アリスたちたびはばむように時折ときおりおそかるくろいローブの集団しゅうだんたたかいをつづけながらクローバーのくにへとかう。

「ねえ、今日きょうもおねがいしていいかしら?」

勿論もちろんだよ。でもアリスも大分だいぶけんのあつかいが上手うまくなったよね」

草原そうげん夕飯ゆうはん一服いっぷくついているとそうアリスがこえをかけてきた。それに時計うさぎうさぎが返事へんじをしてうなづく。

彼女かのじょはこのたびはじまってからみんな手伝てつだってもらいたたかかた習得しゅうとくをしていて、いまではけと防御ぼうぎょ完璧かんぺきになり、けんいも上手うまくなっていた。

今日きょうはぼくが相手あいてをするよ」

「いもむしさん、よろしくおねがいします」

キセルをかしていたいもむしがそうってがる。かれにおれいうとアリスもけん準備じゅんびした。

「それじゃあぼく審判しんぱんをやるよ」

「うさぎさんおねがいね」

をあげて名乗なの時計とけいうさぎの言葉ことば彼女かのじょはにこりとわらった。

「それじゃあ、二人ふたりとも準備じゅんびいかな……はじめ」

開始かいし合図あいずとも一気いっきにいもむしへとむアリス。

「えい」

「おっと」

彼女かのじょったけん背後はいご退しりぞくことでけるとキセルをくわえる。

「だいぶうごきがはやくなったね」

みんなのおかげよ……やぁ」

感心かんしんするいもむしの言葉ことばにアリスはうれしそうにわらいながらつぎ一手いってす。

「ええい」

「おっと……はっ」

二連切にれんぎりをしてきた彼女かのじょ剣戟けんげきをすべてけると、かれはキセルをしアリスのねらう。

「あ……って」

制止せいしこえをあげた彼女かのじょ言葉ことば一旦いったんうごきをめ、戦闘態勢せんとうたいせいいたいもむしが不思議ふしぎそうにアリスをる。

「やっぱりねらうのは手加減てかげんしすぎなんじゃないかしら?」

「そんなことないよ。そこをねらわれたことによりからけんとされたらけだから。あ、でもアリスさんの綺麗きれい怪我けがわせない程度ていどには威力いりょくよわめているけどね」

