第14話 シャワー
私、
最近、熱くなってきたし、そろそろそうめんとか食べたくなるよねーとか、毒にも薬にもならないような会話だった。まぁ、雑談なんてそんなものだろう。
場所は、共有スペースのダイニング。私は、漫画のネームに夢中になり、夜遅い夕食を取っていたら、幸音ちゃんがやってきて、そのまま話していた、というわけだ。
「しかし、あれやな。いーちゃんもあんまり、夜遅く飯食べると太るで? ただでさえ、運動せんのに」
「うっ」
痛いことをついてくるな……。
でも、
と、その時、玄関からガチャリとドアの開く音が聞こえる。
どうやら、誰かが帰ってきたようだ。
「お、誰やろ?」
「
そうやったな、とのんびりした声で幸音ちゃんは答える。
時刻は、もう夜の十時を回っていた。
あんまり夜遅いのは危ないのではないか、と私は思ってしまう。
……気にし過ぎな気もするが、こういうのはそのぐらいがちょうどいいだろう。
「ただいまー。ふにゃー」
その言葉と共に、私たちのもとに帰ってきた住人がやってきた。
やはり声の主は、予想通り撫子だった。
「おかえりなさい、撫子。ずいぶん飲んだのね?」
「そうでもないわよー
「まったく。なーちゃんらしいわ。ほら、酔い覚ましにシャワーでも浴びてきたらどうや?」
「そうするわー。ふみゅー」
……なんか変な語尾がついてるあたり、結構飲んだようだ。
シャワーへと向かう撫子を見送ると、私と幸音ちゃんはおもわずため息をついてしまう。
「さて、撫子の部屋から下着と服を取りに行かないとね」
「せやな」
撫子が酔って帰ってくるのは、これまでに何度もあった。なので、このシェアハウスの住人は対処にかなり
酔っぱらいの対処って、社会においてどれだけ貢献できるのかな。なんてくだらないことを考えていると。
「うっひゃあっっっっっ!!??」
なんか、すごい叫び声が聞こえた。
「……え、今の、撫子?」
「と、とりあえず、浴室行こうか」
私たちは、慌てて浴室へと移動する。
そこには、バスタオルを体に巻いてがくがくと震える撫子の姿があった。
私は、
「ど、どうしたの?」
「……給湯器、壊れてる」
「「は?」」
私と
私も数時間前にシャワーを浴びたが、何の問題もなかったが?
「あ、ほんまや。めっちゃ冷水や」
どうやら、本当に壊れてしまったようだ。
……ごめん、撫子。酔っぱらって、ただ水を出しただけだと……。
「で? どうする?」
「どうするもこうするも……」
シャワーは諦めるしかないだろう。
だが、撫子は異論を
「いや、汗かいたから、このまま寝るのは嫌なのだけれど」
確かに、汗でべとべとなのは、いい気持ちではないだろう。
でも、シャワーは冷水しか出ない。
さて、どうしたものか。
「こんな時間だけど、銭湯にでもいく?」
「いや、近所でこんな時間までやってる銭湯とかないで。一番近くても電車で移動しないとあかんな」
そうなると、外で
はてさて、どうしたものやら。
「そうや。いきなり全身で浴びようとするから、あかんのちゃう? 指先からじっくりいけば……」
「ナイスアイディアよ、幸音ちゃん」
そう言って、足早に浴室に入る撫子。
だが、すぐに出てきた。
「ダメだわ。そもそも、指先だけでかなりきついわ」
幸音ちゃんの作戦は失敗に終わったようだ。
幸音ちゃんと撫子は、再び頭を悩ませている。
私も考えてみるか。冷水シャワーの
というか、夜遅くに何やっているんだ私たち。
そこで、ふとあることを思い出した。
「ねぇ、撫子。とりあえず、髪だけ洗っておいたら?」
「それは、なんでまた?
「いや、今更だけど私、ボディシート持ってるの思い出したの。髪だけ洗ってしまえば、明日、給湯器直るまではそれで乗り切れるかなと……」
「……それでいきましょう」
その後、撫子は冷水で
明日、なるべく早めに修理してもらうように、業者に頼んでみよう。
結論。無理は禁物。
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