第13話 初めての魔石洞窟
ツルハシと背負カゴを装備したあたしたちが来たのは、どちらかと言うとマーズニさんの家の方面にある魔石洞窟へと到着した。もう一ヶ所の魔石洞窟は魔法学校の生徒が授業で使う所らしくて、夜と魔法学校が休みの日しか一般人は入れないらしい。
「こちらをお願いします」
原っぱの中にポッカリと開いた魔石洞窟の入り口には門番みたいな人が二人いて、マーズニさんが通行証を見せると門番が手をかざす。すると通行証から青白い光が浮かび上がり、空中には「OK」の文字がフヨフヨと浮いている。
「お気を付けて。現在他に探索者はおりません」
門番が左右に分かれ道を開けてくれる。貸し切りかぁ。いや〜緊張するわ。でもワクワクが勝ってるかな。
洞窟内は坑道みたいになっていて、岩の天井には光の魔法が込められた魔石がはめ込まれ内部は明るい。足元は土っぽくて滑ることもなさそうだ。よし!
「ちょちょちょ……! ちょっとシンディ! 何してんの!?」
マックが焦りながらあたしを見て叫ぶ。
「ん? 動きにくいからさ」
やる気満々のあたしはワンピースの裾をたくし上げて太ももの辺りで縛っている。はしたないとか目のやり場に困るとマーズニさんとマックに散々言われて、仕方なく膝くらいの位置で裾を結んだ。
「コホン……今この場には魔法が、魔力が立ち込めております。お嬢様は何か見えたりしていますか?」
一度咳払いをしたマーズニさんはそう言うけど、あたしの目には普通の洞窟にしか見えない。それを言うと、魔法っていうか魔力を目視するには慣れが必要だと言う。マックには魔力が見えているらしい。
「私も『火』の魔法を使えますから、それを使って説明しましょう」
マーズニさんはこの辺に漂う魔力を指先に集めて火をつけると言う。マーズニさんが人さし指を顔の前に立て集中すると指先に小さな火が灯る。
「すごっ! ホントに火がついた! カッコいい!」
拍手をしてキャーキャー言うとマーズニさんが照れている。するとマックも人さし指を立て集中すると、大きくなったり小さくなったりと不安定ではあるけど火が灯った。
「マックもすごっ!」
そう感想を言うと「へへっ」と自慢げに笑っている。
「お嬢様は『目』の魔法が使えるはずなので、私たちよりもより魔力を見ることが出来ると思います。見えるようになるまで繰り返しますね」
そう言ってマーズニさんは何回も火をつけてくれるんだけど、その魔力の動き? 流れ? は見えないかって言うんだけど、よく分かんない。
「私たちには煙のような水蒸気のようなものが指先に集まり火になるのが見えます。指の周りから指先に集まるので、集中して見てください」
実はシンディのカワイイ顔が台無しになるかと思って普通に見てたんだけど、やっぱ集中しないと見えないらしい。ただあたしが集中すると目つきが悪くなってガンを飛ばしているように見えるらしいんだよね。仕事中も店長や姉御に「給油口にガン飛ばすな」っていつも笑われてたっけ。懐かしいな。……シンディ、カワイイ顔を台無しにしてごめん。
「シンディ……顔がめちゃくちゃ怖くなったぞ……」
マックにもツッコまれたけど、つい「集中してっから!」と口も悪くなり黙らせてしまった。
軽く引いてるマーズニさんがもう一度人さし指を立てる。じっと人さし指を見ると、なんか黄色っぽいオレンジ色っぽい煙のようなものが薄っすらと見える気がする。するとマーズニさんの指先に火が現れた。
「見えた! 黄色っぽいのが見えた!」
「色が見えるのですか? それは『目』の魔法の特性ですね、素晴らしい! 魔法は強化していくと変化します。私の『火』の魔法を強化するとこうなります」
あたしとマックに少し離れるように言ったマーズニさんは洞窟の奥に向かって手の平を向けた。真剣に見ようとガンを飛ばしながら手に注目していると、赤い煙のようなものが渦を巻いて集まっていく。
『ボッ! ゴォォォ!』
キャンプファイヤーのような炎が現れたかと思うと、その炎は洞窟の奥へとすごい速さで飛んでいった。
「ヤバ! マジでヤバ!」
「じーちゃんスゲー! 初めて見た!」
あたしとマックは大興奮だ。
「『火』の魔法を強化し『炎』の魔法になりました。魔力の量と質を上げていくと使えるようになります。お嬢様の『目』の魔法はきっと遠くまで見渡せたりするのではないでしょうか? もちろん他の魔法も使えるように頑張りましょう。その為に『心魔技体』の『体』を鍛えるのに魔石の採掘は効果的です」
ようするにツルハシを振るって魔石を掘るのは筋力も鍛えられるということらしい。地面や壁からニョキっと生えた魔石は力を入れると根元から採取が出来るけど、レア魔石は壁の中に隠れてたりするんだとか。魔石の周りは特に高濃度の魔力が漂っているから、そういう場所をツルハシで掘るんだって。
いーじゃんいーじゃん。あたし肉体労働は嫌いじゃないし、よっしゃやったるわ!
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