夫妻の朝食
ガリウスはいつも通り妻と朝食を取っていた。
「アン、今日は予定はあるかね?」
「今日はエマと買い物してくるわ。」
「そうか今日か…では本日の集会は私一人で行くとしようか。」
「集会行かなくて良いの?別にエマと会うのは集会が終わってからでも良いかなと思っているのだけれど」
ガリウスが所属するシオン教は日曜日を安息日とし信者を集い集会を毎週行っている。シオン教はこの都市では40%、この都市にて出生した者限定であれば90%が信望するというこの都市主要な宗教である。
ガリウス自身熱心な信者では無いが、市勢から表立って取り沙汰されぬ様な情報を収集する為、この都市の重鎮の責務として毎週欠かさず参加している。
アンも結婚を期に入信し、良き妻としてガリウスと毎週参加していた。
「今日は良いよ、エマに街の事を教えてやってくれ。」
「そう?じゃあ食事済ましたらエマの所へ行ってくるわ。エマの事だから折角の日曜日を無駄にしてしまいそうだったし。」
想定より早く妹に会える事に喜びを得ながらアンは答えた。心無しか口へ運ぶスプーンが早くなった様に感じた。
「そうすると良い。後何べんも言うようだが…」
「エマに服を買うのよね。"地のものを受け入れよ"でしょ?」
「あぁ、そうだ。多少の出費は気にしないでくれ。早く君の妹が我が国に受け入れられる為の必要経費だと思ってくれ。」
この都市出身の人々は良くこの街を挿して国と言う。自分達が作っていった歴史からの自負からだろう。アンはかなり慣れたがやはりちょっと可笑しく聞こえる。
「そうね、我が国に受け入れられるようにするわ。服もそうだけどシシィにも紹介しようと思うの。」
「シシィかぁ…彼女に気に入られるのは大変喜ばしい事だ。是非紹介してやってくれ。」
ガリウスはシシィが苦手だ。ガリウスだけでは無くこの都市出身の男性は凡そが共感出来るのだが、苦手というよりはあまり会いたくない相手といった方が良いだろう。
理由を知るアンはつまったガリウスを見てクスッと笑ってしまった。
「所で晩御飯はどうします?良い機会なのでエマを招待しようと思っているけど、貴方は構わないかしら?」
「そうだね。私の方からも伝えておいた方が良い事も有るだろうから連れてきてくれないか?」
「ありがとうガリウス。」
普段は代名詞で呼び合うから一層、最愛の者から名前を呼ばれるのはこそばゆい。ガリウスは照れを隠す様に
「まぁ、品目はスープとかで良いかもしれんな。料理の為に君が早く帰らなければならなくなるのは避けた方が良いだろ?」
「そうね、一応もう準備はしているの暖めたらすぐ食べられる物を用意しているわ。」
良い歳して純な旦那が微笑ましく温かい気持ちに溢れながら食事を終えたアンは、食器を片付ける為に席を立ちながら答えた。
「であれば良いな。私も準備しよう。」
いつも通り食事を終えコーヒーの最後の一滴を口に含みながらガリウスは寝室へ消えていった。
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