ルシオとリーゼロッテ 4
「どんな事を、お知りになりたいのですか?」
「えっと……。王子様はパーティーはお好きかしら?」
「嫌いですよ」
私の返事に彼女は表情を明るくさせた。
だからここにいるんです。とは言えないけれど。
それを聞いて何が分かると言うのだろうか。
「まぁ。私と一緒だわ。では……歌はお上手かしら?」
「多分……苦手ですよ」
彼女は少し驚いて、またにっこりと微笑む。
多分、歌声を聞いたら笑っていられなくなりますよ。
とまでは言えなかったけれど。
変な質問ばかりで、次の質問が全く予想出来なかった。
「まぁ。私と一緒だわ。後は……そうね。一人は……一人はお好きかしら?」
「……誰かといる方が、好きですよ」
彼女は柔らかな笑みを浮かべた。
本当は一人が好きだ。
でも、彼女を前にしたら、そんな事言えなかった。
貴女と一緒に居たいから。なんて言えないけれど。
でも、やっぱり変な質問ばかりだ。
「まぁ。私もなの。大勢は苦手だけれど一人も苦手ですの」
「何故、苦手なことばかり尋ねるのですか?」
「だって、苦手なものが一緒な方のほうが、気が合うと思いませんか? 理解し合えるじゃないですか。好きなものや幸せなことは共感しやすいですが、苦手なことを理解してくれる人って中々いませんから」
たとえ政略結婚でも、彼女は相手を理解したいし、されたいようだ。この人となら、政略結婚でも実りのある日々が過ごせるだろう。
彼女なら、何もない私の誇りになるかもしれない。
でも――。
「第二王子は、何も持っていませんよ」
「へ?」
「国を継ぐ資格もなければ、第三王子のように魔法の天才でもない。ただ、第二王子という冠だけを被せられたお飾りですよ」
「ふふっ。私と一緒ね。私もただの第二王女です。誇れるものなんて何もない。だから夜会は苦手なのかもしれません。胸を張って自慢できることなんて、何もないから」
彼女は私と一緒なのかもしれない。
この人となら、新しい自分を見つけられるかもしれない。
でも、彼女は急に表情を暗くさせた。
「どうしましょう。私には、王子様に見初めてもらえる要素が何もありませんっ」
「はははっ。貴女は、とても魅力的ですよ。本当に十分過ぎるほど……」
「わ、笑わないでくださいっ。エミリアと一生友人でいられるかの瀬戸際なんですからっ」
「でしたら、一緒に会場へ戻りませんか? 出来れば、一曲ご一緒してください」
私は彼女の前に跪いて右手を伸ばした。
私の正体を知ったら、彼女はどんな顔をするのだろうか。
失念されたらどうしようか。
でも、彼女ならきっと。
「へっ? こ、婚約者の方に申し訳ありませんわ。一人で戻れますから……」
「私に婚約者はおりません。今日、選ぶ予定なのです。私は――」
名乗り掛けた時、ドサッと真横に黒い何かが降ってきた。体を起こすと、それは言葉を発した。
「ルシオ兄様。やっぱりここに――。あ、ぇとっ。すみません。間違えましたっ」
転移魔法で飛んで来たリオンは、この状況を理解すると顔を真っ赤に染めてガボゼから慌てて飛び出していった。
「えっと。あの、今の方は?」
「弟です。私を探しに来たのです。会場を兄のウィリアムに任せたまま、逃げ出してしまっていたので」
「それは……ぇっ。もしかして貴方。レクルシオ王子……様?」
「はい。レクルシオ=アプト=ドゥラノワと申します。姫君のお名前を教えていただけますか?」
「私は――」
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