青春のリアル

@waispi-520010

黒幕

第二話 停電の影響

9時15分。

波美華と真琴は電車で片道五分の距離を25分かけて、徒歩で帰った。

メールもできず、何もできない時間が過ぎていった。

次の日、停電は改善されてはいなかった。

真琴は昨日のことがあってか、停電が続くにつれ、

どんどん先が遠のいているような気がしていた。

「ねぇ、お母さん。今日学校あるの?」

「うーん、この状況下だからないんじゃない?」

「ねぇ、私たち、これからどうなっちゃうのかな?」

「なんとかなるってー。もうお母さん出るね。」

「え、まだ早くない?」

「何言ってんのよー、真琴が起きてくるのがいつもよりも遅いんじゃないの?」

時計を見ると、確かに30分以上時間が進んでいた。

普通だったら、慌てなければいけないのだが、学校がない分のその焦りはなくなる。

「あ、そうだ、真琴。あんた今日一日暇なんだから、一通り家事やっておいてね。

 あと、勉強も忘れずに。」

そういって、玄関から出た母だったが、すぐにその扉は開かれた。

「あー、あと停電中だからいろいろ買っておいてね。防災用品。

 あと、ガスコンロは貴重なので家事をするときは使いすぎないように、

 火を使う料理とかはできるだけ避けてね。じゃあ、行っていきまーす。」

真琴の想像とは裏腹に意外にも母には明るく返された。

母は娘の気持ちが明らかに沈んでいることを見て、

自分が暗いとそれが伝染してしまうかもしれないと思い、

明るく振舞った、俗にいう母親の優しさというものだ。

真琴は母親が言ったように家事を一通り行い、スーパーに出かけた。

すると、防災グッズコーナーにはほとんど品物が残っていなかった。

入荷待ちと値段の所に書いてあり、他のスーパーにも寄ったが、

同じような状態で、それが何日か続いた。

ある日、スーパーに行こうとすると、息を切らした陣に会った。

「あ、なんか久しぶりー。どうしたの?そんな焦って。」

「婆ちゃんが、婆ちゃんが…。」

陣の話によると未だ続いている停電の影響で、

入院している祖母の処置が間に合わないという。

そして今、祖母が危ないと母親の伝達が届き、病院に急いでいる途中だった。

そのあと陣は、急いで病院に着いたが、祖母は彼が来た数分後に亡くなってしまった。

まるで、陣を待ち望んだ後、亡くなってしまったように…。

陣は祖母をなくしたショックから、引きこもってしまった。

真琴と波美華はそんな陣を心配し、彼の祖母が亡くなった数日後に家に行くことにした。

4月10日 (土) 13時01分

ピーンポーン、

「…」

ピーンポーン、

「……はい。」

インターホンから聞こえた陣の声は

前よりも、低めで心なしか悲しそうだった。

「あ、陣…?」

「陣君?」

「ごめんけど、帰って。」

「…っ。」

「ね、真琴、今日は帰ろ。」

「…嫌だ。無理。こんな状態の友達、これ以上置いていけない…!」

「ありがとう、真琴。その気持ちだけ受け取っとく。

 でも、ほんとに帰って。これ以上いられると、八つ当たりしそう。」

インターホンから陣は怒り気味に真琴たちに言った。

「良いよ、八つ当たりして。言いなよ!」

ガチャッ。ドアの鍵が開く音がした。

そこから出てきた陣はまるで別人のようだった。

少しやせ細り、髪はぼさぼさで、白い長袖Tシャツにジーパン姿だった。

「陣…。」

陣は無理に真琴たちに笑って見せた。

それが彼女たちには何とも痛々しく、心がズキンと痛くなった。

「どうぞ…。」

「お邪魔します。」

「お邪魔します…。」

陣によって、二階に案内され椅子に座った。

「さっきはごめん。真琴。キツイこと言った。」

「気にしないで陣。それより、愚痴聞くよ?」

「でも…。」

「大丈夫。そのために私たち来たようなものだから。ね、真琴。」

「うん。そうだよ。」

「ありがと。」

そこから、二時間ほど陣の愚痴中心にこれからどうするかを話し合った。

「それで?陣君はどうしたいの?」

「俺は…、俺みたいな気持ちになった人を増やしたくない。

 だから、この停電が起こった原因を調べる。」

「うん、私も賛成!」

「私も賛成するけど、電力会社が手を焼いているぐらいだよ。

 私たちで調べるって言ったって、どうするの?」

波美華が正論を言った。

「それもそうだな…。」

「心配ご無用。私の先輩にパソコンとかに強い人がいるんだよ。

 その人に聞いてみようよ!」

「善は急げだ!真琴その人の所に案内してくれ!」

「オッケー!」

「待って、真琴。急に行ったら、迷惑じゃないかな…?」

「だって、連絡するっつたって、停電中だから急に行くぐらいしか選択肢はないよ。」

「まぁ、そうだけど…。」

「まぁ、行こう!行こう!」

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