第18話 スタンピードおっさん

 冒険者ギルドの横にトレーニングジムを併設する事にした。シャルロットの勤めているホテルにはジムがあるそうで、トレーニング機材にも詳しく一緒に機材を作ってくれた。


「プールもあるといいんですけどね」


「さすがにそこまでは無理だな」


 シャルロットはとても良い子だ。アドバイスは素直に聞くし、言った事は必ず実行する。

 交際を申し込まれた時は驚いたが、たまにデートと称して出掛けるくらいの関係だ。アリスとも同じ様な感じで付き合っているらしい。


 こうなってくるとスキル『パンイチ』LV5を彼女達の前で使う訳にはいかないな……

 今の感じで充分楽しいし、大人の関係になるとトラブルに発展する可能が高い。


 何であんな物が出るのか訳が分からん。あんな物が出るせいで変に意識してしまうんだよな……



 ダンジョンは連日の大賑わいだ。少しずつではあるが2層に挑戦するパーティーも出てきた。そのおかげで鉱石を得られるようになった。ほとんどの鉱石は商業ギルドへと売却する。商業ギルド直轄の工房で一次加工してからインゴット(延棒)として市場へと流れていく。

 

 しばらくシャルロットは商業ギルドの工房に通っていた。そして鉄製の装備を作ってくれた。剣と盾、さらに鎧もだ。アリスは薙刀を作って貰った。護身用の短剣は3人お揃いの物を用意してくれた。

 工房の職人達も装備品を作っているが、シャルロットの作る物の方が出来がいい。シャルロットはあくまで俺が冒険者ギルドから商業ギルドへと派遣している人材だ。常に俺のエクストラスキル『派遣』の恩恵を受けているから他の者とは成長速度が違う。

 装備を一新したおかげで俺達はダンジョン第2層を楽々と踏破した。迷宮都市最強のパーティーと言えるだろう。

 俺は盾役を担うべくジョブを戦士にしている。アリスが聖属性が得意なホーリーランサーを目指すので、俺は闇属性のダークナイトを目指すかな。回避タイプの盾役でアサシンって手もあるんだが、盾役として運用するにはテクニックが必要だ。テクニカルなジョブはおっさんには難しい。

 

 得意な属性は出来るだけパーティーで分散した方がいい。対魔王だけを考えれば聖属性が得意なジョブ一択なんだが、邪神は聖属性なので闇属性の方が有利だ。アリスが聖属性とシャルロットの雷属性が今の所だが決まっている。


 ダンジョン第3層は石畳みの迷宮タイプだった。迷宮タイプは罠が多いので厄介だ。その分、得られる宝箱は良い物が入っているのが迷宮タイプの特徴でもある。様々な種類の魔物が現れるのでパーティーの対応力が問われる事になるだろう。

 まだ3層はお試し程度しか探索出来ていない。


 俺達は完璧なスタートダッシュを決めた。全ては順調に進んでいはずだったのだ。決して油断した訳では無かったんだが事件が勃発した。


 突然、迷宮都市に警鐘が鳴り響いた!


「森からゴブリンの群勢が押し寄せてくるぞ!!」


 何!! しまった! ダンジョンばかりに気を向けて外への警戒を怠っていた!


 スタンピードだ…………だがまだ序盤だぞ?


 こんなタイミングでスタンピードが起こるのか?


「第1級警戒警報を発令だ! 全ての冒険者は都市の防衛に向かえ! ダンジョン内の冒険者も大至急呼び寄せろ!」


 冒険者ギルドで次々と指示を出し、スタンピードを迎え撃つ準備をする。


「俺も出るぞ!」


 アリス、シャルロットと合流して都市の外壁まで向かった。


「ゴブリンのスタンピードだ。かなりの数のゴブリンが押し寄せてくるぞ」


 今にも戦闘始まりそうな距離までスタンピードが迫っている。


 ゴブリンの足の方が早い!!


 こちらが態勢を整える前にゴブリンの突撃を受けてしまいそうだ。しかも初めてのスタンピードで守備兵達が浮き足立っている。


 やらせんぞ! せっかく苦労して築いた都市だ!


「行くぞ! こちらから突撃してヤツらの機先を制すぞ!!」


 アリスとシャルロットを伴ってゴブリンのスタンピードの先頭へと突撃を敢行した!


「雑魚は相手にしない! ちょっと装備のいいリーダー格のヤツを狙っていくぞ!」


「魔法いきます!!」


 シャルロットがエクストラスキル『チャージ』から『サンダーボルト』のコンボ発動する。初心者用とは思えない凄まじい威力の雷撃がゴブリン達を丸焦げにし、ゴブリン達の突撃陣形が崩れた。そこにアリスが中距離レンジから突進し、ゴブリンリーダーを軽くほふった。


「いいぞ! 個々の強さはそれ程ではない! リーダーを失えば指揮が乱れて更に弱体するぞ!」


「「 了解!! 」」


俺もゴブリンリーダー狙いでひたすら突き進む! アリスは接近戦難なくこなすがシャルロットには不安がある。たまにシャルロットの方を気にかける。


「私は大丈夫です。思う存分戦って下さい!」


 シャルロットは体術を駆使してゴブリンを蹴り飛ばしている。やるじゃないか!!


 ゴブリンのスタンピードは俺達に出端をくじかれて動きを止めた。


「よし! 引くぞ!」


 もう十分だ! 一気に外壁まで退却して前線を鼓舞する。


「敵は勢いを止めた! 弓と魔法を叩き込め!!」


 一斉に兵士と冒険者達が遠隔攻撃を放つ。ゴブリン達が次々に倒れていく。


「行くぞ!! 突撃だ!!!」


 またアリスとシャルロットを伴って再突撃をする。だが今度は近接戦が得意な兵士と冒険者も続いている。


「「うぉぉぉ!!!! 続けぇぇぇ!!!!」」


 大きな人の波がゴブリン達に激突して弾き飛ばしていく。もうゴブリン達は抵抗するのも難しい。ただ倒されていくだけだ。



 

☆タイトルを変えてみました。読んでもらえる努力はしないとね。

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