邂逅
いつもなら簡単にケモノの固く厚い装甲を貫くナイトガーゴイルの武器が、ひとつも通用しなかった。
反対に、最後の敵の攻撃はナイトガーゴイルを容赦なく打ちのめした。最後の敵はとてもちいさかったのに、おそろしい強さだった。
わけがわからないまま、ナイトガーゴイルは最後の敵にバラバラにされた。
ぼくはまもなくして絶命した。
するところだった。
けれどナイトガーゴイルはギリギリのところで、ケモノの技術を利用して造られた稼働エネルギー精製炉の力を反転させることで空に別次元隊へ通じる大穴をこじあけた。そしてコクピットをパージして、ぼくをこことは異なる次元へと逃がしてくれたんだ。
ぼくはナイトガーゴイルの犠牲のもと、なんとかいきのびた――が、逃げのびた先は無限につづく虚無の空間で、ぼくはそこを途方もない時間さまよいつづけた。
一瞬とも、一京年とも区別のつかないくらい長い時間をひとりで歩きつづけると、何度も気がくるって、ぼくは、ぼくが、すこしずつ、人間ではないナニカに変わっていく感覚を得ていた。そうすると、ふと正気に戻ったときこわくなって、歩くのをやめたくなった。
そのたびにぼくに前を向かせるのは、ぼくの大切なロボットと最後に交わしたひとつの約束だった。
『あなたがどこにいても、私は必ずあなたを見つけます。だからどうか、心配しないでください。マスター』
心の奥底で優しく語りかけてくるその言葉に、ぼくはこうこたえた。
「ぼくもかならずきみに会いにいくよ。約束だよ」
ぼくはその約束をみちしるべにして、歩きつづけた。
やがて、とうとう、ナイトガーゴイルを見つけた。正確には、そのカケラだ。
最後の戦いで、ケモノ――いや、ぼくという存在がありながらナイトガーゴイルの攻撃を通さなかったからケモノではなかったのだろう――『ナニカ』の手によってバラバラにされた彼の気配を、ところどころで感じられるようになった。
ぼくはよろこんで、ナイトガーゴイルのカケラが落ちた世界をのぞきこんだ。
しかし、ぼくがその姿を目にした途端、ナイトガーゴイルのカケラは巨大でおそろしい兵器によって破壊されてしまった。
ぼくは身が裂けそうな苦しみを感じながら、次の世界、次の世界をのぞきこむ。
しかしどの世界でもナイトガーゴイルのカケラはみじめにむなしくチリとなっていった。
ぼくはなんとかナイトガーゴイルのカケラをたすけたくて、怒りと絶望にさいなまれながら世界の向こうへ干渉できる場所をさがし回り――そして、ついにぼくの呼びかけにこたえてくれた世界を見つけ出した。
ぼくはその世界に飛び込んだ。そこにナイトガーゴイルのカケラはなかった。
かわりに、いつもいつもナイトガーゴイルのカケラにひどいことをするおそろしい兵器がいたので、ぼくはいてもたってもいられず巨大なそいつのボディに飛びかかった。
そして力のかぎり何度も、何度もたたいた。装甲をはがし、武器を粉々にし、頭部をもぎとった。
おそろしい兵器はいともあっさりとたおされ、気づけばバラバラになっていた。
こんな弱いやつに、カケラとはいえナイトガーゴイルが苦戦していたなんて、嘘みたいだった。まるで手応えがなかった。
でも。
ぼく、勝ったよ。ナイトガーゴイル。
そうぼくが叫ぼうとした瞬間、すでに千々に分かたれていたおそろしい兵器のボディから、光とともにちいさなナニカが切り離された。
ぼくは、その光に、ぼくを見た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます