第5話 眠いのは涼しいからか暖かいからか
見識は別に広い方ではないがこんな話を聞いたことがある
「人は助けてくれた人より助けた人のことを好きになる」と
僕が彼女のことを好きになったのには実は一目惚れ以上の何かがあったのかもしれない。
もちろんでまかせだ。
「ロマンチストやなぁ、きしょいで?自分」
「なんで当たり前のように心読んでくるんですか、っていうかここ山口県なのになんで関西弁?」
「そりゃキャラ付け的なやつよ、うちツッコミやし」
エセ関西弁は敵が増えるからやめてほしいなぁ
これに関してはマスターは何も言わなかった。
「で、昨日はどこまで進んだん?言うてみ?お姉さんに口添えしてみそ?もしかしてC
までいったん?ひゃーたまらんな!」
楽しそうだなぁこの人は
「そんないかがわしいことなんてしてません」
「ふーんあんたにとって(あんなこと)や(こんなこと)は如何わしいとは言わへんねや、おマセさんやなぁ随分と」
「え、ちょなんで知ってるんですか!?ってかそこまではしてませんせいぜい、、、までです」
「へーキスまではしたんか知らんかったわ」
はめられた。
「あー!また文くんのこといじめてる」
場面の説明
僕とマスターが電車にいる。遅れて理科さんがやってくる
終わり
「おはようさん、トイレ長かったやん」
「うるさい」
仲良いなこの二人。僕がまだ理科さんに話しかける前にも感じていたがこの二人の間にある繋がりは結構深そうだ、幼馴染とかだろうか。
理科さんは僕の隣に座る。
形的にはマスターと理科さんに挟まれた形、理科さんは一も二もなく可愛いし、いい匂いだし、今も変わらず艶かしい視線を僕に突きつけてくるくらいだしって感じだが、マスターも中身は本当に心の底からどす黒いが、見てくれだけは悪くないのでそこに挟まれる僕の心境は存外悪いものでは無かった。マスターからゲンコツが振り下ろされた。いたい。
痛みに顔を顰めていると隣から肩をチョチョイっとつつかれた、首を回してみる
プニッ
妙に笑顔の可愛い彼女と目が合う、待って可愛い、ほっぺたに突き刺さってる彼女の人差し指すら愛おしいなんだこれ、心拍数が跳ね上がるのを感じるわ。
「ふーみくんっほらっぽんぽん」
変わらぬ笑顔で理科さんは自分の膝を叩く。そして僕に移動の隙すら与えず脇の下に腕を回されそのまま抱き抱えられる、毎回思うんだけど一体どこにそんな筋肉あるの?
抵抗する術もする気もないのでそのまま理科さんの膝の上に運ばれ抱きつかれている。
しばらくそのまま他愛もないが愛はある会話をして過ごした、好きなおにぎりの具だとか山と海どっちが好きかとかそんな感じ、ただお互い昨日のこともあるのか、早起きのせいなのか、はたまた適度に揺れる電車、定期的に耳元で囁かれる甘い声のせいなのか、
開け放たれた窓から頬を撫でる5月の下旬の少し肌寒い風が吹き、走る列車の音を運んでくる。いつの間にか寝入っていた僕は少しだけ夢をみた。もうどんな夢だったのかは忘れてしまったけれど、理科さんが出ていた気がした。とても懐かしかったそれだけは変わらない。
目を覚ます。僕の膝の上に理科さんの手がだらりと落ちている。頭の上で規則的な呼吸音どうやら理科さんも寝ているらしい、起こさないようにゆっくりと視線をずらす
「、、、おや、目を覚ましたのかい、ってまだ半分寝ているのかまあ理科が降りる駅に着いたら一緒に起こしてやる、気にせんとおやすみ」
その時のマスターの顔はぼやけててわからなかったがいつもよりとても優しい声だった
関西弁は板についてるわけじゃないんだなとかそんなことを思いながら愛しい彼女の温もりに包まれてまた少しずつ僕は意識を手放した。
そのあとのことを少しだけ
見事に寝息を立てている三人はそのまま終点まで運ばれ次の電車まで六時間と書かれた時刻表を見て愕然としズル休みを余儀なくされた。
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