Ⅴ:message
「
そこは、住宅地区の片隅。
いや、あった。
やはり
なので、僕と君は
僕ができたのは、そこに遺した
「へぇ」
君は目の前の塀に近づいて、そこをまじまじを見ていた。
傍から見ればおかしな光景だけど、僕はそんな君の行為を嬉しく感じていた。
「あのデザインって何か意図とかあるの?」
君が言ってるのは、僕がここから描き始めた問いかけを囲うように描くあの
「一応、ちょっと皮肉というか風刺を込めたつもりで…」
「そうなんだ」
それでも君は、どこか満足気な顔を浮かべてくれた。
∧
「次も行く?」
「もちろん」
いつしか、
∧
∧
「…これで最後かな」
聖地巡礼という名の、
「そっか。次がもうあれなんだね」
「そうだね」
「結局、のこってるのはあれひとつだけなんだね」
と、目の前の
「あれも、近いうちに失くなるだろうね」
早くて当日。遅くとも三日後には
「多分、もう少しはあのままだと思うよ」
「そうなの?」
君が、当然のように言うので、僕は何で分かるの?という疑問が浮かばなかった。
「ありがとう。今日は楽しかった」
構わず君は続ける。多少ぎこちない対応はあったものの、君は確かに楽しんでくれたみたいだ。
「僕こそ。楽しかったよ」
戸惑い半分ではあったが、それは確かな気持ちだった。しかし、それを聞いた君はここに来て初めて不安そうな表情を浮かべていた。
「ほんとに?」
「え?う、うん。まぁ、最初は緊張したけど…」
何か不自然な振る舞いでもしてしまったのだろうか?君は不安と困惑の混ざった顔で僕を眺める。上目遣いで顔を覗き込んでくる君に、僕の
「まだ見えない。どうして…」
それは僕に聞かすのでなく、口から漏れ出たようだった。深く考え込むようになった君を、僕は困惑しながらも心配になった。
「あの大丈夫?僕なんか気に障ることでも?」
「ううん。違うの…」
そういう君からはまだ不安が払われてなかった。一体どうしたのだろう…?
∧
しばしの沈黙の後、君は何か思い立ったように
「あの、すいません」
と、君は前を歩く人物に声をかけた。
「これ落としませんでした?」
と、君は相手にハンカチを見せていた。でも、それが相手のものであるはずがなかった。それは君が彼に話しかける直前に、自分のポケットから取り出した君自身のハンカチだからだ。
「違いましたか?それはすいません」
相手は当然のごとく否定したようで、君は一言をお詫びを入れていた。そのやり取りの最中、交差点をかなりのスピードで車が一台通り過ぎた。明らかな速度超過だ。
相手が交差点を渡るのを見送り、君は僕の元へ戻って来た。
「ごめんね。待たせて」
「いや、いいけど…、今の何?」
当然の疑問だった。君もそれは百も承知なようだが-
「明後日の放課後、また
「え?」
それは、もう
「まぁ、いいよ。空いてるし…」
「ありがとう。また今日と同じ場所で待ち合わせね」
「分かった」
その約束を交わしたのをきっかけに、僕らはお別れした。
多分君にとっては、先の謎めいた行動の答えを示すための
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