しばらくくろバラの庭園ていえんあるいていると前方ぜんぽうから二人ふたり人影ひとかげしてくる。

四天王してんのう?」

「アリスがって」

おどろきながらもこしにあるけんへとをかけながらアリスがつぶやくと、時計とけいうさぎがそうって自分達じぶんたちうしろへとがらせた。

「おっほほほっ! あたちは四天王してんのう一人ひとりチロリ。魔女まじょちゃまとおび」

「お、おなじく四天王してんのう一人ひとりクロム。魔法使まほうちかいちゃまってんでください」

十二歳じゅうにさいくらいのかおのそっくりなおんなおとこがアリスたちふさぐと、おんなほう声高々こえたかだか自己紹介じこしょうかいする。おとこほうはおじおじとしたかんじで名乗なのった。

ども?」

「こんなちいさな四天王してんのうだって……いや、たしかにすさまじい魔力まりょくかんじるけど」

まえあらわれたどもにアリスは面食めんくらった様子ようすしばたく。いもむしもおどろいた様子ようす白黒しろくろさせていたが二人ふたりからかんった魔力まりょくつぶやきをこぼした。

「あたちたち大好だいすきなゲンムさま女王様じょうおうさまひどいことしようとかんがえてるわる奴等やつらはここで成敗せいばいしてやるわ」

「ね、ねえ。魔女まじょちゃま。やっぱりこわいよ~。あの人達ひとたちつよそうだし……部屋へやもどろうよ」

鼻息荒はないきあら宣言せんげんする魔女まじょちゃまのうでっぱり魔法使まほうつかいちゃまがふるえるこえ抗議こうぎする。

何言なにいってるのよ。あたちたちわる人達ひとたちたおさなきゃ。ゲンムさま女王様じょうおうさまがこいつにやられてもいいの?」

「そ、それはいやだけど……でもやっぱりボクこわいよ」

魔法使まほうつかいちゃまの言葉ことばおこった様子ようす怒鳴どな魔女まじょちゃま。

「この子達こたち本当ほんとう四天王してんのうなのかな?」

なんとかはないで解決かいけつできないかしら」

「あの様子ようすではこちらのはなしをまともにいてはもらえなさそうですがね」

時計とけいうさぎの言葉ことばにアリスがこまったかおつぶやく。ぼうしもどうしたものかとおもいながらこたえた。

「あんたがやらないってうならわたちが一人ひとりでやるわ! あいつらをやっつけてアイスマン」

魔女まじょちゃまが魔法使まほうつかいちゃまのうではらいのけるとつえかまえて詠唱えいしょうする。

すると一体いったいゆきダルマがあらわれアリスたちまえふさがった。

召喚魔法しょうかんまほう?」

「あのとし召喚魔法しょうかんまほう使つかえるなんて。意外いがい厄介やっかい相手あいてかもしれないよ」

まえあらわれたゆきダルマにアリスがおどろをぱちくりさせる。いもむしがするどこえ警告けいこくはっした。

「いけ~。アイスマン」

魔女まじょちゃまが声高々こえたかだか命令めいれいするとゆきダルマがいきおいよくころがってくる。

あぶない」

「きゃっ」

アリス目掛めがころがってゆきダルマから彼女かのじょまもろうと時計とけいうさぎがその背中せなかした。

「「「「「…………」」」」」

さきほどまで彼女かのじょがいた場所ばしょいきおいよくころがりとおぎるゆきダルマの様子ようす彼等かれら無言むごん見送みおくる。

あたると厄介やっかいだがければ安全あんぜんそうだな」

「ま、まあ。そうだけど。でもけてばかりでもわりそうにないよね」

チェシャネコの言葉ことばにいもむしが苦笑くしょうしてこたえた。

「やっぱりどうにかしてはなしいてもらわないと」

「でも僕達ぼくたちこと敵視てきししている以上話いじょうはなしいてはくれないとおもうし……」

「とにかくしばらく様子ようすましょう。ほら、アイスマンがますよ」

アリスがこまったかおうと時計とけいうさぎが溜息交ためいきまじりにつぶやく。

ぼうしうと彼等かれらゆきダルマへと意識いしきもどした。

しばらくゆきダルマの攻撃こうげきつづけるアリスたち。その様子ようす苛立いらだってきているのは魔女まじょちゃまだった。

「んもう! 全然当ぜんぜんあたらないじゃない。こうなったらかずやすわよ。いけぇ~アイスマン」

魔女まじょちゃまがうと五体ごたいゆきダルマがあらわれる。

かずえた」

るか?」

「だめよ。そんなことしたら魔女まじょちゃまがいちゃうわ」

時計とけいうさぎがめんどくさそうだといたげにつぶやよこでチェシャネコがおおガマをかまえた。

その様子ようすにアリスがめにはいる。かれたらもっと厄介やっかいだとおもったチェシャネコはだまって武器ぶきろした。

地道じみちけるしかなさそうだねぇ」

「ですがかずえてしまいましたから、けるのも大変たいへんですよ」

いもむしもいやになるといたげなかおうとぼうしこまった様子ようすはなす。

「アイスマンたちあいつらをみつぶしちゃってぇ」

魔女まじょちゃまの命令めいれいけたゆきダルマたち隙間すきまなくアリスたちかこがない状態じょうたいとなる。

「どうする」

「このままじゃ本当ほんとうしつぶされちゃうよ~」

時計とけいうさぎがたおしたいのにたおすと面倒めんどうだという状況じょうきょうこまってこえをあげた。いもむしものない現状げんじょう悲鳴ひめいをあげる。

「あんたたちこれはどういうことかしらぁ?」

「「っ!?」」

そのときオネエ口調くちょうこえこえてきたかとおもうとアリスたちかこんでいたゆきダルマたち一瞬いっしゅんった。

こえぬしほうかえった魔女まじょちゃまと魔法使まほうつかいちゃまはかおあおざめ恐怖きょうふゆがんだかたまる。

部屋へやでおとなしくしているようにってわれていたでしょぉう。なのに、勝手かって四天王してんのう名乗なのってこんなところでなにしてるのかしらぁ」

今勝手いまかって四天王してんのう名乗なのってってったね」

「やっぱりあの子達こたち四天王してんのうじゃなかったのね」

こわかお説教せっきょうするながいまつ色気いろけたっぷりな女性じょせい言葉ことば時計とけいうさぎがアリスにう。

彼女かのじょ魔女まじょちゃまと魔法使まほうつかいちゃまとたたかうことにならなくてよかったとおもいながらむねろす。

どもとたたかうことにならなくてよかったよ」

かれたら面倒めんどうだからな」

「そうですね。どもをいじめるのはオレもさすがにけますから、あの子達こたち四天王してんのうでなくてかったですよ」

いもむしも安堵あんどした様子ようすでキセルをかせるよこでチェシャネコが半眼はんがんになりう。ぼうし同感どうかんだといたげにうなづはなした。

なにうことはないかしら?」

「ボ、ボクはおとなしく部屋へやにいようってったんだけど魔女まじょちゃまが……」

「だって、わたちたち大好だいすきなゲンムさま女王様じょうおうさまひどいことするわる奴等やつらるっていたから……だからわる奴等やつらをあたちたち成敗せいばいしようとおもって」

こわかおのまま笑顔えがおたずねる女性じょせいへと魔法使まほうつかいちゃまがおずおずとした態度たいどこたえる。

その言葉ことば魔女まじょちゃまがあわてて抗議こうぎするよう説明せつめいした。

いたいことはやまほどあるけどとりあえずいま部屋へやもどりなさい。あんたたちあとでたっぷりお説教せっきょうするから覚悟かくごしておいてねぇ」

「「はいっ!」」

にこりと微笑ほほえわれた言葉ことば二人ふたりはうわずったこえ返事へんじをする。そして一目散いちもくさんしろなかへとかってっていった。

「さぁてと、あんた達悪たちわるかったわね。あの子達こたちにはあとでちゃんと説教せっきょうしておくから安心あんしんしてね」

「は、はぁ……」

ウィンクをひとつついてハートをばしながらはなしてくる女性じょせいへとアリスは呆気あっけにとられながらうなづく。

「さてここからは仕切しきなおしよ。……わたしはゲンムさまつかえる忠実ちゅうじつ執事しつじ四天王してんのう一人ひとりドロシーよ。わたしのことはドロシーってよんでねん」

「このひとがトランプ兵達へいたちあやつった張本人ちょうほんにん? な、なんだかとても個性的こせいてき女性じょせいね」

こしをくねらせ色気いろけたっぷりに自己紹介じこしょうかいしたドロシーにアリスはちいさく感想かんそうべた。

「アリス……その。なんていうか」

「えっ」

「いや、これはらないほうしあわせかもしれないし……」

若干引じゃっかんひ気味ぎみ時計とけいうさぎがなにつぶやくが、かれなにおうとしているのかからず、彼女かのじょ不思議ふしぎそうなこえをあげる。

いもむしも言葉ことばえらぶようにくちひらくが苦笑にがわらいをするだけだった。

「アリス……あいつは……」

「?」

チェシャネコもドロシーにたいしてめた眼差まなざしをおくりながらくちひらくがだまむ。

「お嬢様じょうさままこともうげにくいことではございますが……あのかたは……その……おとこかたですよ」

「えぇ!?」

ぼうし苦笑くしょうこぼしながら相手あいて性別せいべつおしえる。その予想よそうしていなかった言葉ことばにアリスは盛大せいだいおどろいてドロシーを見詰みつめた。

「あら、わたしがおとこって一発いっぱつぬいたのはゲンムさま女王様じょうおうさまだけよ。あんたたちなかなかがあるのね」

「どうりでこえがカマっぽいとはおもったけどまさかおとこひとだったなんて……」

一発いっぱつ性別せいべつ見破みやぶられてしまったドロシーは意外いがいだとったかんじでうもしてにした様子ようすはない。

みんないている理由りゆうかったアリスはどうりでオカマっぽいこえだとおもったと納得なっとくする。

「わたしの正体しょうたい一発いっぱつぬいたからハンデをあげるわん」

「ハンデって?」

こしをくねらせながらわれた言葉ことば時計とけいうさぎがくびかしげる。

「わたしは魔法まほうには自信じしんがあるのよ。だからその魔法まほうでのたたかいになるんだけど、ちから半分以下はんぶんいかにしてあげる」

「それはがたもうだねぇ」

ウィンクをついてドロシーがる。それをいたいもむしがひそかに安堵あんど吐息といきす。

トランプ兵達へいたちあやつ自分達じぶんたちおそわせた実力じつりょくぬしなら魔法まほうでのたたかいになった場合ばあい窮地きゅうちたされることもありるからだ。

だがはなしいたかぎりならなんとかたおすことも可能かのうかもしれないとかれ希望きぼう見出みいだしたのだった。

「わたしとたたかっててたならここをとおしてあげるわ。でもけたらあんたたち身柄みがら拘束こうそくされるから覚悟かくごしてね」

すご自信じしんね」

「だがハンデをくれるならてる確率かくりつもあがる。アリス、自信じしんうしなっちゃだめだ」

ドロシーの言葉ことばにアリスは不安ふあんそうにまゆくもらす。その様子ようすにチェシャネコがはげました。

「それで対決方法たいけつほうほうなんだけど、わたしイケメンが大好だいすきなの。そこのキセルをかしてる貴方あなた。もろ私好わたしごのみのいいおとこなのよねぇ。お相手願あいてねがえるかしら」

