第2話 入学式

7時40分、校門に到着した。


昇降口には、クラス分けの表が貼られていてた。


つむぐと愛は、各々どのクラスに配属されたか確認していた。


すると、後ろから馬鹿でかい声が聞こえてきて、愛に黒い影が覆いかぶさった。


「おっはっようーーー。愛は高校でもつむぐと一緒か〜〜。」


愛に覆いかぶさったのは、白山琴美はくさんことみ、こちらも紡の幼馴染で、愛の親友でもある。


「おはよう、ことちゃん。ことちゃんは今日も元気だね。」

愛は、雨の神様も思わず晴れにしてしまいそうになるぐらいの、笑顔を琴美に向けた。


「琴美よ、朝ぐらい静かにできないのか。」

紡は怪訝そうな面持ちで、琴美を見た。


「紡〜朝から辛気臭い感じでいるなよ〜、今日は新たな門出だよ、元気いっぱいで行かなきゃ。」


琴美のは、元気すぎてオーバーヒートしそうだよって言って溜飲を下げたがったが、確かに新たな門出の日に、気持ちよくなっている琴美に水を差すのはやめてあげようと思い、言葉を呑んだ。


「愛と紡のご両親は、入学式来るの〜?」


「私のお母さんとお父さんは公務で来れないんだ。紡のご両親は来るよ〜」


「そうか〜それは残念やな〜、それでそれで、紡と愛はどのクラスになったの?」


「え〜とね、私は……1年1組みたい、あっ、紡も琴美も一緒だよ。嬉しいな〜。」


「また、騒がしいクラスになりそうだな。」

紡は琴美の方を見ながら言った。


「それを言うなら、楽しいクラスでしょ。」

琴美は屈託のない笑顔で答えた。


「とりあえず、クラスに行こう。」

紡は、愛と琴美と一緒にクラスに向かった。


—————————————————————————



「は〜い、席につけ〜」

担任がクラスに入ってきた。


「それじゃあ、自己紹介と行きたいところだが、職員会議が伸びてしまって、入学式まで時間がないため、自己紹介は入学式後にします。みんな各々講堂の入り口に向かってや〜、入り口で整列してから入場するから、入り口で待っててくれればいいから。」

なかなかに肩の力が抜けた担任である。もう10年くらい勤めてそうな中堅教師って感じである。


「紡〜、一緒に行こ〜。」

琴美が愛の手を引きながらやってきた。中学校の頃とあまり変わらない風景である。新しい環境に慣れることができるか、多少緊張していたため、琴美の快活さはありがたかった。


講堂の入り口に着くと、二列に整列した。愛と琴美は、各々隣になった男子に話しかけられて、楽しそうに話している。


紡も、隣の女子に話しかけてみたが、当たり障りのない話だけ話して、後は沈黙してしまった。少々気まずい。やっぱり、男が頑張って話題提供しないといけないのかな〜なんて考えていると、


「新入生入場!」

と言う言葉とともに、エルガー作曲「威風堂々」が流れ始め、新入生の列が動き始めた。


新入生が講堂に入ると、保護者達が、一斉に新入生をみて、自分の子がどこにいるのか探し、カメラを切り始めた。そんな中、


「愛ちゃん〜琴美ちゃん〜。」

と、叫ぶ母の声が聞こえた。


母よ、自分の息子より、他人の子を呼ぶのかい!と心の中でツッコミながら、実際自分の名前を呼ばれたら恥ずかしいからちょうどいいなんて考えていると、


「紡〜ちゃんと前向きなさいよ〜」

「紡〜かっこいいぞ〜」


と、母さんと親父の声が聞こえてきた。声の方を見ると、母さんと親父は、保護者席の一番前の真ん中に座っていた。遅れて行ったのに、そんな特等席によく座れたなと内心、親の運の良さに感心するのと同時に、俺には1万の大ダメージが入った。

——母ちゃん、親父、だから恥ずかしいって、後で、高校生の息子の取扱説明書でも書いて渡したろうか?


そんなこんなで、色々あったが入学式は無事進行していった。


新入生代表挨拶は、愛が選ばれていた。清廉で、声も透き通っていて、頭も俺より良い。才色兼備で誇らしかった。


愛の代表挨拶が終わると、校長の挨拶が始まった。


5分くらい経っただろうか、俺がうとうとし始めた頃、前の方で、愛がキョロキョロと挙動不審になっていた。愛にしては珍しい。


いつも教科書のように、きちっとしているのに。体調でも悪いのかな?


俺が心配そうに愛を見ていると————————










「紡!!!!琴美!!!!伏せて!!!!!!!!」

急に愛が後ろを振り向き叫んだ。


次の瞬間、


ドドーン—————————


鼓膜がなくなるんじゃないかと思うぐらいの轟音が鳴り響いたと思った瞬間、あたり一面漆黒に包まれた。






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