俺はっと・・・お、使える使える。」

「ん?この車って馬鹿デカくて恐ろしい速さで走るだけじゃないのか?」


車外コンソールを引き出して操作しているとルリコが後ろから抱きつき、肩越しに覗き込んでくる。

・・・少しでも仲良くなった者への距離感が近すぎないかコイツは。


「コイツは・・・レーダー探知機だ。この辺りの地図のどこにどんな生物がいるかわかるんだ、だいたいだがな。」

「へぇー、この点みたいなものか?」

「そう、それが今お前が縛りあげた奴らの反応だ。これをこうして海の方が見えるようにすれば・・・」

「便利ですのねぇ・・・。」


画面をタッチしてどんどん海岸線をチェックしていく、すると明らかに人間や魔物とはサイズの違う大きな反応が現れる。

これは一体・・・。

その時ギルドの中からジオが飛び出してくるのが横目に見えた。


「ギルド職員の監視班から連絡が入ったぞ!通常サイズとは明らかに違う超巨大バイトシャークが発見されておる!!」

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