クローバーのくに国王こくおうパティとのファッション勝負しょうぶったアリスはこころきずきずりながら、仲間達なかまたちたすかったことに安心あんしんする。

アリスたちことねらっているのはスペードのくに女王じょうおうであるという情報じょうほうられ、それをダイヤのくにおうへと伝書鳩でんしょばと使つからせた。真相しんそうたしかめるためにスペードのくにへとけてたびをすることもつたえる。

「それじゃあスペードのくにけてたびをしないとね」

「ちょっとって」

解放かいほうされたみんなもとへともどってきたアリスがそうこえをあげると、パティがせいしをかける。

「えっ」

貴方達あなたたちはずっとスペードのくに四天王してんのう見張みはられてるのよ」

四天王してんのう?」

国王こくおうこえおどろいて背後はいごへとくと玉座ぎょくざ可愛かわいらしくすわかれがそう情報じょうほうをくれる。

はじめて事実じじつ時計とけいうさぎが不思議ふしぎそうにくびかしげた。

「そうよ。貴方達あなたたち情報じょうほうはこっちに筒抜つつぬけだってったでしょ。それはわたしやスペードのくに女王じょうおう偵察隊ていさつたいおくんであんたたち行動こうどう監視かんししていたからなの」

「そうえばまえたたかった魔導士まどうし私達わたしたちこと全部ぜんぶってるってってたわね」

パティの言葉ことばにアリスは国王こくおうとなりひかえている魔導士まどうしおさながらう。その言葉ことばかれはあのときもうわけないといったかんじの態度たいどあたまげた。

「そう。クローバーのくに魔導士まどうしとスペードのくに四天王してんのう使つかって貴方達あなたたち行動こうどう見張みはっていたのよ。だから貴方達あなたたちがここを普通ふつうていけばすぐにつかっちゃうわ」

「それではどうやってここをていけばいいとおかんがえなのですか?」

国王こくおう言葉ことばにぼうしくびをひねりながらたずねる。

「ふふっ。わたしにまかせなさい。アリスちゃんたちつからないようにスペードのくに国境こっきょうもりなかまでテレポーテーションさせてあげるわ」

「……すごくいや予感よかんが」

「だ、大丈夫だいじょうぶだよぅ。クローバーのくに魔法国家まほうこっかだから、瞬間移動しゅんかんいどう魔法まほう得意とくいなのさ」

にこりとわらわれた言葉ことばにチェシャネコが半眼はんがんになりつぶやく。それにあわてていもむしが安心あんしんさせるようにはなす。

それからアリスたち国王こくおうれられ地下室ちかしつへとかう。れてこられた部屋へやなか薄暗うすぐらく、魔法陣まほうじんかこむようにくろいローブの集団しゅうだんっていた。

「うさんくさい……」

「だ、大丈夫だいじょうぶだってば。国王様こくおうさま誤解ごかいけたんだし、それにこの魔法陣まほうじんからはへん魔力まりょくかんじないからネコさんそんなかおしないでよ~」

この光景こうけいにチェシャネコがさらに半眼はんがんになりつぶやく。いもむしが苦笑くしょうしながら大丈夫だいじょうぶだとねんしアリスたち魔法陣まほうじん中心ちゅうしんへとつ。

「それじゃあアリスちゃんたちけて、いってらっしゃ~い」

「「「「「!?」」」」」

パティのこえ最後さいごにアリスたちっていたゆかかがやつぎ瞬間しゅんかん視界しかいがぐにゃりとゆがむ。そしてつぎにした光景こうけい薄暗うすぐらもりなかだった。

「ここは……」

「ここはクローバーのくにとスペードのくに国境こっきょうにあるもりなかですよ」

だれだ」

不思議ふしぎそうにつぶや周囲しゅうい見回みまわすアリスのみみおとここえこえてくる。こえぬし警戒けいかいした時計とけいうさぎがするど口調くちょうう。

こえのしたほうるとそこにはなれない異国いこくふく……おそらく軍服ぐんぷくだろうとおもわれる。それをまとったむらさきかみおとこっていて、深緑ふかみどり帽子ぼうし目深まぶかまでかぶっていたためその表情ひょうじょうれなかったが、口元くちもとやわらかく微笑ほほえみをかべていた。

