第四章 ヴァイスシティを東奔西走
1 強くなれって言われても…
新市街地の船着き場に到着後、ラトリッジ氏への報告もあるって事で、俺達はそのまま【茨の館】へメアリーを送り届けた。
サンリオンへ旅立つ前に訪れた時と同じく、応接間でラトリッジ氏の淹れた茶を飲みながら、ティーダはラトリッジ氏と他愛のない世間話をしている。
ティーダの他人との距離の詰め方には感心するばかりだ…。
会話に入れないまま、なんとなくぼんやりしていると、応接間の扉が勢い良く開いて、白い髪色の少年が入って来た。見た感じはエルフのように見えるが、俺が知ってるエルフよりも、もっと高貴な雰囲気を感じる、不思議な佇まいの少年だった。
入り口に突っ立って、俺とティーダを見て何かを言おうとした時、それはラトリッジ氏の声掛けによって遮られた。
「…ロサ、お客人がいる部屋に入る前はどうするんだったかな?」
「あ…、うん、そうだね、やり直す」
ティーダと歓談していたラトリッジ氏の穏やかかつ、厳しさの伴った声掛に、少年は気まずそうに笑うと、扉をそっと閉めて、その後に、扉が三度鳴る。
「どうぞ……」とラトリッジ氏が応えてから、今度は静かに扉を開いて応接間に入って来ると、俺とティーダの側まで歩いて来て、勢い良く頭を下げる。その様子に俺もティーダも驚いて、思わず互いに顔を見合わせた。
「こんにちは、あの…メアリーの護衛をしてくれてありがとう!」
「……いや、仕事として受けただけだから、礼を言われるような事じゃないんだが…。こちらこそ、雇ってくれて、ありがとう」
少年の謝辞にティーダが戸惑い気味に応えて、その言葉に少年は人懐っこそうな笑顔を見せると、ティーダの腕を引っ張り「庭で一緒に遊ぼう!」と言って、庭に通じるガラス扉から外へ連れ出してなにやら遊び始めた。
それを見送って、俺はラトリッジ氏を見る。
氏のあの少年を見る目は父親のようで、なんとなく事情が分かった気がした。
「…あんたの過剰な警戒心の原因は、あのお坊ちゃんってわけか?」
庭でティーダと遊び始めた少年を柔和な微笑みを浮かべて眺めているラトリッジ氏に声を掛けると、俺の質問に氏は「…ああ」と短く応える。
そして、俺に軽く頭を下げた。
「先日は失礼をした、…申し訳ない」
「いや、…護衛なら当然の対応だ。…ただの執事だったら不躾なんだろうけどな」
掛けていたソファーから立ち上がり、庭を見渡せる窓際に立って、遊んでいるティーダとエルフの少年を見る。
どうやら、モルックを始めた様だ。
「ははっ、君はどちらかと言うと皮肉屋なんだね?」
後ろでラトリッジ氏がククッと笑って、そんなような事を返して来た。以前、師匠にも言われた言葉に、氏と師匠の間柄の近しさが窺い知れた。
同じ感性を持った人間は、不思議と惹かれ合うもんだ。と、師匠が言っていたような気がする。
「…師匠と同じ事言うんだな、あんた」
「メルヴィンにも同じ事を?」
氏の顔を見た訳じゃないが、苦笑しているような語調が返ってくる。
「…まぁな。で? あの少年は何者なんだ?」
俺の質問に沈黙したラトリッジ氏を顧みると、少年の秘密を打ち明けて良いものかと
そして、意を決したように顔を上げると、俺を真っ直ぐに見て答えた。
「……モルガナンシン王家の末裔であられる、ラピュサリス・ロサ・モルガナンシン様だ。とある方からの依頼で、私とメアリーで護衛を任されている」
「なるほどな…。世が世なら、王位を継ぐ王子様…。いや、もう、王様なのか?」
いつだったかナディアに聞いた、隠された幼い王様の話しを思い出してそう答えると、ラトリッジ氏は無言で頷いた。
今、この国の政治は不安定な状況下にあり、四つの勢力の絶妙な力関係の上に成り立っているらしい。
護衛の依頼者はその中の誰かなんだろうな…。
「…ただ、あのお年だ、正式に王位を継いではいらっしゃらない。…現状、この国の実権を握っているのはチェザーリをはじめとする、四人の実力者だよ」
そう言いながらラトリッジ氏は窓辺にやって来て、俺の横に立つと、庭のラピュサリスに視線を送る。
その眼差しに乗る感情はただの護衛のものではない、確かな父性があって、あの少年に命を捧げているのだと思った。
確かに、王家の末裔なら命をかけて守る価値も有るだろうが、それにしたって、氏の眼差しには何者かに『支配されている人間』のような狂気じみたものも感じる。
……深入りしない方が良いのかもしれないな、と俺はこの時に思ったんだが、俺の意志とは関係なく、俺もティーダもこの『ラピュサリス』を巡る抗争に巻き込まれて行く事になる。
庭でティーダと遊ぶラピュサリスの姿はその辺の子供と変わらない、無邪気そのものに見える。年齢を考えれば、政治の世界で立ち回るには頼りない、となれば、誰かが摂政となって、ラピュサリスを傀儡にして王権を握りたいってところか…。
そう思い至って、俺の脳裏には、あのいけ好かない冷笑が浮かんだ。
「……差し詰め、己の地位と権威をさらに強固なものにしたいチェザーリに狙われてるって所か?」
「…君は頭の回転も早いようだね、話が早くて助かるよ」
「兄貴があれだからな、…俺がしっかりしないと生きて来られなかったんだよ」
庭で遊ぶティーダを見ながら苦笑いを浮かべて、ラトリッジ氏にそう答えた時、応接間の扉が三度鳴って、そちらを見遣ってラトリッジ氏が「…メアリーか? 入っておいで」と応えた。
「…失礼します、ラピュサリス様はこちらですか?」
旅装束から侍女が着るような落ち着いた格好に着替えたメアリーが入って来た。冒険者然とした格好よりも、今の服装の方がメアリーには似合っていると、素直に思った。
……へぇ、貴族のお嬢様みたいだな。
そんな風に内心で呟いて、感心して見ていると、俺の視線が気に障ったのか、メアリーが
「…そんなに可笑しい格好ですか?」
照れくさそうに上目使いで見られて、こっちの調子も少し狂ってしまった。
「あ? ……いや、似合ってるなって思っただけだ」
「! …ヘッ、変な事言わないで下さい、柄にもない!」
顔を赤らめてるくせに、思い切りの否定を投げつけてきやがる…。
全くもって可愛くない。
「はっ! ソレハ、ドウモ、失礼シマシタ!」
彼女の否定に、俺は得意の悪態で返した。
相変わらず、俺に対するメアリーの態度は硬化してる、最初に比べれば軟化したとも言えなくはないが…。
そんな俺とメアリーのやり取りを、ラトリッジ氏は驚いた顔をして見ている。少々、子供じみた応酬に呆れているようだが、その面に浮かぶ苦笑には、確かに『微笑ましい』と言う感情があった。
そこに、庭で遊んでたラピュサリスが、応接間にいるメアリーの姿に気付いて、嬉しそうに笑いながら戻って来た。その後を追って、ティーダも部屋に入って来る。
「メアリー!! お帰りなさい、旅はどうだった?」
そう言って彼女に抱きつくと、メアリーもラピュサリスを抱きしめて、嬉しそうに答える。その様子は仲の良い姉弟のようにも見えた。
「ふふっ、只今、戻りました。冒険者の方々に護衛して頂いたので、安心して行って来られました」
「そう、良かった〜。今日からはまた一緒だよね?」
「はい、もちろん!」
笑顔で答えたメアリーに満足げに頷いて、ラピュサリスが振り向いて俺を見る。
不思議な光彩を放つ翡翠の瞳が俺をジッと見詰めて、その視線に、俺は落ち着かない気分になって思わず視線を外す。
ラピュサリスはニコリと微笑んで、俺の前まで歩いて来て手を差し出した。
「あの、ティードさんですよね?」
「ん? ……あぁ」
名乗ってないのに、ラピュサリスが俺の名を知っている事に戸惑いはしたんだが、直ぐにティーダから聞いたんだろう、と結論付けて、差し出された小さな手を見て握る。
挨拶程度の握手だったが、俺は思わず膝を折り、跪いた。
なぜか、そうしなければならない気がしたんだ。
膝を付いて同じ目線になった俺を見詰めて、ラピュサリスは笑う。その微笑みは無邪気で子供らしいそれなのに、得体の知れないものを感じて、胸がざわつく。
チェザーリが放つ物とは違う、どこか異質で掴み所のない気配。
「僕はラピュサリス・ロサ・モルガナンシンです、ロサって呼んで下さい」
「あぁ、…俺はティード・ジルダール、…ティードで良いよ」
そう答えた俺に、ラピュサリスは握る手に力を込めて、少年とは思えない鋭い眼光で牽制するような一言を放った。
「僕のメアリーを守ってくれて、ありがとう」
……ん?
