第14回 旅は道連れ、世は情け
サンドイッチとは簡単なようで奥深い、
さっとパンの片面にバターとマヨネーズを塗り、キュウリとハムを挟むだけで完成する。だが、そこから手を加えていけばどんどん他の料理にも引けを取らないように変わっていくのである。
たまごサンドなど聞くだけなら簡単だが実際に中身を一から作ってみた方はどれくらいいるだろうか?
卵を黄身が溶け出さない程度に茹で、粗く砕いた後に刻んでカリッと痛めたベーコンとマヨネーズでよく混ぜ、塩コショウで味を整えれば完璧である。もちろん粗く挽いた黒胡椒を加えるのも忘れてはならない。
そんな手間も時間もかかったであろうたまごサンドをアラクネの少女がとても美味そうに咀嚼していた。
「うんまいなぁああああ、こんなに美味いもの作れるなんて神様しかいないぜっ!」
その
どうやら腹が減りに減って俺たちに手を伸ばしたようだ、食べ物を豊富に持っていたのが功を奏したな。
「してお主はなぜこのような所に?街道からは些か離れすぎてはおらぬか?」
「いささか?せんせい?よくわからねーけどアタシはこの辺りがナワバリなんだ!あ、それと美味いメシありがとな!・・・えーと、真っ黒なカッコの兄ちゃん。」
ふむ、俺の唯一持ってこれたこのライダースジャケットの良さがわかるとは悪い奴では無さそうだ。俺はこれを次元収納に十数着保存してあるので当分服に困ることは無い。
「たぶんその服褒めたワケじゃないと思うよ?」
「なに!?」
「・・・ではこの辺りに家でもあるのか?ワシは把握しておらんが。」
「いえ?は知らないけどオレんちはそこの洞窟だぞ!」と、少女は湖畔から少し離れた場所にある小高い丘を指さした。
「孤児かのう・・・いくら亜人種とはいえ町からこんなに離れた場所に集落があるわけでもなく住んでおるのか。」
「じゃあじゃあもっとサンドイッチ食べる?えっと、なにちゃんかな?」
「オレか?オレはアラクネのルリコだぞ!」
「そっか、わたしはミサキだよ。」
・・・女性ばかり増えていくな、それにしてもこの世界では羞恥心というものはあまり無いのだろうか・・・ミサキの格好も大概だとは思っていたが。
里だけでなく港町の住民もこうでは無いことを願おう。
「ここだぞ!。」
そう案内された洞窟・・・というかこれではまるで熊の巣を奪い取っただけに見えるな。
申し訳程度の
本人が普通の人族二人分ほどの身体のサイズ故か、広さだけは十分確保してあるように見えた。
やはり一人暮らしか・・・。
「ルリコといったか、君の両親はどこに?」
「りょーしんってなんだ?」
「パパとママ、父ちゃん母ちゃんのことだ。」
「ああそういう・・・。」「あっ、聞いちゃダメだった?」
「南の大陸だぞ?」「生きとるんかい!!」
「生きてちゃダメかよ!オレの一族は大きくなったら一人前になった証拠に
蜘蛛の半身の毛並みをサワサワと動かしてるな、彼女のクセだろうか。
野生動物の中には子供が大きくなると自分の群れを作るために群れを離れる生態を持つものがいるらしい、ナショナルジオグラフィックで見た。
彼女を未開人扱いするつもりは無いが俺の世界にはいなかった種族だ、似た気質という可能性もある。
「ハヤトハヤト!オレもっともっと美味いもの食べたい!」
「しかし俺達もここでゆっくりし続ける訳には行かないんだよ。」
「なんか忙しいのか?」「ああ、俺たちは冒険者の仕事でセルゲイの街に行かなきゃならないんだ。」
するとルリコは何か考え込むように腕を組むが胸が邪魔そうで上手くできないようだ・・・。
「よし決めた!オレも冒険者だしハヤト達について行くぞ!」
「冒険者だったの?!でもルリコちゃんは何かここでしてたことがあるんじゃないの?」
「いや、採集と討伐を一緒にやってたからあの穴でキャンプしてただけだぞ?」と、収納魔法が使えるのか集めた何らかの薬草のようなものを取り出してみせるルリコ。
「眠り草じゃな、煎じて使えば睡眠薬にも気付け薬にもなる。」
「なるほど、納品があるなら一緒に行こうか。ただし・・・俺の愛馬は凶暴だぞ?」
「へ?馬なんてどこにも・・・。」
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「嫌だああああぁぁぁぁ下ろしてええぇぇえええええ!!!!」
「あきらめい、ワシもいい加減慣れてしもうたわ。」
そんな会話がヘルメットの無線から聞こえてくる。
「じゃあもっと飛ばしても大丈夫だね、ハヤトーペース上げるよ!」
「了解。」
「「うぎゃああああああああああああああああ!!!!」」
ジオとルリコは仲良くなれそうだな。
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