第6話 思わぬ姿に
バーは会員制で、私はエントランスで予約と会員証を確認された。そこは正直に八重原様の名前を出すと、より丁寧な接客で中に案内してもらえた。私が案内された席は、なんと店内で一番いい場所にあるカップルシートだった。座り心地のよさそうなシックなブラウンのソファに腰を沈めると、目の前のテーブルにこれまたおしゃれなひまわりのブーケがスタイリッシュなベースに生けられていた。これは、最近人気の品種、ルビイクリップスだ。
「きれい……」
そうつぶやいて、私はひまわりの艶姿に目を細める。そして、さりげなく身だしなみをチェックした。今日のために奮発したフェミニン系ブランドのオケージョンワンピース。お気に入りの真珠のペンダント。耳には極細のレース糸で手編みしたお花モチーフをあしらった耳飾り。髪は行きつけの美容室で、アーティストさんにからかわれながらもゆるふわに巻いてもらって、編み込みシニョンをお願いした。背伸びをするというよりも、清楚さを大切にしたコーディネートで勝負だ。
「ひまわりがお好きですか、南野(みなみの)結さん」
透明でいて、どこか憂いを含んだバリトンの声が耳元に響いた。私はどきりとして、さっと振り向く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます