第3話 スライムおっさん
スライムをひたすら蹴る。自分のレベルは3から上がらない。だがスライム相手に『体術』スキルをLV3まで上げる事が可能なので、まだまだターゲットはスライムだ。スキルのレベルは自分自身のレベルに比べると上がりにくい。まだ『体術』スキルはLV1だ。粘り強くやっていくしかない。
アリスというエルフの美少女には拾った木の棒を与えた。『棒術』スキルを習得する為だ。開始時は無手の『体術』か『棒術』の2択しか有効な攻撃スキルがない。投石による『投石』スキルもあるが投石でスライムを倒すのは大変だ。
エルフの美少女が木の棒でベシベシとスライムを叩いている。
スキルを習得したら1撃で倒せるんだが……
スキルを持っていないと彼女みたいに大変な事になってしまう。それ程にスキル無しとスキルLV1の差はあるんだ。
アリスは白魔術師用の『ヒーリング』という初級魔法を借金をして買った。体力が少しずつ回復する魔法でごく軽い怪我なら治す事が可能だ。
スライム相手では怪我をするのも難しいが、なるべく魔法を使うようにアドバイスした。勿論、スキルLVを上げる為だ。
朝から夕方までスライムを倒して、2人で300ゴールド稼いだ。俺の方が明らかに倒した数が多いのだが半分の150ゴールドを彼女に渡した。
村の出店で150ゴールドの黒パンを買って晩飯にする。黒パンはやけに硬いパンでお世辞にも美味しいと言えるパンではない。
パン1個では空腹を満たせないがアリスが不満を口にする事はない。中々出来た子のようだ。
暗くなるまで畑仕事をする。村人に頼んで種芋や野菜の種を貰ったのでそれを庭に植えた。
「これが育てば食生活も多少は良くなるな」
「……そうね……」
アリスはあまりに厳しい生活を強いられ、見るからに落ち込んでいた。食事もまともに取れないからな。
さすがエクストラハードモードだな……
「まあ、そんなに落ち込むなよ? 棒術スキルが生えたら初心者ダンジョンに行こう。そしたら収入も少しマシになるから」
村の近くにある初心者ダンジョンにはゴブリンがいる。ゴブリンの魔石は2ゴールドで売れる。
美少女エルフのアリスは正直言ってお荷物でしかない。鑑定スキルでレベルの確認をして貰えるのは少しだけ助かるが、教会にいけば無料で教えてくれるんだよね。
「とにかく武器を買わないと始まらないな」
「小さなナイフで2000ゴールドもするから」
「距離を置いて戦える棒の方がいいかもな」
生活魔法の『ウォーター』を使って水をバケツに貯めておく。井戸水を汲みに行くのは大変なので、綺麗な水が得られる『ウォーター』はとても役に立つ。暗くなったら生活魔法の『ライト』を使う。この魔法を使うとしばらくの間、部屋の中が明るくなる。それから湯浴み用のお湯を沸かす為、生活魔法の『ファイア』を使って薪に着火する。この魔法が無いと火打ち石で着火しないといけない。そんな芸当、現代人の俺には無理だ。
「元ネタのゲームが楽しいとはとても思えない」
「ハードモードなら装備と金がある分、楽だったけどさすがにキツイな。ゲームと実生活の差まで加わってドギツイって感じだな」
「ドM向けのゲームね……」
ドMって……そうだ! ドMで思い出したぞ!
「俺の事を棒で叩いてくれ!」
スキルは対人戦でも習得出来るし、レベルも上げれるんだ。
「えっ!? いきなりね? 変態なの???」
「違うよ……防御系のスキルが生えるかもしれないし、君のスキル上げにもなる」
エルフの美少女からのジト目と棒叩きに耐え、家の中でもスキル上げに励む!
ビシっと腕を叩いてもらうと同時にスッと受け流して威力を弱める事で『受け流し』スキルの習得を狙う。毎日続ければその内、スキルが生えるな。
数日後、体術スキルがLV3に上がっていた。アリスにもようやく棒術スキルが生えた。
食生活は多少マシになってきた。村人に余り物を貰っているからだ。村人とコミュニケーションして協力を得ないととても生活出来ないとアリスから相談を受けた。
それから村長に頼んだり、隣人に頼んだりして少しずつ食料を貰ったんだ。村には仕事と呼べるような物は無い。アリスは何か仕事に就きたいと言っているけど無い物は無い。
もし何か村で困り事があったら積極的に協力して、徐々に親睦を深めていくつもりだ。
「やっぱりゲームとは違うな」
「村人として普通の行動をしないとね。自分達だけで頑張る必要も無いわ。助けて合っていけばいいのよ」
「ゲームの世界に来たからと頭がゲーム脳になっていたな……もう少し周りを見るべきだった」
村人はゲームではNPC(ノンプレイヤー)だがここでは血が通ったリアルな人間だ。
ゲームでは出来なかった事を試してみる価値はあるな……そうだ!
「スライムに『ファイア』を唱えて攻撃したら、炎属性攻撃魔法スキルが生えるかもしれないな」
「あのライターみたいな炎でスライムを倒せる?」
「ゲームでは生活魔法を敵に使う事は出来なかったが、ここでは不可能じゃない」
早速、実験だ! まずはスライムを棒で叩いて弱らせる。動きの鈍くなったスライムを極小の火で炙って攻撃する。
ジリジリジリ……
「全然倒せん! 俺のMP(マジックポイント)が尽きるか、スライムが死ぬのが先か勝負だ!」
ジリジリジリ……
「どうでもいい勝負ね……私は普通に戦っているからね」
「君も何か挑戦してみたらどうだ? 例えば棒の先に石を付けて槍や斧を作ってみるとかさ」
「何か原始時代みたいね……やってみるけど」
せっかく異世界に来たんだから今までやった事ない事に挑戦してみよう!
☆ もう少し進むと謎の管理者が現れます。
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