第17話 真相

夕方になったが、斗真はなかなか現れない。

「遅いね。陽太、明日仕事大丈夫?」

「ああ 大丈夫だよ。いつも寝るの遅いし。」

「それより 優子・・・トイレ行ってきていい?」

「早く言いなよ、いいよ。早く戻ってきてね。」

「ああ、ありがとう。なかなかタイミングが

わからなくて・・・。」


陽太が病室から出て行った後に 一人病室でくつろぐ優子、

そこへスー扉が開き、斗真が訪れる。

まるで陽太がいなくなったのを見計らったように・・・

「待たせたね、ゆうこちゃん。」

優子は斗真のタイミングの良さに少し動揺しながらも

平静を保ちながら会話する。

「遅かったね、斗真。」

「うん。」

斗真は悩ましい顔をしながら 優子を見ると

「少し煙草吸っていいかな?」

そう言い窓際に立つと窓を全開にし煙草を吸い出した。

「ちょっと、斗真。ここではまずいよ。」

「あん?」

徐々に豹変していく斗真の様子に恐ろしくなり

優子はナースコールを押そうとする。


「何してんの?」

煙草を投げ捨て 咄嗟に優子の手を掴み、抑え込む斗真。

取り乱しながらも優子はハッと気づく

(斗真の煙草の匂い、あの日河川敷で・・・)

優子が背後から何者かに殴打され、倒れた日

薄れゆく意識の中で 漂ってきた香りだったのだ。


斗真の形相が更に恐ろしいものになっていく。

「今までずっとずっと一緒だった。

俺はずっと君を見ていたんだ。

君が、髪を切りに店に来た時に一目惚れだったんだ。」

優子は恐ろしさのあまり声が出せない。


「次の週だったかな、俺らが一緒に住みだしたのは・・。」

優子は勇気を振り払って斗真に話す。

「嘘!私達、一緒に住んでなかったでしょ。」

「いや、いたよ。俺はずっとずっと一緒にいたよ

君を見ているだけしかできなかったけど。」


優子は浴室の天井裏の出来事を思い出した。

「ストーカー。」

「そんな言い方するんだ、優子ちゃん。

俺はあの日、勇気を出して君に声を掛けたんだ。

君があまりにも逃げるから 僕が怒ってしまったんじゃないか?」

「離して斗真、怖いよ。」

「そうか・・・。」


優子の手をそっと放した斗真は

冷静な顔に戻り、ふと一言。

「もう 殺すか。」


ポケットからナイフを取り出した。












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