「これは失礼しつれい。ワタシはけっしてあなたがたてきではありません」

るからにあやしいやつしんじろというのか」

おとこ微笑ほほえみをかべたままはなす。その言葉ことばにチェシャネコがするど眼差まなざしでにらけながらたずねた。

「ワタシの名前なまえは……まあX《えっくす》と名乗なのっておきましょう」

「それ、名前なまえじゃないですよね。オレたちをからかっていらっしゃるのですか」

るからにあやしいやつがX《えっくす》だと名乗なのるとぼうし警戒けいかいしてひくこえになりながらいかける。

「そう警戒けいかいなさらずに……ワタシはあなたがたてきではないとったはずですよ」

てきじゃないって証拠しょうこはどこにもないでしょ。るからにあやしいじゃないか。それなのにどうしてしんじろと?」

相変あいかわらず微笑ほほえみをかべたまましゃべるXえっくすしにいもむしも警戒けいかいしてするどつきになったかお相手あいてへとけてう。

「そうですね……では、てきではないという証拠しょうこひと情報じょうほうをおおしえいたしましょう。あなたたちがクローバーのくにした手紙てがみんだダイヤのくにおうはハートとダイヤのくにのトランプへいをスペードのくにへとけておくみました。しかしトランプへい一人ひとりかえってはませんでした。なぜならスペードのくに女王じょうおうつかえる四天王してんのうドロシーにより全員操ぜんいんあやつられてしまったからです。そうしてあやつられた兵士達へいしたちはあなたがたことねらってスペードのくに王宮おうきゅうちかまえております。みなさんがこれからスペードのくにへとかうのであれば、トランプへい洗脳せんのうまさせてあげねばなりません。そうしないことにはさきへとすすめないでしょう。……では、ワタシはこれで失礼しつれいします」

かんがむようにしばらくだまるとXえっくすしはすらすらと情報じょうほうをアリスたちつたえる。そうしてえるともりおくへとあるっていった。

「……さっきのX《えっくす》さんてひとはなししんじていいのかしら?」

るからにあやしいやつだったからね。僕達ぼくたちをだましてるかもしれない」

おとこ気配けはいがなくなってからアリスがこえをあげかんがえる。それに時計とけいうさぎがそうってきびしいかおをした。

なにる」

「あれは、ダイヤのくに伝書鳩でんしょばとさんだね」

そのときもりおくからやってしろもの気付きづいたチェシャネコがこえをあげる。いもむしもらして近付ちかづいてくるしろもの正体しょうたいをとらえるとつぶやく。

「ダイヤのくにおうからの返事へんじでしょうか?」

「えっと……『手紙てがみみすぐにダイヤとハートのくにのトランプへいあつ君達きみたち援護えんごにとスペードのくにへと兵士へいしおくんだが、そこから連絡れんらく途絶とだえてしまった。アリスたち合流ごうりゅうたせていたのならよいのだが、もしそうでないのであれば兵士達へいしたちなにかあったのかもしれない。アリス、トランプ兵達へいたちがどうなったのか調しらべてくれないか』……これって」

怪訝けげんそうにくびかしげるぼうしこたえるように伝書鳩でんしょばとから手紙てがみったアリスが内容ないようみあげおどろく。

「さっきのおとこっていたこととおなじようだな」

「じゃああいつは本当ほんとうてきじゃないってこと?」

「それはわかんないけど、でもあの情報じょうほううそじゃないみたいだねぇ」

チェシャネコがつぶやくと時計とけいうさぎも半信半疑はんしんはんぎたずねるようにう。それにいもむしが情報じょうほうたしかだったことにうたが余地よちはないだろうと判断はんだんする。

アリスたち納得なっとくしてうなづく。あやしい人物じんぶつではあったが情報じょうほうたしかなモノであったのは事実じじつだからと、あのX《えっくす》と名乗なのった軍服ぐんぷくおとこ言葉ことばしんじ、スペードのくにへとけてたびをすることとなった。


 なぞおとこえっくすし情報じょうほうしんじてスペードのくにへとけてたびつづけるアリスたち。クローバーのくにおう手助てだすけもあり、刺客しかくおそわれることもなく無事ぶじもりけて城下町じょうかまちまでやってきた。

