第4話 ラノベお姉さん

 タラオが変な実験を始めてしまった。スライムと向き合ってひたすら種火で攻撃している。知らない人がみたら頭のおかしな人にしか見えないと思う。


 タラオはレベル上げが絡むとおかしくなる。


 夜になるとスキル上げと称し、棒で叩かれて嬉しそうにしてるし……

 たまに「あう!」とか変な声を出すからとても怪しい……多分、変態だと思う。


 タラオはレベル上げさえ絡まなければとても紳士的。何となく始まった共同生活だけど、嫌な思いをする事は全く無い。

 最近は『木工』スキルを生やすと言って私用の小部屋を作ってくれた。ちょっとしたパーテーションだけど何も無いより全然いい。

 若くて結構イケメンなんだけど、前世はおじさんだったそうだ。普通のサラリーマンだって。

 確かによく観察してみるとおじさん言動があるんだよね。


 タラオのスキル『パンイチ』がLV2になった事で食生活が良くなった。LV2になると食パンが1斤出せた。ちなみにLV3になると焼きそばパンが出せるらしい。ちょっと楽しみ! 好きなんだよね焼きそばパン! 1日に1回しか使えないスキルだからLV3になるのは当分先だろうけどね。

 問題なのはこの食パンね。


「村には黒パンしかないからコレ売れるよ」


「ん? スキルで出したパンの買取価格は1ゴールドで固定だぞ?」


「ゲームではそうかもしれないけど」


 タラオは元ネタのゲーム知識に捉われ過ぎる。


「異世界の知識や物を使って成り上がるのが異世界ファンタジーの定番なの」


 やっぱりタラオは分かっていない。『パンイチ』は中々のチートスキルなのに。

 しかもタラオの食パンは流行の高級生食パンだ。スーパーで売っている普通の食パンではなく、1斤1000円位しそうなフワフワで甘い食パン。


「この食パン、凄く良い材料を使っているわ。とても今の世界では再現出来ないと思うけど」


「確かにやけに甘いな」


「食べた事無かったの?」


「無いよ。食パンは嫌いなんだ。給食がパンの時はコソッと持って帰って捨ててた」


 何でコソッとしないといけないのか分からないけど、かなり嫌いって事は分かる。

 売れるとは思うけど量産が出来ない。量産が出来れば店を開くのもありなんだけど……


「余り物は君の好きにしていいよ。頑張って商売すれば商人にジョブチェンジ出来るかもな」


 商人か……商人なら私のスキル『鑑定』『収納』が活かせる。異世界転生の定番スキルなのにあまり役に立っていない。鑑定はLVの確認用になっているし、収納は薪などの木材集め用だ。


「もう少しラノベ知識を使ってみようかな」


「いいんじゃないか? 少しと言わずドンドンやればいいさ」


「でも、世界がおかしくならない?」


「何を心配しているのか分からないな。車を開発して爆走している動画とか、天空の城を作って人類を滅亡させる動画とか見た事あるぞ」


 タラオによると世界の初期段階は村がポツポツある程度だけど、やり方次第で近未来っぽくなるらしい。


「俺はLVを上げて強い敵を倒すって遊び方がメインだった。君の言う中世ヨーロッパにこだわる必要は全くないな。遠慮していたら生き残れないぞ?」


「他の人に殺される事もあるって事?」


「ある。何でもありのゲームだからな」


 タラオみたいなプレイスタイルの人なら問題は無いけど、悪質な転生者がいたら危険だ。いや、転生者だけじゃなく盗賊や暴漢に襲われる事だって考えられる。


「よく考えたら体術スキルは有用かも……」


「ああ、武器を持ってない時でも戦えるからな」


「それと状態異常魔法への対策が必要ね」


「ラノベ知識も中々だな。君は美人だから大変だぞ」


 ううう……魅了されてハーレムの一員にされちゃうとか。最悪パターンもあるわね……

 そう考えるとタラオがいい人っぽくて助かった。


 タラオはハーレム作りとかには興味が無い。前世では独身で、ひたすらゲームをやってLV上げばかりしていたらしい。


「まさかリアルにレベル上げをする日が来るとは思わなかったな」


「遊びじゃなく、生き残る為のレベル上げだけど」


 タラオは冒険者とし暮らしていくそうだ。私はモンスターと戦って暮らすなんて嫌。だけど自己防衛の為に鍛えないといけないのは分かった。


「医学の知識が活かせる錬金術師がベストかな」


「医学部なんだっけ? 錬金術師、治療師、薬師とかがいいかもしれないな」


 治療専門より、幅広く活躍出来る錬金術の方がこの世界には合いそう。

 異世界に召喚されてしまったのをいつまで嘆いてばかりいたら駄目。帰れると信じて生き残らないと医師になる夢があるんだから!


 そうと決まれば薬草採取ね!


「薬草採取のクエストを受けるわ」


「地味だな……まあ君の自由だ。俺はやらないぞ」


「薬草採取は定番クエストでしょ?」


「俺は討伐クエスト専門だったな」


 タラオは完全な脳筋タイプだ。ただLVを上げて強くなれればいいらしい。


「農作業だけは生きる為にやっているけど、稼げるようになったら止める。自炊もしないから」


「え? 全部外食にするの?」


「ああ、向こうでもそうだった。朝はコンビニのおにぎり。昼は社食。夜はコンビニ弁当か外食。だから家には調理器具は一切無い」


「包丁とか鍋は? それくらいあるでしょ?」


「無い! あるのは湯沸かしポットのみ!」


 自慢したようにタラオは言うけど、褒められたものじゃない。かなり極端な人みたいだ。


 錬金術師を目指す事に決めてから薬草採取を始めた。だけど、薬の作り方が分からない。タラオに聞いても全く意味がなかった。


「合成するってとこをポチるだけだったからな」


「村人に教えてもらうしかないわね」


「教えてくれるか? 商売敵になるって事だろ」


 そうね……せっかく良くなってきた村人との関係を壊したくないし、独学でやってみるかな。

 出来る事は限られている。薬草を煮る、すり潰す、乾燥させるとかかな。それだと調合スキルとかが生えそう。蒸留が錬金術に近そうだけど器具が無い……


 とにかく何でもやってみるしかない!




☆ なるべく今までに無い感じにしています。

  酔った勢いで題名変えちゃいました。思考錯誤が続きます。






 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る