Ⅵ:dream

「…ここは?」

 僕はdreamを見ていた。

 それも、dreamだと僕が気づいてしまうdreamだった。

 制服姿の僕が立つのは、廃墟に満たされた世界のようだった。

 家だったもの。

 電柱だったもの。

 車だったもの。

 その全てが、萌木色light green植物mossに覆われている。

 時が止まったかのような静寂の中、僕が地面を踏みしめる音だけがゆっくりと響き渡る。

 見上げる空は、雲ひとつない蒼sky blueが広がり、太陽が見当たらないのに、全てがあたたかく照らし出されている。

 人間が全ていなくなってworld'send、何万年ぐらいの月日が経てば、この世界dreamはできるんだろうか?と、僕はふと考えた。

 dreamdreamと気付いたのは、これが初めてかもしれない。

 不思議な浮遊感と共に感じる既視感dejab

 この場所を僕は知っている?

 正確に言うと、知っている場所とどこか似ているように感じる。それも、ほんの少し前芭乃歩いてデートしていた。

 そうだ。

 ここは商業区域marketの一画。

 ぼくが芭乃と最後にいた場所だ。

 植物mossに覆われた道、建物、電柱の配置が確かに当てはまっている。

 全くここは、もしかしたらdreamではなく遥か未来の世界unknown

 滅亡した理想郷safelandなのだろうか?

 答える者はいない。

 僕は、dream未来unknownかわからないその"セカイ"を歩き続けた。

 dreamだと気づいてしまうと、dreamから抜け出せなくなる。

 そんな都市伝説gossipがあったことを思い出す。

 もしそうなれば、ここはdreamでも未来unknownでもない孤独の牢獄prisonだ。

 dreamよりも確かで、未来unknownのない絶望の中で永遠に彷徨い続ける。

 嫌だ。

 そう思う僕の気持ちが、僕の足を前へと進ませる。行き先はとりあえずあったが、僕はもうどちらに行くか決めていた。

 学校schoolだ。

 決め手といえば、少しでもがいるかもと思えるからだ。意識を保ちながら、僕は記憶と既視感dejabを頼りに、埋もれた"セカイ"を進み、そしてたどり着いた。

 案の定、そこ《school》もmossの塊のような造形となり果てていた。開け放たれた正門を抜け、萌木色light greenの絨毯が敷かれた校庭を半分ほど過ぎたところで、僕は足を止めた。

 校舎入り口の片隅にがいることに気づいたからだ。

 そのも僕がいることに気づいたみたいで、こちらに近づいてきた。

 それは、芭乃だった。

 いや、でも芭乃ではない。芭乃にとても近いけれど、芭乃とは違う芭乃

 僕のdreamが生んだ。

 僕を待っていてくれている、都合のよい夢の君daydreamだ。

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