第8話 雨
「雨、止へんなぁ……」
「そうね」
明らかにテンション下がっているな、と私
ここ数日続いている雨模様に、元気が
「あーもう。こんなにじめじめしてるとキノコでも生えてきそうや。誰が雨降って得すんねん」
「農家の人には、降ってもらわないと困る気がするけど?」
「それはそうかもしれんけど、やっぱり農家人もたまにでええと思っとるやろ」
はぁーっとため息ついてから、
「ほんまに雨が好きって人類いるんか?まったく、ほんまにまったく!」
「え、私結構雨って好きなんだけど」
幸音ちゃんが、信じられないという目で私を見る。いや、そんな必殺技を当てたのに敵が立ち上がった、みたいな感じで見られても。割といると思うわよ? 雨が好きな人。
「な、なんでや。あんな洗濯物も
悪の道ってなんだ……?
疑問が残るが、とりあえず本題とは関係なさそうなので、おいておくことにする。
「私は、この雨の音が好きなの。何か落ち着かない? 外に出れば、雨の日の独特な匂いもするし。お気に入りの
「雨の音なんて、動画サイトで聞いたらええやんか。雨の日の匂いも、そんなに好きにはなれんし」
幸音ちゃん、本当に雨が嫌いなんだな……。
まぁ、人間嫌いなものがいくつもあって当然だろう。
そんなことを考えていると、
「うち、思うねん。雨が好きっていう奴は、
「うーん、そうかしら? なんでそう思うの?」
さらっと批判された気もするが、まぁ、いいだろう。
私に先を促された幸音ちゃんは、
「考えてみ? 普通に考えればデメリットが多いやろ、雨なんて」
それは、確かにそうかもしれない。普通に暮らしていれば、洗濯物も乾かないし、外に出るのも面倒で、出たら出たで服は濡れる。その他にも、私が思いつかないだけで雨の日は、さまざまなデメリットがいろいろあるだろう。
「そんな雨の日のことを好きっていう奴は、B級映画が好きな奴やマイナーなゲームが好きって言っている、『俺、普通とは違いますよ』って気取ってる奴やねん。みんなが知らない魅力を知ってますよって
う、うーん。何というか、とんでもない
少なくとも、私は気取っているとは思っていない。
とりあえず、こういう偏見はなくした方が良さそうだ。
そう思い、私は少し
「幸音ちゃん。流石に偏見が過ぎると思うわ」
「そーか?」
「例えばよ?幸音ちゃんは料理上手だよね?」
「まぁ、得意ではあるな。それがどうしたん?」
「誰かが、『料理上手な奴なんて、モテたいだけだ。昔からやっているとか家族のためにとか言ってる奴も本当は、モテたいから付け焼き刃で覚えただけだ』って言われたら、ムカつくでしょう?」
うっ、と言葉に詰まる幸音ちゃん。どうやら自分がどれだけ嫌なことを言っていたかは理解できたようだ。
「まぁ、本当にかっこいいからってだけで、雨が好きって言ったり、料理覚える人もいるかもしれないけど。あんまり偏見押し付けちゃダメよ?」
「……すまんかったわ、いーちゃん」
「いいのよ」
私がそう答えると、安心したように深く息をする幸音ちゃん。
そして、
「そういうなら、雨の魅力を探ってみようかな? いーちゃんは音が好きなんやったっけ?」
「そうね。その音を聞きながら本を読むのが、好きね」
「なら、読みかけのラノベでも部屋から持ってこよか」
そう言って、部屋から本を持ってきた幸音ちゃんと並んで読書をはじめる。
……うん、やっぱりこの音は落ち着くな。時間がゆっくりと流れている気がする。
その時、左肩に何やら重みを感じた。
見てみると、寝息を立てる幸音ちゃんが私に寄りかかっていた。それを見て、自然と笑顔になる。
これを機に、幸音ちゃんと私が互いに好きなものが一つ増えればいいな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます