第11話 微かな記憶
紡は夢を見ていた。
「
3歳くらいの紡は、おもちゃの代わりに、見知らぬ男女から、ペンダントようなものをもらっていた。
「これは、とっても大事なものよ。紡。」
女の方が、優しい声で紡を諭すように伝えた。
「えっ……、大事なもの?これって高いの?」
「あはははは、高い高い、お金で買えないほど高いよ。これはね、
見知らぬ男女は、不意な質問に大声で笑いながら、ペンダントの説明をした。
『き、しょう〜?」
「そう徽章、これはね、『私は、紡だよ〜』っていう印になるの。あなたは世界でただ一つの宝物ですよって印になるの。この徽章はね、絶対に無くさないでね。後、絶対誰にも見せてはダメよ。あなたが大人になって、どうしても誰かを本気で守りたい時に、この徽章をつけるの。そうしたら、この徽章は、あなたを助けてくれるわ。」
「この、ちっちゃいものが僕を助けてくれるの〜?ほんと〜?」
紡は徽章を縦や横に振って、中に何か入っていないか確かめた。
そんな様子を見知らぬ男女が愛しそうに紡を眺めている。そして、次第に遠ざかっていった。
——ここは一体、どこだ?
見知らぬ男女が見えなくなった時、紡は夢から目覚めた。
「紡!!大丈夫!?、ことちゃん、紡が起きたよ。」
紡は寝ながら首を動かし、辺りを見回した。横を向くと、地面が見えたため、地べたに寝ていることがわかった。今度は、空を見上げると、空は赤くなり始めていた。
——もう夕方か、あれから何時間経ったんだろう。みんなは無事なのかな。
紡が、色々考えている時、愛と琴美が、医官を呼んできた。
「どうも、紡君、自衛隊医官の佐々木です。具合はどうかね。」
「痛いところはないです。」
「体に目立った外傷はなく、骨も折れてないから、軽いムチウチくらいあるかもしれないが、それじゃあ、立てそうかい?ゆっくと立ってごらん。」
「はい。」
紡は、ゆっくりと立ち上がった。立ち上がる時も、特段フラついたりはしなかった。
「だけど、君は不思議だね、ワイシャツとかに付着している血を見るに、かなり出血したはずなんだけど、目立った外傷が本当にないんだよね。君、血友病とかじゃないよね?」
「血友病?」
「あー、遺伝性の血が止まりにくい病気なんだけど、違いそうだね。ただ、運が良かっただけなのか、それともその血は、他の人の血なのかね。」
医官は、少しの間、不思議そうに紡を見つめていたが、『無事そうならよろしい』といって、別の患者の診察に向かった。
紡は、いつまでの診療所に居ては、他の人の邪魔になると思い、避難所である体育館の方へと向かった。
体育館に向かう途中、横から背広を着た男と、自衛官が近づいてきた。
「どうも、五ノ神紡君かな?私は、陸上自衛隊三等陸佐の
紡に拒否権はないような雰囲気だった。ただ、紡は、無性に何かしていたい気分だった。何かしていなければ、母さんや親父を亡くした悲しみが込み上げてきてしまいそうな気がして、気を紛らわすためにも、2人の自衛官について行くことにした。
代々木三佐と千代田一佐の後をついて行く紡と愛、琴美、浅井巡査
1分ほど歩き、第一師団本部と書いてある建物に入っていった。
「こちらへどうぞ。」
紡達は、作戦本部と書かれた部屋に通された。
中に入ると、既に愛のご両親が数人と話し込んでいた。そして、紡達に気づくと話を辞め、愛のお母さんが紡に声をかけた。
「紡君、意識が戻ったのね。怪我は大丈夫?」
「ご心配おかけしました。目立った外傷もないみたいで、もう大丈夫です。」
「あれだけ傷ついていたのに、目立った外傷がなかったの!?……そうなのね。」
愛のお母さんは、目を丸くした。
『まあ、いいわ。』と言うと、紡達に席に着くよう促した。
「それでは、今後の方針について話し合いたいと思います。」
そう言うと愛のお母さんは、作戦司令部に設置された大きなディスプレイの電源を入れた。
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