第14話 魔石採掘
「お嬢様こちらをご覧ください」
マーズニさんが自分の足元を指さしているけど、そこには立派な透明の魔石がニョキっと生えている。
「この魔石の周りに魔力が漂っているのが分かりますか?」
そう言われてまた集中すると、なんとなーく白っぽい薄ーい煙みたいなのが見える。
「薄い煙っぽいのが見えるような……」
「魔力が見えるようになってきていますね。この魔石は根元を折るようにすると簡単に採取できます」
マーズニさんはそう言ってしゃがみ、魔石に力を込めるとパキっと簡単に折れた。あたしたちは近くの目に見える魔石をパキパキと採取していく。採っては背負カゴに入れていくから重さも増してこれも筋肉に良さげだなぁと思っていると、辺り一面を採り尽くした。
「ではお嬢様。次は壁の中から魔力を探し出してください。そこにレア魔石があるはずです」
あたしよりも魔力が見えるマックは「ここだ!」と言ってツルハシで壁を掘っている。中からは薄い水色の魔石が出てきた。
「マックすごっ! それは何の魔石なの?」
「分かんねぇ。採った魔石を協会に持って行って鑑定してもらうんだよ」
へー。あたしも頑張ろう。そう思って壁を睨むけどなかなか魔力が見えない。壁の中に埋まってるからかなぁ。でも諦めきれずにあちこち睨んでいると、マーズニさんが『炎』の魔法を使った時のような赤いモヤモヤが見えた気がした。
「どっこいしょー!」
気合を入れてツルハシを振ると「そのかけ声!」とマックはまた腹を抱えて笑っている。なるほど。ツルハシを振るうにもコツがいるわけね。振るう力が足りないと壁は崩れないし、ツルハシを持つ手の力がないと先端がブレる。面白い。やってやるよ。
あたしは両手に力を込めてツルハシを握る。そしてちゃんとやったことはないけど、剣道の『面!』みたいに真っ直ぐにツルハシを振り下ろした。
ガンッ!
ツルハシの先端はちゃんと狙ったところを捉えている。あとは同じことを繰り返すだけだ。ガンガンと岩壁を削っていくと半透明の赤い魔石が見えてきた。魔石に当てないように気を付けながら掘り進めようやく魔石を手に入れた。
「やったー! 魔石ゲットー!」
「よくやりましたな」
マーズニさんも褒めてくれる。そんなマーズニさんはその魔石を見ると「火の魔石ですね」と言う。
「マーズニさん分かるの?」
「火の魔力を感じました。あとは長年の経験ですね」
と言う。同じ属性を持っていると分かるとも言っていた。二人でそんな話をしているとマックに呼ばれた。振り向くとマックはマーズニさんに「人がいないからいいよな?」と確認したあと拳に力を込める。
「マック何してんの?」
「『力』の魔法を試すんだ」
そう言うマックの拳は『炎』の魔法の時とは違う赤い色を纏う。そして「ふん!」と壁を殴りつけるとガラガラと崩れ、その中にはまた魔石があった。
「マックすごっ! 超すごっ!」
マックは「へへっ!」とドヤ顔をしている。自分の語彙力の無さに呆れるけど、魔法の力をさっきから体験してるんだから興奮しちゃうよね。今のは拳だけどさ。
「『力』の魔法は重い物を持ったりするのにも役立つのですよ。さらにマックのもう一つの魔法『速』も身体能力を向上させます。この二つの魔法を魔石に込めると荷物の配達員たちが喜ぶんですよ」
なるほど。重い物を軽々と持って急いで配達出来るんだもん、トラックとかがないこの世界ではそりゃ重宝するよね。
「お嬢様は『目』を使って魔石を探しましょう。背負カゴが一杯になったら終了です」
マーズニさんの指示通り、必死に『目』を使って魔石を探しては掘りまくった。背負カゴが満タンになった頃にはクタクタになっていた。
「では魔法協会へと戻りましょう」
マ? これ超重いんだけど……。まぁ鍛えられるしいいか……。
そしてあたしとマックはヒィヒィ言いながらようやく魔法協会へ到着した。中に入るとマーズニさんは最初とは違う受付に向かうのであたしたちもその後を追う。
順番が回ってきて受付の人に背負カゴごと魔石を渡すと、一個ずつ重さを計ったり魔法陣みたいなやつの上に乗せている。量とか質とか属性を詳しく調べているらしい。
「計量が終わりました。マックーリ・アナバトスさんはこちら、シンシア・リールさんはこちらになります」
何かを手渡されて見てみるけど何なのか分からない。
「ねぇマック、これ何?」
「何ってお金だよ! 魔石の採取って一応限られた人しか出来ない仕事だぞ!? そんなことも忘れちまったのか!?」
本気で心配してくれているようで、まだ少し残るおでこの傷を撫でてくれる。
「シンディお嬢様。少しずつでもお金を貯めればきっと旦那様の役に立つはずです。魔石の採取は『心魔技体』の成長と収入にもなります。これからも頑張りましょう」
この世界でも働いてお金を稼げるなんて思わなかった。自分の力で稼げるってマジ最高。あたしますますヤル気が出てきたんだけど!
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