第11話 見送る背中


 お嬢さんはお嫁にいった。スケアクロウが好きだった夕焼け色の髪をなびかせて、街を出て行った。


 スケアクロウはお嬢さんと会えなくなるのが悲しかった。

 スケアクロウはお嬢さんと離れたくなかった。


 スケアクロウはお嬢さんに恋をしていた。



 気が遠くなるような長い時間の中でした二度目の恋を、スケアクロウは悲しく思った。どうして恋をしてしまったのかと、悲しく思った。


 スケアクロウがいくら悲しんでも、月の魔法は一度だけだった。また人になることの出来ないスケアクロウは、大好きな背中を見送ることしかできなかった。


 いつもいつも、スケアクロウはその背中を見送ることしかできなかった。



 二人のお嬢さんに別れを告げた日のような雨が、再びスケアクロウに降り注いだ。スケアクロウをかわいそうに思った雨が、どれだけ悲しくても泣けないスケアクロウに涙を流させてくれた。

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