第1話 転生。
光が身体を包み込んだ後、また世界は闇に包まれた。
だけど今回は少し違った。
何というか、目に力が入っていて、目をつぶっているような感覚がある。
もしやと思って目を開けようとするとすんなりと開いた。
そして僕はそこにあった景色にたいそう驚いた。
最初僕は自殺に失敗し病院のベットで横になっていると、そしてさっきまでの暗闇 は苦しみから生まれた悪夢だと思っていた。
しかし今僕の目の前にある景色は子供部屋、それも小学校低学年程の子供部屋だった。
その景色に驚いているとドアが空いて人が入ってくる。
「おはよう、ご飯できてるから食べなさい、今日は学校で発表会があるんでしょう?」
母親が優しい声で僕に話しかけてくる。
いや、待て、母親?この人が?
僕はこの時再度驚いた。
会ったこともないの人を母親と認識したのだ。
それだけではない、その瞬間あるはずのない記憶が湧き上がってくる。
自分のこと、両親のこと、学校のこと。
ここがどこでどんな場所だとか、先週の日曜日は家族とどこに行ったとか、まるであたかもそこにずっと住んでいたようだ。
「もう少し寝させて」
「ダメよ、この前もそう言って結局遅刻ギリギリだったじゃない」
このやり取りも、毎週やっているかのように自然なものだった。
少しして部屋から出て朝食を食べて学校へ向かう。
外では父親が農作業をしている。
「おーいってらっしゃい」
父親が農作業をしながら見送りをしてくれる。
前までなら有り得ない事だったけどこれも毎日の光景の感じがする。
学校へ行きながら色々な事を考えていた。
自分はなぜこうなっているのかとか、オーストラリアに留学中だった妹はどうしてるんだろうかとか、とにかく色々な事が頭をよぎる。
今の自分には関係ないしどうすることもできないけど、気になって仕方がない。
僕は、これからどうなって行くのだろうか。
色々な考え事をしながらも僕は学校に着いた。
やはりというか、僕が学校に来た時もクラスメイトは驚きもしなかった。
それどころか僕に挨拶もしてくれた。
会ったこともない人達なのに馴染みがある何とも言えない違和感にも慣れてきた。
それから少しして先生が教室に入ってきて早く席に就けと言いながら授業が始まる。
一回も受けたことのない内容の授業でもああこの前やったなという感覚があることにはもう慣れた。
こうして授業を受けていると前の人生の時とは全く違った内容だ。
こんな計算の仕方なんて習わなかったし、今黒板に書かれている文字だって見たことがない。
今までとは何もかもが違う、これはあくまで推測でしかないけど、もしかしたら世界そのものが違うのかもしれない。
これが来世と言うものなのだろうか、でももしこれが来世だとするなら、僕はこの二度目の人生を精一杯楽しみたい。
前の人生では出来なかった色々なことをやってみたい、友達を作って放課後に遊びに行ったり、一緒に勉強したり、彼女を作ってデートしたり、とにかく色々なことをやりたい。
自分で言っていて何だか恥ずかしいけど、これが僕のしたいことなら何としても達成したい。
今まで自分で物事を決めてきたことが無い分、こういうのは新鮮だ。
この日、僕には人生を思いっきり楽しむという目標ができた。
僕が初めて自分で立てた目標だった。
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