第2話「どうやら、俺の抵抗は無意味らしい」

 神様……なぜ、あなたは私にこんな試練を与えるのでしょうか?

 私は、ただ平凡に暮らしていたいだけなのです。

 そこそこの大学に進学し、そこそこの企業に就職する。 

 ここで言う「そこそこ」とは、このではない、けっして字の変換を忘れたわけではない。

 俺は、出来るだけ今の現状が変わるような事はしたくない。 

 変わるって聞くとほとんどの人は良い方向へ変わる事を想像するものなのだ。 

 

 例えば、あなたは道の曲がり角でパンを咥えた少女とぶつかりました。


 ここで、ブサイクとぶつかった人はいるだろうか、いないだろうなぁ。 


 例えば、あなたは今病院で看護師さんに治療をしてもらっています。 

 そこの看護師さんはとても健康的で、常に笑顔を絶やさない人です。


 ここでブサイクに治療してもらった人はいるだろうか、いないだろうなぁ。

 

 何故だろうか? 俺は健康的で、常に笑顔としか言っていない。

 答えは人間が無意識に良い方向へと変わるように考えてしまうからなのだ。 

 実を言うと、この作者もこの小説が書籍化したらどうしようなどと考えているのだ。 

 だから、みんなお願いフォローして頼む。

 


 あれ、今意識が……まぁ、いいか。

 まぁ結果的に、人は良い方向へと勝手に想像を沸かせる可哀想な生き物なのだ。

 たまに見るだろ、「変化を恐れるな」こんなキャッチコピーを掲げた会社、だが現実はいつも非情なのだ。

 変わったことで落ちぶれた人に優しく手を差し伸べることなんてない。

 だから俺は変わることのない日々を送るために努力を、惜しまない。

 もちろん俺は、抵抗するで。







 「安積 真叶」あなたには今日から生徒会に入ってもらいます。 

 彼女の言葉に俺は少しの間動きが止められた。 

  


 少し時間が経つと徐々に思考も働くようになってきた。

 こいつ魔法でも使ったのか、そう思わせるレベルで俺は動きを止められていた。

 それにしても、生徒会に入れって? 嘘だよな?

 「俺が、生徒会に入るだって?」

 「うん、真叶が生徒会一員となって卒業までタダ働きするの」 

 あれ、今聞きたくないことまで聞こえたんだけど? 今は聞こえなかったことにしよう。

「どうして俺が?」

「3年生が卒業して生徒会役員がほとんど辞めちゃったんだよね。そこで、私が迷惑をかけても心が痛まず、こき使える真叶に白羽の矢が立ったわけ」

「君に、決めたってね」

 

 やばいことになった、このままでは俺はここで卒業までタダ働きをさせられる。

 

「まて、お前の言い分はわかった。だが俺の意思はどうなる? 俺だって人に生まれてきたからには拒否する権利があるはずだ。それにお前はいつも急に……」 

 

そう言うと彼女は、さっきも見た笑みを浮かべていた。

 嫌な予感がする……。

 

 「そんな事言うんだ〜。じゃあ真叶の部屋にあった あれ名前付きで印刷して全クラスに貼ってこようか?」 


 なに⁉︎ なぜそれの存在を知っている?

 

 魔界日記とは俺が中学の時に書いた日記だ。 

 内容は、ある日突然不思議な光に包まれ異世界に飛ばされる。

 その世界で魔王と戦う勇者として奮闘すると言う物語だ。 

 話としてはよくあるものなのだが、設定はガバガバだし何故か勇者の俺は邪眼使うしで、とても人前に出せるようなものではないのだ。


 そんな俺の中学時代の黒歴史を何故友稀は知っていると言うのだ?

 

「どうして知っているんだ」

「真叶の部屋漁ってたら見つけた」

「おい、人の部屋だぞ、なに勝手に漁ってんだよ」

「べつに、減るもんでもないんだからいいじゃん」

「減るんだよいろいろと」


 主に精神がすりが減る。 

 それより、クローゼットの上の箱は見ていないだろうな? 頼む見ていないでくれ。 

 もし見られているなんてことになったら俺は心のケアが必要なレベルで心がすり減る事になる。


 「それで結局どうするの?」

 

 俺は、どうすればいいのだ。

 どっちを選んだところで俺の平穏な日々は終わりを告げるだろう。 

 ならば、せめて俺の尊厳を守られる方を選ぼう。

 俺は、真面目な顔で友稀の顔を見直した。













「生徒会に入りたいです」


 きっとこの話をされた時点で俺に拒否権はなくなっていたのだろう。


 







 「いや〜真叶が生徒会に入りたいって言ってくれて嬉しいよ」


 この女、自分で言わせたくせに、よくもまあ俺が自ら選択したように言いやがって。


 「はぁ〜」

 俺は疲れてしまったのか自然とため息が漏れていた。


「そんなに落ち込まないの、そういえば言ってなかったけど、真叶を生徒会に入れようとした理由はもう一つあるの」

「なんだよ」


 俺は、すでに入ることが決まってしまったからなのか、どうでもよくなっていた。 

 

「ある女の子から真叶を生徒会に入れるように頼まれたの」

「 だれだ?」


俺の事を生徒会に入れたい女の子、見当もつかない。


 「それは……その子に名前は出さないでって言われたから秘密」


 そんな事を言いながら彼女は、横で静かに俺たちの話を聞いている皐月の方を見た。 

 俺は、皐月の方を見ると皐月は恥ずかしそうに俺から目を背けた。 


 まさかな


 それから俺は友稀に今日は帰っていいと言われた。

 仕事は明日から始まるそうだ。 

 これから俺はどうなるのやら、そんな事を考えながら俺は帰路に就いた。






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