これは…、俺がメアリーを狙ってる、とでも思われてるのか?
ラピュサリスの一言に面食らったんだが、子供の可愛い嫉妬心を目の当たりにして、異質な空気を纏うこの少年にも子供らしいところがあるんだと、少し安心して、俺は思わず苦笑してしまった。
そして、小さな紳士が安心出来るように答える。
「…御心配なく、誰も貴方のメアリーを奪いはしません」
「そうですか。…では、また、遊びに来てくださいね」
安心したのか、ラピュサリスはそう言い残し、メアリーを伴って応接間を出て行った。
「……ませたガキだな」
出て行った二人を見送り、扉を見詰めて呟いた俺に、ティーダが「ん? 誰がませてるって?」と聞いて来たから、素っ気なく「…別に」と答えてやった。
ラピュサリスと面会を終えた俺達は、ラトリッジ氏の計らいで、遅めの昼食を館で頂いて【茨の館】を後にした。
帰り際、見送りに出て来たメアリーに、ラピュサリスを守る為に力を貸して欲しいと懇願された。
その想いはラトリッジ氏も同じだろう、と言う事でティーダと顔を見合わせて、頷き合うと、彼女の申し出を受けたんだが、最後に「…では、強くなって下さい!!」と言われて、俺もティーダも途方に暮れた。
漠然と『強くなれ』と言われても…、何を基準にすれば良いのか分からず、取りあえず、冒険者ギルドで適当な案件を探し、経験を積む事にした。
【攻略日記:雑感 四日目 1】
saAyu:と、言う訳で、これから暫くはレベル上げの日々が続きます。
ティード:…まぁ、そうなるよな。そう言うルートだし。
ティーダ:メアリーさんのクエスト自体は二段階で、まずは冒険者レベルを4レベルまであげるんだな?
saAyu:そう言う事で〜す。さて、ここで、ミッションをクリアしたので、成長ですね。一気に4レベルまであげたい所ですが…、バランスを見て成長する事にしました。では、ティード君から成長報告、どぞ!
ティード:ああ、え〜っと、ここまで稼いだ経験点が合計で4370点だったから、まず、グラップラーを3に上げて、スカウトを1から一気に3まで上げ、残り870点は残しておく事にした。
成長は【生命力】で19から20になったな。あと、戦闘特技は【鎧貫きⅠ】をとった。敵の防護点が半分になるかわりに、クリティカル値が+1されるのがツラいがな…。まぁ、色々考えてこんな感じだな。
saAyu:あとは防護点を上げる為に、ブラックベルトも買いましたね。
ティード:ああ、そうだったな。
saAyu:では。次。ティーダさん。
ティーダ:あぁ、4000点以上あったから、ファイターとプリーストを同時に3まで上げて、残りは次回に持ち越しだ。
成長は【器用度】で16から17になった。それに加えて、器用度を補強する【宗匠の腕輪】を買って、19、ボーナス値がやっと『3』になった。あと、戦闘特技は【必殺攻撃Ⅰ】を取ったけど…。結局、フェロー行動表には入れなかったんだよな…。
saAyu:ですね、次の手番がお休みになるので、やめました(苦笑) それと、ティーダさんはフェローですから、防護よりも達成値を高くするために、【器用度】のボーナス値を上げる事を考えましたね。
ティード:しかし、また、がっつり経験点を稼いだな…。
saAyu:そうですね〜(苦笑) 気が付いたら★が18個貯まってて…。成長のことを考えたら、細々消費した方が良かったんでしょうけどね〜。
ティーダ:基本★を五個持っていれば、ミッションクリア後に成長出来るから、現時点で2、3回くらいは成長機会を逃してる事になるんだな…、勿体ない。
saAyu:ですねぇ〜、もっと早くに気付けば良かったんですけどね〜(汗) まぁ、仕方ないです。ミッションこなすのも大変ですしね〜。
ティード:じゃぁ、この次は? どうするんだ?
saAyu:そ〜ですねぇ〜。…現状、マップ上に配置してるパラグラフか新しい所でイベントやクエストをこなして行くしかないですかね〜。まずは、【茶会通り】に行きます!
