隣国のお姫様になる私は、婚約破棄の代償を手紙で叩きつける。愚かな王にも分かるように必要なとこだけ書きましたよ。
仲仁へび(旧:離久)
第1話
どうも。
細かい事は省いてさっさと本題に入ります。
婚約破棄された私です。
ええ、大勢を集めたパーティーでありもしない罪を擦り付けられたうえに、断罪されて、唾をはかれた私です。
貴方の元婚約者の。
とても屈辱的だったので、しばらく夜も眠れませんでした。
枕を引き裂いて恨んでも、ちっとも心が晴れませんでした。
けれど、どうしようもない駄目男の事なんて、さっさと忘れるに限るでしょう?
ですから、次の恋を探す事にしました。
お隣の国の王子は、貴方と違って優しくて良い人です。
しかも貴方と違って、恰好良いですし、貴方と違ってプライドより大切な物をきちんと守れる人です。
ああそうそう。貴方と違って多くの人にも慕われていますよ。すごいですよね。
そんな王子と、お付き合いさせていただいている私は幸せ者です。
毎日毎日、仲良くお散歩したりお話したり、貴方とは一度もしなかった事をしてます。
婚約者として、これから王子を支えていくつもりですから、応援してくださいね。
途方にくれて、みじめな女になっていなくてごめんなさいね。
面と向かって報告できないのがつまらない所ですけど、貴方なんかにはこれで十分ですね。
最後に話した時は、私の顔など一秒たりとも見たくないと言っていましたし。
それ以前だって、つまらない顔を見せるな、視界から消えろと喚いていましたし。
言いたい事は色々とありますが、それは今度会う時までとっておく事にしますわ。
それはおそらく、一か月くらい後の事になるでしょう。
それまでにお体をお大事にしてください。
そういえば、貴方が無くしたと騒いでいた国宝、私の荷物に紛れていましたわ。
手紙の前で怖い顔をしないでくださいな。わざとじゃないんですのよ。ええ。
国を追放する時、早く荷物をまとめろとせっつかれていたので、よく確認しなかったのが盲点ですわね。
確か、これがないと、王と認められないでしたかしら?
大変ですわね。
あら。他にもまだ言う事がありましたわ。
そういえば、貴方の国の騎士が一人いなくなっているのでは?
国を守る期待の剣、救国の剣士と言われるほどの騎士だから、さぞ大変な騒動になっているのではないでしょうか。
でも、安心してくださいな。
彼は無事、私の傍にいますから。
貴方のような主の下では働いていられないと言っていたので、一緒にこちらに来ていただいたんです。
顔を見て安心したいところでしょうけれど、残念ながらこちらも予定が詰まっているので。
一か月後を楽しみにしていてくださいね。
あらあらあら。まだありましたわ。
私ったら、うっかりね。
これじゃあ、おまけの方が本文より長くなってしまいそう。
驚かれるかもしれないですけど私、外交に出ている貴方のご両親と会いましたわ。
追放された後、偶然ばったり出会ったんです。
貴方の横暴な行いを聞いて、たいそう気をもんでいらっしゃいますけれど、まだやらなければならない仕事があるとかで。
あちこち走り回っています。
けれど、ちょうど一か月後に、私たちと一緒にそちらへ向かう事になりました。
その時を楽しみに待っていてくださいね。
久しぶりに、懐かしい貴方の顔をこの目で見られる日を楽しみにしてますわ。
馬鹿な貴方にも分かるように、分かりやすく必要な所だけ書きました。
読めましたよね? えらいえらい すごいすごい よくできまちたねー
俺は、その手紙を握りつぶして喚いた。
周りにいた人間があれこれ言って来るがどうだっていい。
あの女ぁ!
あいつは元からこういうこざかしい真似が得意だった。
あんまりにも知恵がはたらくものだから、難癖をつけて俺の下から追い出してやったと言うのに。
遠くにいても俺を困らせるのか!
怒り狂っていると、俺の元に駆け寄ってくる奴がいた。
この手で張り飛ばされたいのか、と思ったがどうやら何か非常事態が起こったらしい。
そいつは俺にこう言って来た。
「王子! 先ほどなぜか一斉に送られてきた「故郷からの手紙」を受け取った騎士や使用人たちが、みな王宮から出て行ってしまいました!」
それはおそらく故郷からの手紙なんかじゃない。
俺は握りつぶされたその手紙を、床にたたきつけた。
「あの、クソ女があぁぁぁ!」
隣国のお姫様になる私は、婚約破棄の代償を手紙で叩きつける。愚かな王にも分かるように必要なとこだけ書きましたよ。 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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