「あはは~。ご指名しめいいただいちゃったよ。それじゃあかないわけにはいかないよね」

ハートをばしながらいもむしをあつ視線しせん見詰みつめるドロシーへと苦笑くしょうこぼしながらいもむしはまえへとすすみでる。

「「……」」

しばらくおたが出方でかた見守みまもっているようでどちらもうごかない。

「それじゃあくわよん。らいなさい」

詠唱えいしょうなしなんていきなりきついなぁ~」

ドロシーがうと右手みぎてひかりたまはなつ。いもむしは反射的はんしゃてきけるとキセルをかまえながらぼやいた。

「いもむしさん大丈夫だいじょうぶかしら」

「いもむしはああえてやるときはやるおとこだ」

心配しんぱいそうに見守みまもるアリスの言葉ことばにチェシャネコが安心あんしんさせるようにとおだやかな口調くちょうはなす。

「そうだよ。僕達ぼくたちはいもむしの事信ことしんじて応援おうえんしよう」

「そうですね。いもむしさん頑張がんばってください」

時計とけいうさぎも力強ちからづよ口調くちょううとぼうしうなづ声援せいえんおくった。

「あら~けられちゃった。意外いがい素早すばやいのね。じゃあこれならどうかしらぁ?」

「はは……スリリングだな~」

最初さいしょ攻撃こうげきけられたことにたいしてくちうほどとくになんともおもっていない様子ようすでドロシーは次々つぎつぎひかりたまはなつ。

はなたれた魔法まほう自分じぶん次々つぎつぎおそってくる様子ようすにいもむしはうとけながら相手あいてふところへとかってすすんでいった。

「あらん。なかなかやるじゃないの」

「ははっ。手加減てかげんしてくれているからなんとかけれているだけだよ~」

またまた自分じぶん攻撃こうげきすべけられたことに感心かんしんした様子ようすう。

そんなドロシーの言葉ことばかれちいさくわらいながらこたえる。そうしながらもキセルがとどくようにと前進ぜんしんつづけた。

「ふふ。そのキセルが貴方あなた武器ぶきなんでしょ。でもわたしに攻撃こうげきするにはちょっととおすぎないかしら?」

たしかにそうだけど、でも攻撃こうげきけながらすすめばいずれはこちらも反撃はんげきできるようになるよ」

不敵ふてきわらわれた言葉ことばかれこたえる。

「ならこちらにまえわらせてあげるわん。さあて、これもけることができるかしら?」

「!?」

ドロシーがおわわるのといもむしの足元あしもと地面じめんがせりあがってるのは同時どうじだった。

足元あしもとがせりあがりまるでいわのようにかたかたまりかれげるとそのままいきおいよく地面じめんへとたたけられる。

「……」

「いもむしさん!?」

たおれたままうごかないいもむしの様子ようすにアリスが悲痛ひつうさけごえをあげた。

「あら、残念ざんねん。もっとほねのあるおとこかとおもっていたのにつまらないわ。さぁてと、それじゃあつぎだれ相手あいてしてもらおうかしら?」

ほこったかおでドロシーがうとアリスたち品定しなさだめするようにやる。

「ぼくとの勝負しょうぶがまだわってないってうのにアリスさんたちさせはしないよ」

「!?」

不意ふいにドロシーの背後はいごからいもむしのこえこえたかとおもうととも静止せいし魔法まほうにより相手あいてうごけなくなる。

うごけなくなったドロシーの首元くびもとへとキセルがけられた。

「ふ~ん。そういうこと」

「え……いもむしさんが二人ふたり?」

いもむしにキセルをけられたままの状態じょうたいでドロシーは納得なっとくしてつぶやく。

アリスはおどろきキセルをけるいもむしと、たおれてうごかなくなったもう一人ひとりかれとを交互こうごやり不思議ふしぎそうなかおをする。

その瞬間倒しゅんかんたおれていたいもむしが跡形あとかたもなく皆驚みなおどろく。

「このわたしに気付きづかれないように魔法まほう使つかうだなんてなかなかやるじゃないの。貴方あなたいったい何者なにものなの?」

「……ぼくはクルス・マーモン・ロイヤード。いたことないかなぁ?」

しずかな口調くちょうたずねられた言葉ことばにいもむしは躊躇ためらうようにだまったあと誠意せいいをもってこたえた。

「ロイヤードってあのクローバーのくに前国王ぜんこくおうつかえていたっていう賢者けんじゃの? そう……貴方あなた王国おうこく敵一千万人てきいっせんまんにんをたった一夜いちやで、それも一人ひとり退しりぞけたってうあの伝説でんせつ英雄えいゆうだったの」

