第34話 レースゲーム
「ああああああああ!」
……何か
私
絶叫が聞こえたのは、私の部屋の二つ右隣――
もしも、この前の私みたいに部屋に虫が出たとかなら、私には何もできない。
でも、何が起きたのかは気になる。
本当に重大な何かが起きていた場合は、行かないわけにはいかないだろう。
私は、しばし思考を
やがて、意を決して幸音ちゃんの部屋をノックする。
だが、返事は帰ってこない。
少しの緊張感を持ちながら、幸音ちゃんの部屋のドアを開ける。
その中では……。
「待ってくれーさーちゃん! そのアイテムはあかんて!」
「ふっふっふっ。さっきのお返しだよ、お姉ちゃん」
姉妹仲良くレースゲームに熱中する花咲姉妹の姿があった。
「いやー、すまんな。いーちゃん」
「わ、私も熱中しすぎました」
「いや、別に怒っているわけじゃないから。謝らないでいいわよ」
あの後。部屋で白熱の勝負を繰り広げていた花咲姉妹を見て、私は思わずずっこけた。
そんな私に気づいて、首を
まぁ、ゲームに熱中することを
で、だ。
「あ、お姉ちゃん。そのまま行くと落ちるんじゃ……」
「いや、行けるや……行けへんかった!」
のんびりゲームをプレイする姉妹の横に座る私。
その私は。
「はい、
「いーちゃん!? さらっと攻撃すんのやめーや!」
コントローラーを
正直言って、どうしてこうなったのかはよく覚えていない。
でも、いいや。久々にゲームすると、超楽しいから。
現在の私の順位は、三位。まだ先に居る
「そういや、いーちゃん」
「何? 幸音ちゃん」
「カーブ曲がるとき、体傾いてるで」
「え、そう?」
全く無意識だった。なんだか少し恥ずかしい。
「あー、ありますよね、そういうこと。なんでなんでしょうね?」
福乃ちゃんは、会話に交じりながらも
福乃ちゃん、ゲームあんまり上手じゃないって思ってたけど、意外とできるな……。
「よーわからんけど、RPGとかアクションゲームでもあるよな。攻撃されたとき、痛いって言ってまうねん」
あ、それは見たことある。
現在はバンドの練習で不在のシェアハウスの住人、
「あれなのかしら。キャラクターが自分の分身だから、思わず痛いって言ってしまうのかしら」
「でもいくら分身だからといって、感覚までつながるものなのでしょうか?」
う~む。どうなんだろう?
私は、小説とか読んでいると同じ感情になって、心が
だけど、身体的なものは同調するかと言われると……。
「でも、
「あ、それわかるかも」
幸音ちゃんの意見に、福乃ちゃんが同意する。
私も過去を思い出してみると、似たような経験があった。
これも、話し手との気持ちの共有することなのだろうか?
「
「そうね」
没頭か。
私も本を読むとき、面白い作品に出合って夢中になると、主人公の行動に同調して勇気づけられたりするものだ。
レースゲームに没頭すると、体が傾いたり。
アクションゲームに没頭すると、痛いと言ってしまったり。
没頭できる何かに出会ったときのあるあるなのかもしれないな。
「案外、ゲーム作ってる人もテストプレイで似たようなことやってたりするんかな?」
「どうなんだろう……。何時間も同じことしていると、機械的になって何もしないんじゃない?」
「あー同じ作業ってだんだんと
そう考えれば、ゲームのテスターさんって大変な仕事ね……。
でも、ゲーム好きなら最新作に触れられるから、楽しいのかしら。
「でも、楽しいゲームなら何時間やっても飽きないもんやで? 現にこのレースゲームなんて、もう百時間はやってるんちゃうか?」
「え? そんなにやってるの?」
私もゲームは何作かやったことはあるが、そこまでやり込んだことはないな。
「そんな百時間やっているお姉ちゃん。この三人の中だと、三連続で最下位ですが」
「……まぁ、そういうこともあるやろ」
幸音ちゃんは、
……なんかごめんね。
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