第36話 初笑い
「ただいまー」
私
それにしても、実家は快適だったなぁ。
何もしてないのに、食事も用意されるし、洗濯も終わる。
いやぁ、めちゃくちゃ
その分、これからの大学も始まる生活に
そんなことを考えていると、一つの個人スペースの扉が開く。
「お、
扉から出てきたのは、実家には帰らずシェアハウスに残っていた高校時代からの友人、
ひばりの口ぶりからすると、私以外の住人はまだ帰ってきていないらしい。
まぁ、私は結構早めに帰ってくるスケジュールにしてたから、当然と言えば当然かもしれない。
「ただいま、ひばり。はい、お土産」
私は改めてひばりに
中身は、地元で有名なお菓子屋さんのクッキー。
あらかじめひばりからリクエストされていたものだった。
「それで? 愛花の両親は、変わりなかったか?」
「ええ。ふたりとも元気が有り余っていたわよ」
会話をしながら、共有スペースへと移動する。
寒い中、重い荷物を持って歩いてきたので、とりあえず座りたかった。
共有スペースに着くなり、私はソファへと吸い込まれる。
いやぁ、座れるっていいね。
ソファでだらけていると、ひばりがコーヒーを持ってきてくれた。
ありがとう、とお礼を行ってから一口すする。
いやぁ、温かい飲み物っていいね。
ひばりは、私の隣に座るとテレビの電源をつける。
そこには、ニュース番組が映し出されていた。
「しかっし、三が日終わるとすっかり通常運転だよな。もう少し、休み気分に
「仕方ないんじゃない? 会社だって三が日終わると普通に動き出すわけだし」
大学はまだ冬休みだが、社会人の方々は、もう働いている。
私たちも近い将来、そうなる訳だけど。
「そういや、あたしいつもおかしいと思ってたんだが……」
「何?」
「お正月のお笑い番組で、『この番組で初笑い』みたいに言ってるやつあるけどさ。初笑いなんて、
それは……ひばりの言う通りかもしれない。
お笑い番組は、元旦になった直後から放送されているものもある。
全員が全員、その番組を見ているわけではないだろうが、家族との会話でも笑うこともあるだろう。
「でも、子供とかお年寄りとかは、日付変わるまで起きてられなくて、元旦の朝になって笑うことはあるんじゃないの?」
そう。私達みたいな若者は元旦になるまで起きていることも多いが、そうもいかない人達もいる。
その人達は、元旦の朝になって初笑い……なんてこともあるだろう。
「あーそれはそうかもな」
ひばりも納得したようだ。
「でも、三が日終わってるのに、初笑いを
「………………それは、そうね」
番組を作っている人には申し訳ないが、三が日終わっているのに初笑いはさすがに苦しい。
今時、ニュース番組でも少しユーモラスなことを報じることもある。なので、堅苦しい番組でも少しくらいクスリとくることもあるはずだ。
そうなると、三が日終わるって笑ってないのは、確率的にありえないと思える。
いや、もしかしたら本当に笑っていない人がいるのかもしれないけど。
ニュース番組とかばっかり見てて、そう言った番組のお笑い要素ではまったく笑わない人とか。
引きこもってテレビもなくネットもなく誰とも会話しない……って言う人とか。
そういう人……いるのかなぁ?
世の中は広いし、いないとは言い切れないのかもしれない。
でも、お笑い番組見るような人が、三が日終わるまで笑っていないことはないか、うん。
私が思考を
「うーん、ニュース番組ばっかりだな、この時間」
「もう平日って呼ばれる時間のお昼時だもの。そんなものよ」
「じゃあ、昼飯でも食うか? 愛花も腹減ってるだろ?」
「そうね、そうしましょうか」
私達は台所へと移動して、食べ物を物色する。
すると、お
「そーいや、あたし、今年に入って餅食べるの初めてかも」
「……それもなかなか珍しいわよ。バントの子達とお雑煮とか食べなかったの?」
ひばりはこの年末年始、バンドメンバーと過ごしていたはずだ。
お餅食べよう、くらい誰か言いそうなものだが……。
「いや、大晦日に大量に買ったピザやらなんやらをひたすら消費してたからさ」
「……年末年始に何しているのよ」
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