第31話 独女シングルエリザベス同盟と特ダネ

「いいよね、結は。なんか最近幸せそうだもん」

「え?」

 私はどきっとして、タパスをつまむのをやめた。

「雰囲気がやさしくて、満たされてる感じ。編み物の癒し効果?それとも、恋人できた?」

「まさか。編み物作家として順調だからじゃないのかな」

 秘密がばれないかと鼓動が早くなるのを抑えながら、できるだけ冷静な声で答えると、茉祐は安心したようににっと笑った。

「そうよね!結に恋人なんて、ありえないよね!」

 なにそれ。秘密はあっさり守れたけれど、微妙だ。

「あーよかった。独女シングルエリザベス同盟の結束は固いよね」

 なにその同盟。それに、そこからいつも脱退したがって恋人づくりに奔走しているのはどこの誰よ。私は、適当な茉祐の発言に「らしさ」を感じて、ちょっと落ち着いてくれたことにも安心した。

 やがて、ちょっととろんとしてきた茉祐の目は、またらんらんと光り始めた。

「そうそう、私、例の特ダネつかんだのよ」

「ああ、あれ?特ダネって何?」

「実はね。内緒なんだけど……」

 茉祐は、カウンターの隣に座る私にそっと耳打ちした。


「副社長のこと。結瀬副社長、金髪美女とデートしてたのよ」



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