第4話 思いの空回り

 潤んだ瞳、荒い呼吸、額を伝う汗

そうさせたのは自分なのに、なんとなく昔のことを思い出してしまった

私は彼を抱きしめる、文くんを胸いっぱいに感じとる。だめだなぁ何回出会っても

変われないや。

 私は彼が、文くんが大好きだ。だからいじめてしまいたくなる、だからふと破壊衝動に駆られてしまうだからせめて今は、これくらい

「もう、離さないから、大丈夫だよ」

 おもいっきりの愛を込めて6周分の想いを込めて

パッと手を離してみる、君はまたそうやって少しだけ切なそうな、物足りなさそうな、でも満足そうな顔をするよね、でもそれは本物じゃない、まだ、だからこれから私が君を本物に作り替えて、塗り替えてあげるからね

 私は自制の意味を込めて彼を抱き上げる

電車から出る時少しだけ自分の膝に残る温もりが切なく感じられた



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る