ティーダ:ああ! 死体回収のミッションで行ったとこだな!
saAyu:そうです。
ティード:小説パートで伏線有りそうな書き方してたけど、元から行くつもりにはしてたんだな?
saAyu:です。死体回収のミッションの時にパラグラフのイベントをさらっと読んで、小説のエピソードになりそうなイベントがあったので、そちらに行こうかと。
ティード:じゃぁ、次は【茶会通り】だな。
saAyu:はい、そう言う事で〜す。
◆ 成長報告 ◆
【プレイヤーキャラクター】
ティード・ジルダール/ナイトメア/19歳/男/冒険者レベル:3
グラップラー:3/スカウト:3
セージ:2(リカント語:会話/魔動機文明語:読文)
HP:29/MP:18 生命抵抗力:6/精神抵抗力:6
能力値:【器用度:18(3)】
【敏捷度:18(3)】
【筋 力:19(3)】
【生命力:20(3)】
【知 力:18(3)】
【精神力:18(3)】
※( )内はボーナス数値
防護点:4/先制力:6/魔物知識:5/
命中力:7/回避力:7/魔力:0
追加ダメージ:6
判定パッケージ:【技巧:6】【運動:6】
【観察:6】【知識:5】
装備:〈アイアンナックル〉【威力⑤/C値⑪】
(命中修正+1 計算済み)
鎧:〈アラミドコート〉
(回避力+1/防護点+2 計算済み)
装飾品:首 :〈始祖神の首飾り〉(石化無効)
右手:〈怪力の腕輪〉(筋力+2 計算済み)
腰 :〈ブラックベルト〉(防護点+1 計算済み)
戦闘特技1:防具習熟A/非金属
(防護点+1 計算済み)
戦闘特技3:鎧貫きⅠ
(敵の防護点を半分に、C値は+1)
追加攻撃(自動習得)
所持金:6650G
持ち物:冒険者セット/スカウトツール/黒い剣(ロングソード)
能力増強の指輪(器用度/敏捷度/筋力)※壊す用
ヒーリングポーションなどのポーション類、数個
【フェロー】
ティーダ・シルヴァウォルフ/リカント(狼)/23歳/男/冒険者レベル:3
ファイター:3/プリースト:3
MP:20/魔力:6/命中力:6
追加ダメージ:8 ※獣変貌時の筋力B+2込み
戦闘特技1:魔力撃
戦闘特技3:必殺攻撃Ⅰ
【フェロー行動表】
1d:1-2
想定出目7【近接攻撃(バスタードソード)】
「いっちょ、やりますか〜!」
達成値13/【威力⑮/C値⑩+8】
※追加Dは獣変貌時の物です。
想定出目6 【フォース】射程1(10m)MP4
「聖なる力、受けてみるか?」
達成値12/【威力⑩+6】
1d:3-4
想定出目8【魔力撃】
「当ると痛いぞ〜!」
達成値14/【威力⑮/C値⑩+14(追加D+魔力)】
※次の手番は休み
想定出目5【キュア・ウーンズ】射程1(10m)MP3
「助けが必要だろ?」
達成値11/【威力⑩+6】
1d:5
想定出目9【近接攻撃(バスタードソード)】
「オレの一撃、受けてみろ!」
達成値15/【威力⑮/C値⑩+8】
想定出目4【キュア・ウーンズ】射程1(10m)MP3
「大丈夫か? 今、治してやるからな」
達成値10【威力⑩+6】
1d:6
想定出目10【魔力撃】
「…これがオレの本気だ!」
達成値16/【威力⑮/C値⑩+14(追加D+魔力)】
※次の手番は休み
想定出目3 空き
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます