第6話 思わぬ姿に

 バーは会員制で、私はエントランスで予約と会員証を確認された。そこは正直に八重原様の名前を出すと、より丁寧な接客で中に案内してもらえた。私が案内された席は、なんと店内で一番いい場所にあるカップルシートだった。座り心地のよさそうなシックなブラウンのソファに腰を沈めると、目の前のテーブルにこれまたおしゃれなひまわりのブーケがスタイリッシュなベースに生けられていた。これは、最近人気の品種、ルビイクリップスだ。

「きれい……」

 そうつぶやいて、私はひまわりの艶姿に目を細める。そして、さりげなく身だしなみをチェックした。今日のために奮発したフェミニン系ブランドのオケージョンワンピース。お気に入りの真珠のペンダント。耳には極細のレース糸で手編みしたお花モチーフをあしらった耳飾り。髪は行きつけの美容室で、アーティストさんにからかわれながらもゆるふわに巻いてもらって、編み込みシニョンをお願いした。背伸びをするというよりも、清楚さを大切にしたコーディネートで勝負だ。


「ひまわりがお好きですか、南野(みなみの)結さん」

 透明でいて、どこか憂いを含んだバリトンの声が耳元に響いた。私はどきりとして、さっと振り向く。

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