アンねぇ
「エマ、ほら起きて」
本日?2度目に安眠を妨げたのはアンねぇだった。
「おはよう、アンねぇ。どうやって入ってきたの?」
「何言っているの、私は貴女の後見人なのだからこの部屋の鍵を持っているのは当たり前じゃない」
アンねぇは子供を愛しむ様に元々目尻が下がっている性か優しい雰囲気を持つ潤った瞳をより一層優しくしまだ寝ぼけている彼女の頭を軽く撫でた。
「先週引っ越して色々疲れているのは解かるけど、朝はしっかり起きなさい。そんな自堕落な生活していると心配性な貴女の母様は大人になっても私を貴女の後見人にしようとするわよ?」
「ん~、それはそれで良いかなぁ。そうすればアンねぇがいつも起こしに来てくれるんでしょ?」
「甘えてないで早く起きなさい。今日は忙しくなるんだから」
目尻は下がっているが今度はちょっと悪戯っぽい瞳になり、撫でている手を軽く挙げペシッっとエマの額を軽く打った。
実家の隣に住んでいたアンねぇは、小さい頃から私を可愛がってくれてるお姉さんみたいな存在だ。アンねぇの両親は村唯一の雑貨屋のせいか忙しくアンねぇのお世話はもっぱら母がしていた為、妹の様に可愛がりまた一人の成人女性として信頼を寄せている。
今回思春期の娘が一人暮らしをすると言い出して最初こそ反対してたものの最後渋々納得してくれたのも行先がアンねぇが住む街だったというのが大きな要因だったのだろう。
丁度10時の鐘の音がホールロックから響いた。このオンボロ時計は後見人は一人じゃないと言わんばかりだ。
「この時計持ってきちゃったのね。この部屋にしては大きすぎるし邪魔じゃないかしら?」
「まぁ大きいけど、初めて私が修理した物で思い出も詰まっているからどうしても手元に置いておきたくて」
「そうねぇ、けどこの音はどうにかしときなさいよ。周りの方に迷惑がかかるわ。」
「私は気にならないけどなぁこの音、聞いていると落ち着くし」
「貴女が良くても他の人はどうか解かんないのよ?私達の田舎じゃあるまいし皆知り合いって訳じゃないの」
「解かっているよ、とりあえず鐘を鳴らす歯車を抜くわ。」
そう言って彼女はベッドの下から工具を取り出し自室の扉と同じ位ある振り子部分の扉を明け古時計に潜っていった。
「それ終わったら、顔洗って着替えてらっしゃい。街を案内してあげるから」
カチャカチャする音の中からはぁい、と返事が聞こえたと思ったら直ぐに戻ってきた彼女の手際の良さにアンは少し関心したがエマの頬に軽く血の様な落ち着いた紅い線が入っているのを見つけて少し動揺が走った。
さっきまでの優しあった姉の目が少し陰ったのを見て視線の先になる頬を時計のガラスで見る。アンねぇの動揺の源を拭いながら
「油がついてた。」
多少強引にこすったせいで多少広がって残ってはいるものの傷の無い頬と拭った油で少し汚れた手を見せ、そう伝えた。
「あら油なのね。紅いからびっくりしたじゃない。まぁいいわ早く顔洗ってらっしゃい」
さっきと同じ様に返事をしながら化粧室へ消える身だしなみに無頓着な妹を見ながらこんなのでやっていけるのかと呆れながら、
ただいつまでたっても子犬の様な妹に癒されながらこの部屋で唯一整頓されているベッドに腰を据えた。
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