そんなかれへと彼女かのじょおもったことをつたえた。アリスの疑問ぎもんにいもむしが説明せつめいすると最後さいごかる口調くちょうでそうってわらう。

「もう、いもむしさん。綺麗きれいだなんて……冗談じょうだんでもずかしいからやめて」

「ボクは本当ほんとうのことをったんだけどな~。まぁいいや」

ほほあからめずかしがる彼女かのじょへとかれ不思議ふしぎそうなかおつぶやくと苦笑くしょうする。

「それじゃあ、もう一度いちどはじめからやる?」

「そうね」

時計とけいうさぎの言葉ことばにアリスはうなづく。手合てあわせがわったのはそれから一時間後いちじかんごで、休憩きゅうけいえた彼女等かのじょらたび再開さいかいした。

しばらく草原地帯そうげんちたいあるいていると前方ぜんぽうから土煙つちけむりがあがりアリスたちほうへとなにかが近付ちかづいてくる。

なにかしら?」

うまのひずめのおとだ。それもたくさん」

砂煙すなけむり不思議ふしぎおもった彼女かのじょつぶやくと、おおきなみみをよくてておとひろった時計とけいうさぎがそう説明せつめいした。

「アリス。あれはてきだ」

「「「「っ」」」」

遠方えんぽうからちかづいてくる人物じんぶつ姿すがたをよくえるとらえたシェチャネコが警告けいこくはっする。

アリスたちはその言葉ことば一気いっき警戒けいかい各々おのおの武器ぶきかまえた。

「ヒッヒーン!」

今回こんかいなに? くろいローブの集団しゅうだんじゃないみたいだけど……」

うまたからかなごえひびき、彼女達かのじょたちなぞ人物達じんぶつたちかこまれる。

いままでたたかってきたてきとはちが格好かっこうにアリスは警戒けいかいしながらも不思議ふしぎそうにつぶやいた。

彼女達かのじょたちかこっているのはるからにあらくれものといったかんじの集団しゅうだん

そのなか緑色みどりいろよろいにまとったおとこだけがまともな格好かっこうをしていた。

貴様きさまがアリスだな……これ以上いじょう前達まえたち勝手かってにはさせない。あのかためいにより貴様等きさまらたびができない程度ていど怪我けがわさせてもらう」

「あのかたっていったいだれことだよ」

みどりよろいおとこ高々たかだか宣言せんげんするようにった言葉ことばに、時計とけいうさぎがってかかる。

貴様等きさまら必要ひつようはない。どうせここでたびわるのだからな」

おとこうとうまったまま長剣ちょうけんかまえた。

まわりにいるあらくれ者達ものたちもダガーをかまえると一気いっき攻撃こうげき開始かいしする。

「おやおや、万事休ばんじきゅうすですかね」

「そんなことって、余裕よゆうかおしてるよね」

かこまれた状況じょうきょうでの一斉攻撃いっせいこうげきにぼうしう。その言葉ことばいた時計とけいうさぎがハンマーをかまえながらかえす。

「アリス俺達おれたちうしろに」

「ふぅ~。これはのんびりとキセルをふかしている場合ばあいではなさそうだねぇ」

アリスをかばようまえへとたチェシャネコがうとおおガマをかまえる。

いもむしが溜息交ためいきまじりにつぶやくとするど眼差まなざしにわり、かってくるてきをキセルでたたきのめしていく。

「はっ」

「!」

みどりよろいおとこまえにいるチェシャネコへと長剣ちょうけんふるう。その油断ゆだんならない素早すばや攻撃こうげきかれ顔色かおいろわった。

「アリス。このおとこはただものじゃない。をつけろ」

「チェシャネコさん!」

背後はいごかばうアリスへとそう警告けいこくはっし、チェシャネコはせまりくる剣戟けんげきなんとか応戦おうせんする。

「おや、チェシャネコがされてますね」

「うそ~。ぼくたちなか一番強いちばんつよいあのネコさんが?」

まわりのあらくれどもをたおしながらぼうしがそううと、いもむしがおどろいたかおたずねた。

「どうやらいままでのてきとはくらものにならないくらいつよいみたいだね」

まわりのてきたおした時計とけいうさぎがそううとチェシャネコのほう加勢かせいしにうごく。

「やはり、あらくれどもではこいつらの相手あいてつとまらんか……だが、おれ任務にんむたせさえすればなん問題もんだいはない」

チェシャネコとたたかいながらまわりを見回みまわし、仲間なかまがすべてたおされてしまったことをったおとこが、淡々たんたんとした口調くちょううと一旦いったん彼等かれらから距離きょりをとる。

