桜の木の下に咲いた花

プリントを後ろに回して!!

桜の木の下に咲いた花

タイムカプセルというものをご存知だろうか。


僕の小学校ではそれを埋めることがブームになっていた。


それに乗せられ僕もタイムカプセルを埋めようと僕が春から通う中学校の桜の木の下に向かっていた。


そしてそこで内気で友達のいない僕は1人で埋めようと穴を掘っていた。


すると


「何してるの!?」


突然木の後ろから僕と同じ位の歳の女の子が声をかけてきた。


その容姿は所謂美少女というやつで、僕は桜の木の妖精だと言われても信じてしまいそうだった。


「それってもしかしてタイムカプセル!?」


「…………うん」


「へぇー!いいね!今度私も埋めていい?」


「えっと…」


「私ね!今度からここの中学校に通う予定なんだ!」


これが彼女と僕の出会いだった。


そこからは何の縁か3年間彼女と同じクラスになり、明るくて快活な彼女と一緒過ごしていくうちに内気だった僕もそれなりに人と関係を持つことができるようになった。


彼女はいつも暗かった僕の手を引っ張って色々な所へ連れ出してくれた。


文化祭、夏祭り、修学旅行、全てを全力で楽しもうする彼女に僕は憧れ、そして恋をした。


そしてついに中学3年の冬僕は彼女をいつも帰る時に寄る公園に呼び出した。


そこで僕は自分の気持ちを彼女に伝えた。


寒くて雪の降る夜2人の間を白い息がただよう。


しばらく黙った後彼女は笑った。そして


「嬉しい。ありがとう。でもごめんね。」


と言って僕に背を向けて歩いて行った。


僕はフラれたことよりも彼女の笑顔にぎこちなさを感じたことが気になった。


寒さで顔が上手く動かなかっただけかもしれないけれど、どこか寂しさを醸す笑顔。。。



それからというもの僕は彼女に気まずさを覚えてしまい避けるようになってしまった。


そして卒業を迎え僕と彼女は別々の進路を歩んだ。





それから数年、高校2年の春僕は寮生活から帰省し実家で過ごしていた。そして何となしに埃被っていたアルバムをひらいて思い出にひたっていた。


そしてふと彼女のことそしてタイムカプセルのことを思い出した。偶然にも今日は彼女と出会った日とおなじ日なのだ。


だから直ぐに僕はあの桜の木へ向かって自転車を走らせていた。


木の下に着くとそこには1人の少女が立っていた。


彼女によく似たその少女は明らかに僕よりも年下だ。


少女は僕に気がつくとほっとした表情で話しかけてきた。


「あなたがココにタイムカプセル埋めた男の子ですか?」


僕は戸惑いながらもゆっくりと頷く。


「……そうなんですね。あなたが、、」


少女は涙を流しながら僕に手紙を渡してくれた。


「これ、お姉ちゃんからです。あなたに渡して欲しいと」


僕はその桜色の手紙受け取ると少女に尋ねた。


「お姉ちゃんはどこにいるの?」


少女は悲しみを帯びた瞳を向けながら言った。


「お姉ちゃんは…2年前に亡くなりました」


僕は頭が真っ白になって、その場に崩れ落ちた。


そして力の入り切らない指先を何とか動かして僕は手紙を開いた。


「拝啓、君へ。手紙はちゃんと伝わったのかな?これを読んでいるということは私のことはもう伝わっちゃったよね。今まで隠しててごめんなさい。私は小学校の頃に病気にかかってしまって、命の時間が決まってしまっていたの。だからちょっと自暴自棄になっちゃってあの桜の木の下で泣いていたの。そしたらねそこにこの世の終わりみたいに暗い顔した君がやってきたの。最初は驚いたけど、だんだんムカついて来ちゃったのよ。何で君はまだまだ生きられるのに死んだような顔してんだってね。だから私その時決めたの。絶対この子に人生の楽しさを教えてやるんだってね!

だから強引に色んな所に君を引っ張って行ったの。大変だったよね、ごめんね。でもねそんなことして行くうちに逆に気付かされたの。私ってまだまだ生きてるって!やっぱり生きるって楽しいって!ねぇ聞いて。私ね本当は中学を卒業するまでは生きれない予定だったの。でもね君と過ごしていくうちもっともっと生きたいって思うようになって気づいたら卒業式を迎えることが出来たの!!ありがとう!君は私の生きる希望だよ!一生を君と一緒に過ごすことが出来て私幸せだった!!!告白のことは本当にごめんね。やっぱり私と付き合うと悲しい思いをさせちゃう気がして…本当にごめんね、、でも、でもね大好きだよ。」


僕は涙で顔中を濡らしながら何度も何度もその手紙を読み返した。


そして横にいる少女に自分のことを話し出した。


「実は僕彼女に出会ったこの桜の木の下で死ぬつもりだったんだ。」


「え?」


「小学校のころにひどいいじめにあっててね。それでこの木の下に思い出を詰めて死んでやろうって。でもそこに彼女が現れた。彼女は僕の気なんか知らずに人生を縦横無尽に生きていた。そんな彼女を見てると死ぬことの意味なんて無いように思えていたんだ。彼女は僕を生きる希望だって言ってくれてたけどそれは僕の方こそなんだ……」


「お姉ちゃんはベットの上でいつもあなたの事を話していました。」


「彼女僕のことなんて言ってた?」


「大好きだったってだからどうか幸せになって欲しいって」


「そっか」


僕は掘り出したタイムカプセルを開ける。するとそこには僕が詰めたものとまた別の袋に彼女と過ごした思い出の品が沢山詰まっていた。そしてその袋の表面には1枚のメモ用紙がはられており


「元気にしてやったんだから私の分まで元気に生きなさ〜い」と書いてあった。


思わず笑みがこぼれる。僕はそっとタイムカプセルに蓋をして抱える。


抱え上げたその手にはしっかり力が込められていた。


まるで彼女が僕の手を引っ張って行く時のように。











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