第32話 快感管理者

 持ちきれなかったお酒を取りに酒屋さんへと向かった。でも……


 店番が爺ちゃんに変わっとるやないか!!


 時間は間に合ったはずなのに……ショック!!


「お酒を取りに来ました」


「いつもありがとね〜〜」


 爺ちゃん良い人なんだよね〜〜 いつもニコニコして優しくしてくれるの。


「たまにはベルギービールなんてどうだい? このウインナーと合わせると最高だよ」


 それからベルギービールについてウンチクが始まった。正直あんまり聞いていない……とにかくなぜか修道院で作っているらしいビールを買う事になったみたいだ。

 ここの酒屋さんにはお酒に合うおつまみも売っている。こだわりのウインナーもその一つね。私はよく日本酒に合うカラスミを買う。でも今日は各種ウインナーを買う事に決まったそうだ。


 ベルギービールは瓶入りだから重い。ウイスキーも瓶入りだから重い。グヌヌヌ…………


 だから爺ちゃんは危険だ。知らないうちにいろいろ買わされてしまう。


 〜 2往復目 〜


 ようやくマンションへと辿り着いた。もう活動限界に達している。そして……


 また救急車が止まっていた。


 諸事情により救急隊員のみなさんも大変だ。出動回数もきっと増えているだろう。

 誰が運ばれているのか必死に覗き込んだけど、ちょっと遅かった。救急車は走り去っていく。


 心配は尽きないけど私はベルギービールでウインナーを食べないといけない。人は食べないと生きていけないのだ。


 ウインナーをボイルする。私はボイル派だ。そもそも調理器具が鍋しかない。油とかも無い。私は料理を全くしないのだ。


 茹で上がったウインナーに粒マスタードをたっぷりと付けて食べる。このパリパリ感がイイね! ベルギービールの苦味も最高だ。ちなみに酒屋さんには粒マスタードまで売っている。この粒マスタードもさっき買っていたみたいだ。どこかのこだわりの品だとしか覚えていない。とにかく全ての品のウンチクが長くて覚えられない。


 パリパリ……グビグビ……


「フグミ〜ン、さっきのエルフ見せて〜」


「了解しました。これで終了ですがよろしくでしょうか?」


「いいよ〜」


 私は心配性の為、特定のプレイヤーを気にしすぎてしまう恐れがある。フグミンの提案で1人2回までしか見ないと決めたのだ。決して粘着が酷いとクレームが来たからではない。


 モニターにあの美少女エルフが写し出された。


「お! ちょうどオークと戦うみたいね」


 オークにやられる姿を見ながらのビールはさぞ美味しいだろう。グフフふふ……


「げえっ!?」


 なぜか金髪碧眼美少女エルフが次々にオークの股間を切り落としていく!!


「な、何? この恐ろしいプレイは!?」


 ウインナーが次々と地面に落ちていくじゃ〜ありませんか!! これは最新の変態プレイか? 

 私も夢中になってウインナーをパクパクと食べていく。素晴らしい変態プレイだわ!!


「オークの睾丸は強壮薬の原料として高価格で取引されています。単なる素材狩りです」


 単なる素材狩りだぁ〜〜?? あれはそんな生半可なもんじゃない! あのエルフの目で分かる。アレは何かに取り憑かれた目。


「あれ? これってオークカーニバルじゃない?」


 確か突発イベント6連続を仕掛けたはず。


「時間加速を段階的に早めています。前のイベントなら終了しました」


 なるほど……それで理解した。きっとあのエルフはオークに復讐しているのね。あの目は尋常じゃない。ボロカスにイケメン軍団と豚オークに蹂躙されてあんな風になってしまったのね……


 いい…… 凄くイイ……


 最高にベルギービールとウインナーが美味しいじゃん!!


 私は満たされていくのを感じた……


「ありがとう。もういいわ… 満足よ」


 これだから覗きはやめられない。


 モニターからエルフが消え、いつものイケメン画像へと切り替わった。


「アドミニストレータ。そろそろ集金が必要です」


「そうね……セレチケで……任せるわ」


 酒屋さん2往復からのこの快感は反則だわ〜〜


「了解しました」


 ベルギービール美味しいな……


 今年もベルギービールフェスは無いのかな……


 そんな事を考えながらお昼寝タイムへと突入した。




 

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トライアングルポップテンション ふぐ実 @fugumi

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