「はぁ」

「っ」

「うわ」

ふたたうまはしらせんでくると前列ぜんれつにいるチェシャネコと時計とけいうさぎをたおす。

二人ふたり力強ちからづよ剣圧けんあつされ体勢たいせいくずしてしまう。

「やっ」

「くっ」

「わぁ~っ」

相手あいてはそのままかってきたぼうしといもむしをおさたおす。

二人ふたり怪我けがいそのひざをついた。

「うさぎさん。チェシャネコさん。ぼうしさん、いもむしさん」

彼等かれらこと後回あとまわしでもいいだろう。まずは貴様きさまからだ」

身動みうごきがれなくなってしまったみんな心配しんぱいしてこえをかけるアリスへとおとこってうまからりる。

おんなである彼女かのじょへのハンデだとでもいたげな態度たいどにアリスはめられたものだとおもいながらけんかまえた。

「ここで決着けっちゃくをつけさせてもらう」

「「っ、アリス!」」

「お嬢様じょうさま

「アリスさん」

おとこうと彼女かのじょ目掛めがけんふるう。その姿すがたみんな悲痛ひつうこえでアリスのさけぶ。

「! ……やぁ」

「!?」

ろされた武器ぶきはじおとこ目掛めがけんす。相手あいておんなである彼女かのじょのあまりにもつよ剣圧けんあつおどろあわててく。

「……」

ほほかすめたけんによりできたかすきず彼女かのじょがただの小娘こむすめでないことに警戒けいかいする。

わたしはもう……みんなまもられてばかりはいやなの。だから、これからは自分じぶん自分じぶんまもるわ!」

相手あいてにら宣言せんげんするようにうとおとこ目掛めがけてけんかまむ。

「くっ」

相手あいて応戦おうせんするが身軽みがるうごきですべての剣戟けんげきけられおどろく。

「やっ」

「っぅ……」

おんなであるアリスにされはじあせったのか相手あいて体勢たいせいくずしてしまう。

「! アリスさん。そのペンダントだ。そこから魔力まりょくかんじる」

かったわ」

いもむしの言葉ことばしたが彼女かのじょ相手あいてくびからげられているペンダントをくだく。

「……っ!?」

うごきがまった?」

するといままでたたかっていたおとこうごきがまり、相手あいてかおには困惑こんわくしたいろかぶ。

その様子ようす時計とけいうさぎが不思議ふしぎそうにつぶやいた。

おれはここでなにを」

「どういうことだ」

多分たぶんそのペンダントであやつられていたんじゃないかな」

ぼんやりとちつくすおとこ様子ようすにチェシャネコがたずねる。いもむしがそれに仮説かせつとなえた。

貴方あなたはオレたちことねらったのですよ。それをわすれたというのですか」

「お前達まえたちことを? おれが……」

ぼうし言葉ことばおとこ本当ほんとう不思議ふしぎそうにしばたきながらつぶやく。

「どういうことかはっきり説明せつめいしてもらいましょう」

おれはクローバーのくに傭兵ようへいかしらだ。国王こくおうから招集しょうしゅうがかかり国中くにじゅう冒険者ぼうけんしゃ傭兵達ようへいたちあつめられ、そこで大会たいかいをすることとなり、さらにはうでっぷしがつよくよりすぐれたものだけがあつめられ、ふたた試合しあいおこなわれた。そこで優勝ゆうしょうしたもの仕事しごとあたえるとわれたのだ」

アリスの言葉ことばおとこはすらすらといままでの経緯けいい説明せつめいする。

おれ試合しあい優勝ゆうしょう国王陛下こくおうへいかもとされこのペンダントをわたされた。これはクローバーのくに国王こくおうからの優勝ゆうしょう記念きねんだとわれてな。しかしこれをけたあとから記憶きおくがなくなった。いたらここにいたというわけだ」

「クローバーのくに国王こくおうからわたされたペンダントには魔法まほうがかけられていたようですね。それによりあなたはあやつられてしまったのよ」

おとこはなしいた彼女かのじょはそうってこわれたペンダントを見詰みつめた。

「しかし、クローバーのくに国王こくおうなんであんたをあやつって、僕達ぼくたちことねらわせたのさ」

「それは……おれにはからない。だが、君達きみたち大怪我おおけがわせなくてよかった。洗脳せんのういてくれてありがとう。おれいひと情報じょうほうおしえよう。君達きみたちおそったローブ集団しゅうだんはクローバーのくに国王こくおう直属ちょくぞく魔法使まほうつか集団しゅうだんだ。国王こくおうなにおもいお前達おまえたちことねらっているのかはからないが、もしクローバーのくにくのならけるんだぞ」

