第11話 魔法協会

 マーズニさんに連れられあたしたちは街の中にある魔法協会に来たわけだけど、窓口みたいなのはいっぱいあるし人もたくさんいる。例えるなら市役所みたいな? 老若男女問わず人がごった返してて、いかにも魔法使いですみたいな服の人もいれば普通の服装の人もいる。初めて都会に出てきた田舎者のようにキョロキョロとしているとマックが口を開いた。


「俺、初めて来た……。なんか緊張するな」


 と、あたしと同じようにキョロキョロと辺りを見回している。


「マックはさ、魔法学校に行かなかったの?」


 ただの疑問を口にすれば、マックは驚いた顔であたしを見る。


「行けるわけないだろ! 魔法学校なんて金持ちしか入学出来ないんだから! だから一般人はこの魔法協会でしか魔法測定器を使えねーの」


 マ? シンディはすぐに退学したけど、あの義姉妹はちゃんと卒業したってことは相当お金がかかったってことだよね。なんかモヤるわ〜。あんなクソみたいな義姉妹にお金を使うとか、魔法にかかってるとはいえシンディのお父さんめっちゃ苦労してんじゃん。

 一人でモヤモヤイライラしていると受付を済ませたマーズニさんがあたしたちを呼びに来た。一応個人情報の観点から測定は個室で行うようだ。自分の魔法を悪い人に知られて悪用されたりしないようにってことらしい。


 通された部屋は取調室のような小さな部屋で、奥に小さな机があって職員さんが座っている。なんで取調室を知ってるかはあえて思い出さないようにしよう。部屋の真ん中は一段高くなっていて、そこにいかにも魔法陣! って感じのものが描かれている。ヤバ、なんかワクワクするんだけど!


「こんにちは。今日は二名の魔法測定ですね? では先にマックーリ・アナバトス君、そこの測定器の上に立ってください」


 人の良さそうなお爺ちゃん職員さんが名前の確認をする。二人の名字をこの場で初めて知るのもどうかと思っていると、緊張の面持ちでマックが測定器へと進む。それもう測定器ってより測定陣じゃね? とは思ったけどドキドキが勝る。マックが魔法陣の上に乗ると『フォン!』という音と共に、七色に輝く光がマックの周りを舞う。スゲー綺麗……と思っていると、光は徐々にあたしには読めない文字となっていく。キラキラと光り輝く文字はマックの周りを幻想的に、そして螺旋状にクルクルと何周か回ると光ごと消滅した。


「はい、測定が完了しました。マックーリ・アナバトス君は『火』・『速』・『力』の魔法が検出されましたが、突出しているのは『力』のようです」


 マーズニさんもそれを聞き「三つもか!」と喜んでいる。マックもガッツポーズをしながらこっちに戻って来て、あたしたちは思わずハイタッチをした。


「はい、では次にシンシア・リールさんどうぞ」


 ヤバ! マジで緊張するんだけど! 何の魔法なんだろうなぁ。や、でも楽しみ。楽しみすぎてニヤニヤが治まらないままあたしも測定器の上に乗る。


『ブォン!!』


 あれ? マックの時と音が違うくね? 足元から七色のキラキラが立ち昇って来たんだけど、マックの時よりも一色一色が濃い色でキラキラの密度がすごくて前も見えない。キラキラみたいなシャラシャラみたいな不思議な音がして周囲の音も聞こえない。文字っぽいやつも見えてきたけど、クルクルどころか高速螺旋回転なんだけど。竜巻かよってくらい。でも戦闘魔法少女モノの変身シーンみたいでなんかテンション上がるわ。


『シュオン!』


 人生で聞いたことのないような音がしたと思ったらキラキラは消えちゃってて、代わりにあんぐりと口を開けた職員さんが見えた。何が何やら分からず振り返ると、マーズニさんもマックも同じ表情だ。しかも足元の魔法陣が消えちゃってる! ヤバ! 壊しちゃった!? ヤバくね!? ヤバヤバ言ってるあたしの語彙力もヤバくね!?


「……シンシア・リールさん……」


 おじいちゃん職員さんが口を開いた瞬間に、測定器から降りて土下座する。ジャンピング土下座というやつだ。


「なんか壊しちゃったみたいでごめんなさい! 弁償はするんで許してください!」


 これ絶対に高いヤツでしょ? シンディのお父さんに頼る訳にもいかないし自分でなんとかしなきゃ……。


「顔を上げてください。そして立ってください。怒ってなどいませんよ? むしろ驚いています」


 土下座の体勢から少しだけ頭を上げて後ろをチラリと確認すると、マーズニさんもマックもまだ口を開けて呆然としていたけどウンウンと頷いている。でも壊しちゃったしなぁ……と思いながら立って、手を前で組んで項垂れて反省してることをアピールした。これ職員室でよくやってたポーズだから慣れてるし。いやホントに反省はしてるけどさ。

 何を言われるんだろうなぁとハラハラドキドキしていると職員さんは話し始めたけど、あたしの頭では理解するのに少し時間がかかる話だった。

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