「え? いもむしさんがあの有名ゆうめい賢者けんじゃだったなんて……」

「そうだったんだ……」

動揺どうようした様子ようすでドロシーがうとアリスと時計とけいうさぎもおどろいた様子ようすくちをあんぐりとけてつぶやく。

なにかくしているとはおもっていたが、ほど。そういうことだったのか」

「いもむしさんが消息不明しょうそくふめいとなったあの伝説でんせつ英雄えいゆうクルス・マーモン・ロイヤードさんだったのですね」

チェシャネコが納得なっとくするよこでぼうしもいもむしを見詰みつめてった。

「ぼくは国王こくおう命令めいれいけてたくさんのひとたたかった。でもぼくは魔法まほうひときずつけるために使つかうものではないとおもっていた。だからひときずつけた魔法まほうをもう二度にど使つかいたくはなかったんだ。だからぼくは地位ちい名誉めいよてて自分じぶんのことをだれらないどこかとおくにこうとめたんだ」

しずかな口調くちょうかたりだしたいもむしの言葉ことばみんなだまってる。

「そしてぼくはアリスさんに出会であった。名前なまえかたらずどこのだれかもからないぼくのこと笑顔えがおれてくれて、ぼくのためにアリスさんはハートの女王様じょうおうさまつかえれるようにはなしてくれた。そしてハートの女王様じょうおうさまはぼくのちから一瞬いっしゅん見抜みぬいて四天王してんのうあたえてくれたんだ。そこでうさぎさんやネコさんやぼうしさんと出会であって、みんなごす時間じかんはとてもあたたかくてしあわせでたのしくて、居場所いばしょいだせなかったぼくにいるべき場所ばしょあたえてくれた」

「いもむしさん……」

おだやかな表情ひょうじょうかたるいもむしの言葉ことばにアリスはうれしさと同時どうじかれかくしていた事実じじつって複雑ふくざつおもいをいだいた。

かぜうわさ国王こくおうんであたらしい国王こくおうになったっていたとき正直しょうじきほっとした。いま国王様こくおうさまはちょっとわっているけど、でもあのひとならクローバーのくにをよりよいくににしてくれるとぼくはおもっている」

おおくのひときずつけた魔法まほうはもう使つかいたくないってってるわりには、わたしとのたたかいでは使つかったのはなぜかしら?」

いもむしのかたりをいていて疑問ぎもんおもったのかドロシーがたずねる。

「もう魔法まほう使つかいたくはなかった。だけどアリスさんたちたすけるためならばぼくは、封印ふういんした魔法まほうをまた使つかってもいいとおもったんだ。みんなまもりたいからね。いくら手加減てかげんしてくれているとはいえ、貴方あなた実力じつりょくはかれない。だからぼくも本気ほんきさせてもらったんだ。戦闘開始せんとうかいしとともに魔法まほうでぼくの分身ぶんしんつくたたかわせているあいだ、ぼくは気配けはい魔法まほう使つかって貴方あなたうしろへとまわんだ」

「なるほど、わたしはたたかまえからけていたってわけね。さすがはクルス・マーモン・ロイヤードだわ」

淡々たんたんとした口調くちょうかたられたいもむしの言葉ことばにドロシーはやれやれとったかんじでうと溜息ためいきこぼす。

「ぼくはいまはただのいもむしだよ」

「ええそうねぇいもむしさん。わたしのけよ。約束やくそくどおりここをとおらせてあげるわ」

にこりとわらわれた言葉ことばかれちいさくうなづきそうった。すると静止せいし魔法まほうかれドロシーは自由じゆううごけるようになるとしろもんへのみちけてくれる。

「ぼくの正体しょうたいかくしていてごめんね。でもぼくはただのいもむしだよ。これからもずっとわらないさ」

アリスたちもとへともどってきたかれ戸惑とまどった様子ようすだまみんな様子ようすこまったかおはなす。

「そうね、いもむしさんはいもむしさんよね。これからもずっとわらないわ」

「そうだよ。僕達ぼくたちっているマイペースで、ぐずぐずしてはみんなこまらせるのんびりとした性格せいかくのいもむしはずっとわらないよね」

アリスは笑顔えがおになるとそうやってる。

その言葉ことば時計とけいうさぎもうなづくとそうって茶化ちゃかした。

「そしてやるときはやるおとこ。それがいもむしだ」

「これからもいままでどおりのいもむしさんとしてよろしくおねがいします」

「うん。みんながとうね」

チェシャネコもうと微笑ほほえむ。ぼうし笑顔えがおでそうはなす。アリスたち言葉ことばにいもむしも笑顔えがおになりこころからのおれい言葉ことばつたえた。

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