時計とけいうさぎの言葉ことばおとここたえるとそう忠告ちゅうこくする。

かったわ。ける。がとう」

「いや、れいわれるようなことはしていない。君達きみたちことねらったおれにはな……」

アリスの言葉ことばおとこかたとしてつぶやく。

傭兵ようへい本来人ほんらいひと刃物はものけることはありませんからね。その心意気こころいき素晴すばらしいとおもいますよ」

「おまえうですごかった。おまえてきでなくて本当ほんとうかった」

ぼうしうとチェシャネコもそうはなしめる。

がとう。道中気どうちゅうきけて。おれはこいつらをれてくにかえる。といっても国王こくおうゆるしてくれるとはおもわないがな」

「あんたもけてねぇ」

おとこ言葉ことばにいもむしがめずらしく真面目まじめかおでそうう。

かれがそれにこたえるようにちいさくわらうとあらくれ者達ものたちさまますのをち、みちもどってった。

アリスたち彼等かれらえなくなるまで見送みおくるとクローバーのくにけてあゆみを再開さいかいする。

「……」

そんな彼女達かのじょたち様子ようすとおくから見詰みつめるくろかげが。かれなにわず一陣いちじんかぜとともにった。

「パティさま今回こんかい作戦さくせん失敗しっぱいわりました」

「えぇ~。今度こんど上手うまくいくとおもったのにな。あの傭兵ようへいちゃんつよいから期待きたいしてたのに」

おとこ報告ほうこく部屋へやなか椅子いすすわ人物じんぶつくちびるとがらせぼやく。

「あのもの処罰しょばついかがいたしましょう」

「だ・か・ら。処罰しょばつとか可愛かわいくないからやらなくていいの……それよりも今回こんかいもダメだったのねぇ~」

おとこ言葉ことばにパティが苛立いらだたし口調くちょううと、かんがぶかげにつぶやく。

「まあ、いいわ。アリスちゃんにますます興味きょうみわいちゃった。貴方達あなたたちもうなにもしなくていいわよ。わたしが直接ちょくせつアリスちゃんたちってあげるわ」

「はっ」

クマのぬいぐるみをきかかえ可愛かわいらしい笑顔えがおかべたパティがそううと、おとこひざをつき敬礼けいれいする。

アリスたちかうクローバーのくにかまえるこの人物じんぶつ一体いったいなにたくらんでいるのか。そんなたくらみがあるとはらない彼女達かのじょたちいそあしたびつづけるのだった。


 クローバーのくに目指めざしてたびつづけるアリスたち。ようやく城下町じょうかまちまでやってきた。

「ここがクローバーのくに城下町じょうかまちだよぉ」

って、まえからだれかがるよ」

いもむしがいましがたいたばかりの城下町じょうかまちせびらかすかのようにしめしながら説明せつめいする。

そのとき足音あしおとひろった時計とけいうさぎが警戒けいかいしてこえをあげた。

貴様きさまがアリスか?」

わたしがアリスですけど、なにか?」

みどりよろいにまといクローバーのくに紋章もんしょうけた隊長たいちょうがトランプへいれアリスたちかこう。

隊長たいちょう言葉ことば彼女かのじょ疑問ぎもんおもいながらこたえる。

貴様等きさまら身柄みがら拘束こうそくする!」

「「「「「!?」」」」」

隊長たいちょう声高々こえたかだか宣言せんげんするとトランプ兵達へいたちうごきアリスたちなわしばげられ、なすすべないまま王宮おうきゅうへとれていかれた。

「……これからどうなちゃうのかしら?」

「とりあえず国王様こくおうさま誤解ごかいかないと」

玉座ぎょくざへとれていかれたアリスは小声こごえ不安ふあんおもいをくちにする。それにいもむしが内緒話ないしょばなしをするこえkたえた。

王様おうさまのおな~り~」

トランプへい言葉ことばしたがまえると、ツインテールのかみらしながらゴスロリ姿すがた可愛かわいらしいおんな? が上機嫌じょうきげん鼻歌はなうたうたいながらあらわれる。

「ふ~ん。貴女あなたがアリスちゃん。ふふ。おもっていたより可愛かわいいじゃない」

玉座ぎょくざすわりうさぎのぬいぐるみをきしめるその姿すがたはどこからどうても可愛かわいおんなだった。

王様おうさまっていていたけど……」

「どうてもおんなだよね?」

困惑こんわくした様子ようすでアリスがささやくと時計とけいうさぎも不思議ふしぎそうにつぶやく。

「のどぼとけがない……」

魔法まほうおんな変身へんしんしているのでしょうか?」

王様おうさまわりものだっていていたけど、まさかこっちのほうわりものだとはぼくもびっくりだよぉ」

チェシャネコも不思議ふしぎそうにちぶやくとぼうしくびかしげてささやいた。いもむしもこまった様子ようす小声こごえはなす。

「う~ん。アリスちゃんたちつかまえたらわたせってわれてたけど……や~めた」

「お、王様おうさまそれはなりません」

アリスのかおをじっとつめてほくそ国王こくおう言葉ことばおうつかえる魔導士まどうしあわててこえをあげる。

「え~だってアリスちゃんのことにいっちゃったんだもん。わたしがったんだから、わたしのきなようにさせてもらうの。あんたはわたしに指図さしずするなんて可愛かわいくないわよ」

「し、失礼しつれいいたしました」

それに不満ふまんそうにくちびるとがらせ国王こくおううとかれあわててあたまげてあやまる。

こえおんなみたいよ」

「しぐさもおんなっぽいよね」

王様おうさまじゃなくて本当ほんとう女王様じょうおうさまなのかな?」

国王こくおうこえいてアリスが内緒話ないしょばなしをする声音こわねはなす。それに時計とけいうさぎといもむしも小声こごえたずえた。

「これもオレたち混乱こんらんさせる作戦さくせん……でしょうか」

「そんな小細工こざいくをするようなかんじにはえないが……」

ぼうし言葉ことばにチェシャネコが怪訝けげんそうなかおつぶやく。

「ちょっと、さっきからなにこそこそはなしてるのよ」

「「「「「!?」」」」」

国王こくおう不満ふまんげにうと彼女達かのじょたちあわててくちをつぐみ苦笑にがわらいした。

「……まぁいいわ。わたしがこのクローバーのくにおうパティーよ」

「ほ、ほんとうに王様おうさまなのですか?」

パティーと名乗なのった国王こくおうへとアリスが半信半疑はんしんはんぎたずねる。

「そうよ。パティーはねこんな格好かっこうしてるけどれっきとしたおとこなの。可愛かわいもの大好だいすきなんだ~。だからね、アリスちゃんも可愛かわいいからにいっちゃった。だ・か・らチャンスをあげる」

「チャンス?」

機嫌きげんはな国王こくおう言葉ことば彼女かのじょくびかしげた。

「パティーと勝負しょうぶしてったら貴方達あなたたち身柄みがら自由じゆうにしてあげる。でもけたら貴方達あなたたち明日あしたわたしよ」

勝負しょうぶっていったいなにを……」

パティの言葉ことば不安ふあんそうなかおでアリスはたずねる。

「パティーとの勝負しょうぶはずばり、ファッションショーよ」

「へ?」

「ファ、ファッション?」

あぶない勝負しょうぶじゃなさそうだけど、でもなんか意外いがいだね」

むねった国王こくおう言葉ことば彼女かのじょ面食めんくらってをぱちぱちさせた。時計とけいうさぎもおどろ白黒しろくろさせる。

いもむしも勝負しょうぶ内容ないよういのち危険きけんはなさそうで安堵あんどするも予想外よそうがい展開てんかい苦笑くしょうした。

「わたしをきゅんとさせることができたらアリスちゃんのち。でもぎゃくにアリスちゃんがきゅんとしたらパティーのち」

「き、きゅんとって……」

意外いがい勝負しょうぶ内容ないようけんたたかうことにならなくてよかったとおもいながらも、アリスはぎゃく意味いみ溜息ためいきこぼす。

「って、ことで」

国王こくおううと指鳴ゆびならしをする。するとどこからともなく衣装いしょうがつるされた移動式いどうしき洋服ようふくかけがあらわれ、さらには試着室しちゃくしつまで出現しゅつげんする。

「それじゃあ、いまからおたがいこの衣装いしょうなかからきなのをえらんで着替きがえるの。そしてそれをう。いいわね」

「は、はい」

パティがうとアリスだけなわはずされまえへとれていかれる。

「アリスちゃんがへんなマネしないように、勝負しょうぶわるまでのあいだ友達ともだち身柄みがらはこっちで拘束こうそくさせてもらうからね」

アリスが彼等かれらそばはなれると魔導士まどうしたちのじゅつ発動ほつどう時計とけいうさぎたちめる。

それにおどろいていると国王こくおうがそうって説明せつめいした。

「アリス、頑張がんばって」

「アリスさんなら大丈夫だいじょうぶだよ」

俺達おれたちことにせず、勝負しょうぶ専念せんねんしろ」

「お嬢様じょうさま応援おうえんいたしておりますよ」

不安ふあんそうなアリスのかお彼等かれら安心あんしんさせるようににこりとわらう。

「……みんなのためにもわたし頑張がんばるね」

「それじゃあアリスちゃん勝負しょうぶはじめましょ」

力強ちからづよ口調くちょう彼女かのじょうとパティがそう宣言せんげんして衣装いしょうえらはじめた。

アリスもあとつづようにたくさんある衣装いしょうから自分じぶんられそうなものをえらぶ。

「って。これ全部ぜんぶゴスロリかロリータ―しかないじゃない。こんなのことないわよ……」

「ふ~ん。ふん~ふん~♪ きーめた。それじゃ、おさきに」

衣装いしょうってみてアリスは種類しゅるいがゴスロリかロリータ―しかないこと気付きづく。いまさらそれにづいたところでときすでにおそし、勝負しょうぶはもうはじまってしまっている。

苦悩くのうする彼女かのじょをよそに国王こくおう衣装いしょうると試着室しちゃくしつへとえていった。

まよっている場合ばあいじゃない。わたしみんなたすけなくちゃいけないんだから」

アリスはうと適当てきとう衣装いしょうなかからふくえら試着室しちゃくしつへとはいっていく。

「じゃ~ん。今日きょうのわたしのコーデは休日きゅうじつのおかけコーデ。あたまさきからつまさきまで黒一色くろいっしょく統一とういつした衣装いしょうかさしろのクローバーがいい味出あじだしてる~」

試着室しちゃくしつからさきてきたパティがうとバラのはながあしらわれたミニハットに、二段にだんレースのゴスロリ衣装いしょうしろくろのシマシマニーハイ。ショートブーツでみ、くろかさにもいたるところにレースがあしらわれ、しろいろでクローバーがかたどられている。そんな全身ぜんしんのコーデをせびらかすかのようにくるりと一回ひとまわりしてせた。

「わ。わたしのコーデはドールコーデ。なドレスにヘッドドレスがまってる? 可愛かわいいだけじゃないりんとしたう……うつくしさもかねそろえたコーデよ」

おずおずとしたかんじでアリスも試着室しちゃくしつからてくるとずかしそうにほほあからめながら説明せつめいする。真紅しんくのドレスにヘッドドレス。しろいニーハイにあかいバレーシューズにはバラのはながあしらわれている。

「「「「…………」」」」

(うぅ……ずかしい~)

アリスの姿すがたおどろいたかおつめる時計とけいうさぎたち視線しせん彼女かのじょあながあったらはいりたいとったおもいでもじもじとした。

「きぁ~。アリスちゃんてば可愛かわいい~。もっとアリスちゃんのコーデみたいな~」

「へ? き、きぁあーっ」

国王こくおう言葉ことばにアリスはみみうたがかおをあげる。すると途端とたんにどこからあらわれたのかメイドたちがやってるやいなや彼女かのじょうでをつかみ試着室しちゃくしつへときずりむ。

「アリス!?」

悲鳴ひめいをあげてれていかれた彼女かのじょ様子ようす時計とけいうさぎがとっさにこえをあげた。

「これもこれも、う~ん。そうね、これもいいかも」

「いゃぁあ~っ」

試着室しちゃくしつ何食なにくわぬかおはいってきたパティがアリスのふくがすやいなやあれやこれやとえる。

「な、なかでいったいどんな状況じょうきょうに?」

「うさぎさん。ここはれないほうがよいとおもいますよ」

試着室しちゃくしつなかからこえてくる悲鳴ひめい時計とけいうさぎが不安ふあんそうにこえをあげる。それにぼうしこまった様子ようすでそうげた。

「……アリス」

「だ、大丈夫だいじょうぶだよ。アリスさんきてかえってるって」

心配しんぱいそうなチェシャネコの言葉ことばにいもむしがそうってはげます。

「うん、わたしがおもったとおり、アリスちゃんてばなにても似合にあう~」

「つ、つかれた……」

しばらくのあいだパティのおもちゃよろしく人形にんぎょうにされていたアリスがようやく解放かいほうされると、ご満悦まんえつ国王こくおうよこかたいきをしながら彼女かのじょ溜息ためいきこぼす。

「アリスちゃんのコーデにきゅんとしたから約束やくそくどおり、貴方達あなたたちこと解放かいほうしてあげるわ」

「あ、あの。国王様こくおうさま。どうして私達わたしたちことねらったのですか?」

パティがうと拘束こうそくされていた時計とけいうさぎたち解放かいほうされる。いまなら事情じじょうけるだろうとアリスはそうたずねた。

「わたしもよくはらないわ。でも貴方達あなたたちことねらうようにってスペードのくに女王じょうおうたのまれたのよ。婚約者こんやくしゃたのみだからいてあげなきゃっておもってね」

「どうして、スペードのくに女王様じょうおうさまが?」

らないわ。りたかったら直接ちょくせついてみれば」

国王こくおう言葉ことば彼女かのじょはさらにいかけるも、パティはくびってこたえる。

貴方達あなたたちたび妨害ぼうがいするようにったのも、スペードのくに女王じょうおうたのまれたからなのよね。だから本当ほんとうはパティーちゃんこんな可愛かわいくないことしたくなかったんだけど、おねがいされちゃったらことわれないじゃない」

婚約者こんやくしゃたのみならばことわりにくいですからね」

真相しんそうすためにもスペードのくにくしかなさそうだね」

すらすらと情報じょうほうあたえてくれる国王こくおう言葉ことばにぼうし納得なっとくしてうなづく。

時計とけいうさぎがうと皆頷みなうなづきスペードのくにへとけてたびつづけることとなった。

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