「ここがスペードのくに城下町じょうかまち

僕達ぼくたち事狙ことねらってるってっていたから警戒けいかいしてたけど、とくにわったことはなさそうだね」

周囲しゅうい見回みまわにぎわう城下町じょうかまち様子ようすにアリスはつぶやく。それに時計とけいうさぎもみみをぴくぴくとうごかしながらはなした。

城下町じょうかまちではおそってくるはないのでしょう」

「となると王宮おうきゅうかうのに支障ししょうはないな」

「でも宮殿きゅうでんには四天王してんのうあやつられたトランプへいたちがいる。ゆるめることはできないね」

ぼうし言葉ことばにチェシャネコが淡々たんたんとした口調くちょうう。それにいもむしがキセルをかせながらこたえる。

アリスたち城下町じょうかまちけると小高こだかおかうえ王宮おうきゅうへとけてあしすすめた。

なにる」

足音あしおとからしててきはたくさんいるみたいだ。けて」

しろ城壁じょうへきえたときとおくを見据みすえてチェシャネコがう。時計とけいうさぎも警告けいこくはっした。

「あれは……ハートとダイヤのトランプへい

「でもなんだか様子ようすがおかしいよ」

えてきた人影ひとかげ服装ふくそうてアリスが呟(《つぶや》く。しかし様子ようすがおかしいことにいもむしが気付きづはなす。

「…………」

「きゃ」

「お嬢様じょうさまがりください。どうやら本当ほんとうあやつられているようです」

ハートのくにのトランプへい一人ひとりがアリスへけてやりす。それにおどろきながらもそのからびのきなんのがれる。

ぼうしがナイフをかまえてまえへとてくると彼女かのじょ自分達じぶんたちうしろにいるようげた。

って。まさかみんなたたかうつもりなの? トランプ兵達へいたちあやつられているだけなのよ」

「だからこそだよ。洗脳せんのうされているならまさせてあげないといつまでってもぼくたちてきになる」

ぼく洗脳せんのうされそうになったときおぼえてる? ぼくはあのとき自分じぶんあたまをハンマーでたたいたでしょ。つまりつよいたみをあたえれば洗脳せんのうけるんだ」

キセルをくるくるまわしながらったいもむしの言葉ことばつづけて時計とけいうさぎがハンマーをかまえながら説明せつめいする。

大丈夫だいじょうぶだ。ちょっとあたまたたけばめる」

「チェシャネコさん。あたまたたくなんて……」

「お嬢様じょうさまもうげにくいのですが、それ以外いがい彼等かれらまさせる方法ほうほうがないのです」

チェシャネコの言葉ことばにアリスはおどろ見開みひらく。ぼうしこまったかおをするとそうげた。

大丈夫だいじょうぶ怪我けがはさせないから」

「それじゃぁあいくよ」

にこりとわら時計とけいうさぎが安心あんしんさせるようにはなすと、いもむしがそうって彼等かれらまえせまりくるトランプ兵達へいたちなかへとんでいった。

「やぁ」

「ほら、ますんだ」

時計とけいうさぎがハンマーをりかざすとダイヤのトランプへい二人ふたりやりおさむ。そこにキセルをかまえたいもむしが彼等かれらあたまたたく。すると兵士達へいしたちはそのくずちた。

「……ぼうしいまだ」

かってますよ」

おそいかかるハートのくに兵士達へいしたち一人ひとり一気いっき相手あいてをするチェシャネコは彼等かれら攻撃こうげきすべはじかえす。

よろけた相手あいて様子ようすかれうとぼうし素早すばや兵士達へいしたちあたまたたいていく。彼等かれら次々つぎつぎたおれた。

「いったい何人なんにんいるんだろうねぇ」

かぞえてられないよ。ほら、次行つぎいくよ」

いもむしがいやになるといいたげにつぶやいた言葉ことばに、時計とけいうさぎがそうってハンマーで次々つぎつぎとトランプ兵達へいたち相手あいてにしていく。

四人よにん相手あいてけてはあたまたたくのかえしをつづけ、くと周囲しゅういはトランプ兵達へいたちたおれているというすごい絵図えず出来上できあがっていた。

「う……う~ん」

「あれ、おれはいままでなにを?」

「いてて……なんでこんなにあたまいたいんだ」

たおれていたトランプ兵達へいたち次々つぎつぎます。

みんななにがあったかおぼえてないの?」

「アリスさん? 我等われらなに失態しったいしてしまったのでしょうか……」

めたハートのくにのトランプへい一人ひとりへとアリスがこえをかけるとかれ不思議ふしぎそうにくびかしげながらたずねた。

「みんなあやつられていたことはおぼえていないみたいだね」

四天王してんのう一人ひとりドロシーってやつみんなあやつられてたんだよ」

いもむしの言葉ことば時計とけいうさぎが不思議ふしぎそうなかおをしているトランプ兵達へいたちへと説明せつめいする。

「そうだったのですか。もしや我等われらはアリスさんたちなにか……」

大丈夫だいじょうぶですよ。みなさんがなにかするまえめましたので」

四天王してんのう危険きけん存在そんざいだ。彼等かれらとの戦闘せんとう俺達おれたちまかせろ」

ダイヤのトランプへいもうわけなさそうにあやまるとぼうし安心あんしんさせるようにわらはなす。

チェシャネコもうとトランプ兵達へいたちやった。

「そうね、みんな一度いちどダイヤのくにかえってなにがあったのか王様おうさま報告ほうこくして。援軍えんぐんはありがたいけど、相手あいてはとてもつよいみたいだから私達わたしたちだけでほう安全あんぜんだからってつたえてほしいの」

かりました。我等われらはこれよりダイヤのくにへともどります。みなさんおをつけて」

アリスもそうはなしてかせると、ダイヤのくにのトランプへい一人ひとり代表だいひょうするかのようにくちひらちいさくうなづいた。

トランプ兵達へいたちかえっていくのを見届みとどけるとアリスたちはきっとまえ見据みすえ、無言むごんでたたずむスペードのくに宮殿きゅうでんへとあしすすめる。

宮殿きゅうでんもんはなたれておりまるで「いつでもくるがよい」といたげにアリスたちこと嘲笑あざわらっているかのようだった。

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